疑似恋愛シミュレーター [二万文字小説]
200文字小説に飽きた人もいるでしょう。
だから私は2万文字小説を書きあげました(笑)
大学に入学していくつかの時が流れた頃、、、
俺にはまた好きな人ができたのである。
俺にはまた好きな人ができてしまったのである。
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詳しく説明すると、大学に入って1年と数か月。
俺はその短い間で、16人の女性に《コイゴコロ》抱いてしまった。
それは大学の女子生徒であったり、道端で出会った女性であったり、コンビニなどで働いている女性であったりと、俺が惚れた女達は様々な種族の女達であった。
だが、そんな惚れやすい質の俺にも、何かと本気な恋もあった。
しかし、やはりそのほとんどが、心が揺れ動いただけのただ何となくという恋であった。
けれども、今回恋をした相手は何かと本気な部類…。
だから、俺はそいつのことが心底気になる。
そして、俺が惚れた相手が果たして俺のことが好きなのか?
果たして俺達は好きあっているのであろうか?
俺にはそれを確かめる必要がある。
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ここで登場するのが、疑似恋愛シミュレーター…。
それがどういったものかを、今から説明しようと思う。
まず俺達の世界の人間は、10段階のランク分けをされている。
人間のどこの部分が10段階にランク分けされるかというと、それは頭脳、顔、心の3種類がそれぞれランク分けされている。
しかし、それは各人各々にとってのランクであり、人には決して知られることはない。
まぁ、自分から他人に言わなければの話だが…。
だから、たとえ俺が可愛いと思った奴でも、俺以外の他の奴が可愛いと思わなかったら、極端な話、俺の中での顔のランクは10であり、俺以外の他の奴の顔のランクは0になるのである。
よって、人それぞれ相手に対して想うランクが違うのである。
頭脳は、自分が求める頭脳のベストの値が10であり、それから見て賢くても馬鹿でも離れるにつれて1つずつランクが下がる。
顔は、自分にとって可愛いい・綺麗と思う奴が10であり、そこから離れるにつれて、すなわちブスになるにつれてランクが1つずつ下がる。
心は、性格がどれだけ自分の好みに近いかでランク分けされ、そこから離れるにつれて1つずつランクが下がる。
今回俺が惚れた相手は、頭脳が7、顔が9、心が8の女である。
しかしここで、俺にとって女とはただ可愛ければ、もしくは綺麗であればそれでいいという問題では無い。
それは、顔以外に性格や頭も良くてはならないということを示す。
しかし、それは誰しもが思うことではないのだろうか?
人間、顔だけが全てではない。
その対象が女であっても、たとえ男であったとしても、それは変わらないのではないか?
少なくても、俺はそう思う。
だがここで、可愛すぎても、もしくはかっこよすぎても良いことなどはないと俺は思う。
なぜなら、理想と現実は違うから…。
なぜなら、何事にも限度というものが存在するから…。
その理由は実に簡単すぎることであり、これも誰もが思うことではないか?
なぜなら、人は特定の人を好きすぎると格好つけようとする習性があり、それは好きになってしまった相手に対しては逆効果という結果に陥ってしまう。
まぁ、簡単に言うと『本領発揮をすることができない』ということである。
そして、俺は可愛い派というよりは綺麗派が好きであるが、時としてどちらにも心は揺れ動いてしまう。
まぁ、そんなことはさておき、、、
俺が惚れた女は高橋星菜という名前の女だが、彼女は果たして俺のことが好きなのだろうか?
果たして俺達は好きあっているのだろうか?
