七海と花火と金魚すくい
私の娘の七海(ななみ・6歳)は生まれつき重い病気を持っていて病院からは一度も出たことがありません。
そして明日は七海の誕生日です。
私は七海に何が欲しいと聞きました。
「七海ねプレゼントはいらない。ただねママにお願いがあるの」
と言ってきました。
「んっ??お願い??」
「うん。七海ねママとお祭りに行きたいの」
そのお願いは正直無理な話でした。
しかしもう七海は長くないということは知っていました。
私は七海のお願いを叶えてあげたくお医者様に頼みました。
お医者様はわかってくれたのか外出の許可をくれました。
その事を七海に伝えると飛び跳ねて喜んでいました。
お祭り当日
私は車椅子を押しながら、店を回りました。
七海はとても元気で、焼きそば・わたあめ・すももなどをいつも以上に食べています。
七海は食べ終わると、金魚すくいがしたいと言いました。
私は七海の乗っている車椅子をおしながら金魚すくいの場所へ連れていきました。
七海は車椅子に乗っているのでなかなかうまくすくうことができません。
そんな困っている七海を私は後ろから抱いてやりやすいようにしてあげました。
すると七海は私に笑顔でこういいました。
「ママありがと!!」
私はその笑顔を見て、思わずギュッとしてしまいました。
すると七海はいつの間にか金魚をすくっていました。
「七海すごいね!!」
私は七海の頭をなでながら、ほめました。
そして私と七海が他の店を回ろうとした瞬間でした……
パン バチバチ
すごい量の花火が夜空を照らしていました。
私と七海はあっけにとられていました。
ふと七海の顔を見ると、花火の光に照らされてとてもきれいな顔をしていました。
その顔は…
まるで…
天使のようでした。
病院へもどると帰りに買った金魚鉢へ金魚をいれてあげました。
七海はその金魚をジーッと見つめて何かを考えているようでした。
「七海どうしたの??」
そう私が聞くと七海はこう答えました。
「七海ねこの金魚さんこ〜んなに大きくなるまで育てるんだ」
手を大きく広げて七海はいいます。
私は涙を流しそうになりました。
しかし七海の前では涙を流せません。
無理矢理笑顔を作り七海に言いました。
「じゃあ七海も頑張らなくちゃだめだね!!」
「うん!!」
その七海の返事に私は耐えきれず
「トイレに行ってくるね」
と言い病室を出ました。
トイレへ行くと溜まっていた涙が溢れてきました。
このまま七海と一緒にいたい……
涙を拭い気持ちを入れ替え病室へ行くと七海は気持ち良さそうに寝ていました。
私はその寝顔を少し見てから、家へ帰りました。
翌朝七海のいる病院へ行くと、七海は泣いていました。
「七海どうしたの?!痛いとこでもあるの?!」
少し慌てている私を余所に七海はいいました。
「七海は大丈夫。でも…金魚さんが…」
金魚さん?!
そういえば金魚鉢がありません。
「七海金魚さんどうしたの??」
私は七海の涙を拭いました。
すると七海はつっかえつっかえに言いました。
「朝ね…七海がみたらね…金魚しんじゃってたの」
また七海はワンワンと泣き出しました。
私は七海を抱き寄せこう七海に言いました。
「金魚さんは遠いお空の向こうで元気に泳いでるのよ」
私はまた七海を抱きしめ、この温もりを体に覚えさせました…
一生忘れぬように…
────10年後────
私は夏がくるたび思い出します。
七海との思い出を…
そしてまた明日あのお祭りがあります。
私はあの思い出を忘れぬようにあのお祭りへ行きます。
16歳になった七海と一緒に……
〜END〜