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金色の光が

真っ暗闇で、私を照らすの


ねぇ、お母さん




×××15×××




もう全てが終わってしまった

こんなことになるなら、あの日、あの時、逃げなければよかった

母と共に死んでしまえば、よかった




掴まれた腕が痛い。

逃れられぬほどの力強さに、リアにはもう成す術がなかった。

男の声にも、何も反応できない。


「顔を上げろ」

「………」

「……こっちへ来い」

「………」


逃げることだけに使い果たした体力も気力も、もうリアには何も残っていなかった。

ずるずると引きずられる身体。

ぼんやりと、ただ、それだけ。もう、どうなったっていい。例え、母親と同じ終わりでも、もう。



バタバタと数人が駆けてくる音が聞こえる。応援の兵士達かそれとも魔術師達か。

ふっと無意識に笑みがこぼれる。そんなに、私を殺したいの。


「リア…といったな…、嫌だろうが少し我慢しろ」

「っ、え…?」


不思議な言葉が耳に入ってきた、と思った。


その声につられ、顔を上げれば、そこには金色の瞳。


「いたぞ…!あそこだ!!!」

「捕まえろ!」


ぐるりと身体が近くの柱に押さえつけられ、片手を引かれる。

一瞬の後にして、腰を逞しい腕で引き寄せられ、ほのかに香る匂いは、何かの花の匂いか。

じっと見つめられる金色の澄んだ瞳に、思わずリアは恥ずかしくなりぐらりと視線を彷徨わせた。



「っ、なんであなたさま」


リアの言葉を封じるように重なる唇。


「っ、ん……ふっ、っ…んん」


何度も何度も角度を変えて合わさる唇は、リアの鼓動を早まらせる。

頭の後ろに回された大きな掌は、離れようとするリアを逃がしはしない。

(…っ……どう、し…て…?)

徐々にぼんやりする思考。それでも、いまだに口の内部で絡まる舌は無くならない。



「ここに隠れているんだろう!ででこ……い!?」


一人の兵が、松明を持ち柱に近寄ればそこで行われていたのは何とも甘い事情。


「…………、邪魔をするな」


気だるげな表情で、兵士を見つめる男の唇に伝うのは透明な蜜液。

掠れた声と、整った顔から溢れだす色気は男でも惑わされそうなほどだった。

おまけに、その人物はこの国で5本指に入る程の強き騎士。

兵士と彼の瞳が合う。


「ししし、失礼しましたっ!!!!」


顔を真っ赤にした兵士はバタバタと駆けてゆく。それに続いて、後続の兵士達も駆けていった。



未だに口元から伝う液を腕で拭うと、ローベルトは自分の腕の中にいる娘に視線を向ける。

気を失っているのか、ぐったりとしたその姿。




「……らしくない、な」



そう呟いて、そっとリアの首筋に口づける。


何故彼女が追われているのか

何故こんなにも傷を負っているのか


解らない


彼女を助けた自分自身も


解らない




リアをゆっくりと抱き上げ、ローベルトは室内に入って行った。





夜は明け、東の空は白く染まってゆく

運命が動き出す、その時は近い











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