気になる…。
気になって夜も眠れやしない…。
まぁ、ぐっすり眠っているのだがな(笑)
とにかく、俺にはそれを確かめる必要がある。
そう、、、
それが今回の俺のミッション。
先ほどの話に戻るが、疑似恋愛シミュレーターとは、ランクを利用した所謂“ゲームのようなもの”である。
しかし、それを“ゲームのようなもの”の一言で片づけるには実にもったいないと俺は思う…。
そう、、、
“ゲームのようなもの”の一言で片づけるには、実にもったいないのである。
なぜなら、疑似恋愛シミュレーターというものは、限りなく現実に近く、そして限りなく理想にも近づけることのできる代物であり、そこで体験した感覚等は忘れない限り一生ものになるからである。
ここで、疑似恋愛シミュレーターには機能がいくつかある。
今からしばらくは、それについて説明しようと思う。
まず、3次元の人をある場所に、ある時間に、ある条件で出現させることができる。
そして、出現させた人とそこで告白やデート、その他を楽しむことができる。
要するに、簡単に言ってしまえば“やりたい放題”ということである。
これが俺にとっては、、、
3次元の住人にとっては、とても重要なことなのである。
場所は自分の家だろうと、はたまた相手の家だろうと、もしくは学校だろうと都会のど真ん中だろうと、自分が思う好きなところのどこでもいい。
そして、時間は過去・未来・現在の何時でもいいし、好きな相手と結婚したと仮定した未来でもいい。
また、条件は頭脳・顔・心のベースは変えることができないが、より自分の理想に近づけることはできる。
それは頭脳のベースを残して変えれば、人として賢くさせることもできるのである。
それは顔のベースを残して変えれば、自分の好きな顔に整形した時のような跡を残さず近づけることができるのである。
それは心のベースを残して変えれば、自分を好きという条件にもできるし、顔も行動も極端に変えることさえしなければ、自分の思うままに変えることができるのである。
次は3次元の住人ではなく、2次元の住人のための疑似恋愛シミュレーターの機能の説明であるが、俺にとっては2次元の住人のことどうでもよく、さらに言うと“めんどい”ので説明を簡略化させてもらう。
要するにアニメ・漫画・ゲームの世界に行き、恋愛ができるのである。
それはリアルに感覚を感じることができ、記憶力が良ければ鮮明に記憶される。
要するに、疑似恋愛シミュレーターとは神ゲーなのである。
とにかく俺が言いたいのは、疑似恋愛シミュレーターは素晴らしいってこと…。
条件を何も変えずに日常生活に好きな人を出せば、現実と同じように告白やデートをすることができる。
それはリアルと何も変わらない故、告白やデートが失敗したら他の人に変えればいいし、もし相手が告白にOKを出してくれるようならリアルで同じように告白すればいい。
しかしここで重要なのが、疑似恋愛シミュレーターでやった時と同じように告白をしなければ、現実でも必ず同じになるとは限らないということ。
それは、言い方を変えれば相手の気に障るという事であり、場合によっては取り返しのつかないことになる。
だが、そんなにすごい疑似恋愛シミュレーターにも実は1つ欠点がある。
それはお金がかかり、その値段が半端ないというところ…。
そう、、、
所詮、世の中は金で廻っているのである。
それの値段がいくらかというと、基本料金で1万円。
そこに相手の頭脳・顔・心の3つのランクを足して1000をかけたものが加わる。
今回の俺の場合だと、頭脳が7・顔が9・心が8なので(7+9+8)×1000ということで24,000円余分にかかる。
よって、この時点で金額は34,000円である。
それを現実or理想のどこに飛ばすかということで、またさらにお金がかかる。
現実なら2,000円。理想なら3,000円。
そして、現実の日常生活なら、さらに1,000円。
現実の場所などを限定する毎に、さらに2,000円。
理想の設定が入り組んでいるならば、さらに1,000円<2,000円<3,000円<4,000円・・・のようにとどんどんと上がっていく。ただしこの場合、最大は10,000円である。
俺の場合は理想ではなく現実の設定であり、日常生活という設定を望むので、合計3,000円余分にかかる。
よって現在の金額は37,000円である。
そしてさらに、現実の頭脳・顔・心から遠ざけようとすると、これまた余分にお金がかかる。
例えば、頭脳5・顔5・心5の女の子を、自分の理想近づけるために全てのランクを10にしようとする。
そうした場合、5+5+5=15だったのを10+10+10=30にするので、合計15の差が生じる。
この数に1000を掛けたものを足さなければならないので、さらに15,000円。
しかし、俺は理想に近づけようとは思わないので、先ほどと変わらず37,000円。
最後にシミュレーションをする時間にもお金がかかる。
しかし、それらのお金はすべて先払いであり、何があっても返却されることは決してない。
よって、時間数を少なくしすぎると自分の意志とは関係なしに、強制的にシミュレーションは終了する。
だから、シミュレーションをするときは、少し長めに時間を取る必要がある。
少なくても、俺はそう思う。
また、疑似恋愛シミュレーター内での時間と外の時間では流れる速度が違い、たとえシミュレーションを1日やったとしても、外ではたった1時間ほどしか経過していない。
そして、シミュレーションにかかるお金は10分で1,000円である。
よって、1時間だと6,000円。1日だと144,000円である。
俺は告白と反応と、そのあとデート等ができるのかが知りたいので、半日は欲しかった。
だから時間にかかるお金は、72,000円。
よって、合計金額は109,000円である。
だが、俺はシミュレーションを何回もしたことがあるので、割引が使用できる。
ここで、疑似恋愛シミュレーターを使うには会員にならなければ使えない。
会員になると疑似恋愛シミュレーターをするためのカードが貰え、ゲームに関する情報が1~10までの全てがそこに記される。
そして、この会員カードは会員料はいらないが、再発行には15,000円かかる。
また、この会員カードには疑似恋愛シミュレーションを1回使うと1ポイント貯まり、
そのポイントが3ポイント貯まると5%offとなり、
そのポイントが5ポイント貯まると10%offとなり、
そのポイントが7ポイント貯まると20%offとなり、
そのポイントが10ポイント貯まると40%offとなり、
そのポイントが15ポイント貯まると80%offとなる決まりになっている。
また、15ポイント以上で1ポイントを1,000円として使える。
パーセントで割引になる時は、別にポイントが減るわけではなく、そのまま貯まっていく。
俺のポイントは現在20ポイントであり、ポイントからわかるように俺は疑似恋愛シミュレーターに多額のお金をかけてきた。
それは俺がバイトをしてきた全てであり、俺の人生の全てでもある。
俺は今回、今まで貯めてきた20ポイントから、5ポイントを使う気でいるので、109,000円から5000円を引き、そこから80%offをしなければ本当の金額は出ない。
よって疑似恋愛シミュレーターに支払う本当の金額は、20,800円となる。
安いだろ?
昔、俺が払ってきたお金に比べれば…。
安いだろ?
これで好きな奴と恋愛ができると思えば…。
少なくても、俺はそう思う。
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俺が高橋星菜に惚れて1週間が経過していた。
もう我慢ならない…。
もう我慢することはできない…。
胸の奥から、ムラムラとした感情が激しく込み上げてくるのだ…。
あぁダメだ…。
俺は星菜に酔っている。
俺はそう思った。
一刻も早く疑似恋愛シミュレーターを使わなければ…。
昔から、我慢は体に毒というだろう?
だから早くしないと、俺の体はモタナイ、俺の心はモッテクレナイ。
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なぜなら、星菜は最高に可愛い。
俺が人生の中で出会った人の中で、最高に可愛い。
先ほど、俺は可愛い派ではなく綺麗派といったものの、今回俺が惚れた相手は可愛い系…。
スッとした少し細めの顔。
栗色に近い、基本ポニーテールの髪。
これを下ろしても、また別の可愛さがある髪。
ほんのりとピンクに色付き、ふっくらしている唇。
香水のためか、シャンプーのためか、ほんのり香る、甘いバラの香り。
全てが最高だった。全てが俺を惑わせた。
俺は別に完璧主義者ではないので、他人に完璧などを求めようとは思わない。
だって、少しダメなところがあるのが人間であり、俺はそこを受け入れる人間だから…。
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時は流れ、日曜日の昼過ぎ、、、
俺は家を出て、銀行からお金を下してきた。
その金額は、30,000円。
シミュレーションに必要なお金より、少し余分目である。
なぜなら、何かあってからでは遅いし、なくて困らないものではない。
まぁ、盗まれてしまっては困るのだが(笑)
とにかく、俺は少し余分目に持っていくことにした。
1番近くにある疑似恋愛シミュレーターの場所は、相場ゲームというゲーセンだ。
そこまでの距離は、俺ん家から約1km。
疑似恋愛シミュレーターは、少し大きなゲーセンに行けばどこにでも何台かはある。
それが俺ん家から1番近いのが相場ゲームってなだけで、別に経営者の相場要一さんを贔屓しているわけではない。
なぜなら、正確に言うと俺は相場さんのことが嫌いだからである。
俺が好きな奴が誰かなんて、相場さんに全くと言っていいほどに関係ないのに、やたらしつこく聞いてくる。
はっきり言わせてもらえば、“ウザい”ぐらいである。
まぁ、そんなことはさておいて、、、
とにかく俺は今、相場ゲームに向かっている。
お金も持った。心の準備もできた。気合いも十分。
もういるものなんてありはしない。
俺はいつでも戦闘ができる状態になった。
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相場ゲームに到着して、俺はすぐさま店の1番奥に向かった。
なぜなら、そこに疑似恋愛シミュレーターがあるから…。
なぜなら、そこに俺の望むものがあったから…。
もう、待ってなんていられない…。
もう、待ってなんていられないから…。
普段の俺ならば、店の手前の方にあるUFOキャッチャーや格ゲーに目が行っていただろう。
しかし、今回の俺のミッションは、《心のアイドル》→《高橋星菜》が果たして俺のことが好きなのかどうかを審議することであって、疑似恋愛シミュレーター以外のゲームをすることではない。
正直な話、こんなものに頼らなければお金を使う必要も、ゲームをやらないという気合も必要ないわけだが、臆病な俺にはこんなもの頼ることしかできなかった。
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俺がゲーム機(疑似恋愛シミュレーター)に会員カードを挿すと、
「毎度ご利用ありがとうございます」
っと疑似恋愛シミュレーターが“いかにも”という声で話をする。
そして、俺はその機械音に耳を傾けることなく、作業を進める。
このカードには俺がしてきた恋の全てが記されている。
それがどういったものかというと、会員カードを作ってから俺が見てきた女の全てが、順位をつけられてデータ化される。
それは、頭脳と顔と心のそれぞれ別々の順位と、頭脳と顔と心の3つを総合した順位の4種類である。
これらの女で、会員カードの所持者が特に気に入った女が“お気に入り”登録される。
今回俺が惚れた高橋星菜は、俺のお気に入りのTOP3圏内であり、俺はそれを選択した。
そう、、、
俺はついに今回のシミュレーションの相手を選択したのである。
その後、「ポイントをお使いになりますか?」っと機械が俺に聞いてきた。
その質問に俺は「はい」と答え、もちろんお金を払ってからゲームを開始した。
ゲーム開始…。
それは俺の戦闘の始まりでもあった。
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場所は俺の通う、泉暁萩蓮大学。
時間はシミュレーションを開始した日から2日後の火曜日、
午後2時30分、、、
それは、大学の授業の3限が終わる時間の20分前。
それは、俺が好きになった高橋星菜と同じ授業を受けている時間。
その授業では、俺の右斜め前に座る星菜。
それは指定席であるからと同時に、星菜がまじめに授業に出席しているからであった。
授業に出席していなかったら俺の星菜が右斜め前に座ることはない。
それに、そもそも星菜が授業に出席していなかったら、俺はそんな不真面目ちゃんを好きにはならないので告白なんてことはしなかった。
そう、、、
俺は真面目ちゃんで、そこそこの頭脳と性格を兼ね備えた綺麗or可愛い女の子が好きなのだ。
…にしてもドキドキが止まらない。
星菜と同じ空気を吸っていると思うだけで倒れそうになる…。
星菜と同じ空気を吸っていると考えるだけでもダメになる…。
それが恋というものだということは知っているが、今から告白することを考えることで、さらにドキドキが高まっていくこの現状。
はぁ…。
もう死んでしまいたい…。
いやいや、告白する前に死んでどうする?
どうせ死ぬなら告白後だろ?
いやっ!もし、告白が成功したら?
決して死ぬわけにはいかないだろう?
そんな感じで、 俺は自らの中で葛藤していた。
すると時刻は勝手に過ぎ、授業終了まで残り5分となった。
そのことを知り、余計に高まる俺の心臓。
もはや胸の高まりは、最高潮を越えていた。
しかし、そんなに緊張してもいられない。
今から告白する身としては、ある程度の緊張、ある程度の慎重さがなければならない。
俺は今までの疑似恋愛シミュレーターでの経験と、現実での恋愛にてそれを学んだ。
実際、緊張しすぎると筋肉が硬直し、声が裏返り、「え?何こいつ?キモイんだけど…」的な空気になってしまう。
しかし、緊張を全くしてないと、それはそれで「何こいつ?馴れ馴れしいんだけど…」的な空気になってしまう。
そういったことを考慮すると、やはりある程度の緊張がいいのである。
また、慎重さは言わなくてもわかるだろうが、慎重でなくなってしまえば図々しくなり、そこで“恋愛”なんてものは理想に変わってしまう。
しかし、慎重になりすぎたら逆に奥手に見えてしまい、逆効果である。
よって、ある程度の慎重さが良いのである。
そんなことを思っていると、チャイムがなってしまった。
キーンコーンカーンコーン…
キーンコーンカーンコーン…
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―――――――――――――――
戦闘開始…。
その言葉が脳裏に浮かぶ。
「あのさ…?」
「今日この後なんだけど、暇?」
俺は星菜に先陣を切って話しかけた。
「えっ?」
「う、うん、、、暇だけど?」
星菜が少し小さめの声で返事をする。
『よし!!第一段階はクリアした』
俺はそう、心の中で唱える。
しかし、次に問題なのが…。
「なになに?デートの誘いですかぁ?」
っと俺の恋路を邪魔する1人の女。
こいつは俺にとって、切っても切り離すことのできない仲。
所謂、腐れ縁というやつ。
小学校・中学校・高校・大学と同じで、そろそろウザいと思っている。
名前は菅野清花。
全然、清い花って感じは全くしないが、本名なのだから仕方がない…。
本当に、本人もかわいそうだ。
そんなことを思っていた時、、、
『!?』
『ヤバい!!』
『こいつ俺の心理が読めるのか?』
なぜか、なぜか、キツイ“ガン”を飛ばしてくる。
『この野郎…』
俺はそう思いながら、優しく微笑みながら言った。
「あのですね?さやかさん…」
「なぁに?」
怖い、寒気のするような冷たい声で言う。
「できればこれからのことに口を出して欲しくないんだが?」
俺はその26文字を慎重かつ丁寧に述べた。
すると「いいよ!」っと意外な言葉が返ってきた。
『おぉ!!話が分かるようになったか、少女よ!!』
俺の想像が崩れたのは、そう思った束の間だった。
「だってその方が面白そうだし!」
という驚くべき言葉を、さやかさんは口にしたのだ。
『この野郎…』
俺はさやかさんに“怒り”というやつを覚えた。
そんな時であった。
「清花…あんまり工藤君をからかうのは良くないよ…」っと星菜が言葉を放つ。
『おぉ!ナイス!!』俺がそう思った瞬間!!
「そうだった、、、そうだった、、、忘れてたよ、、、」
「工藤榛彦君が星菜の想い人だったって事を…」
『――――――――――――――――――――!?』
なんだかとんでもないことを聞いてしまった…。
しかし、それにいち早く反応したのは俺ではなかった。
「ちょ!?やめてよね!!」
「いいんじゃない…?別に減るもんじゃないし…」
清花が、いかにも意地悪そうに言う。
そして「そう思わない?榛彦?」っと言って俺の方を見る。
『なぜ俺に聞くのだ!?』
まず始めにその疑問が俺の頭に過る。
しかし、すぐに返事をしないのもおかしいので、「そうともいうな…」と実に曖昧な返事をすぐさま返す。
すると、清花が俺を覗き込むように“グイッ”と1歩近づく。
そして「何その返事?」「私をなめてるわけ?」
「それとも星菜の方をなめてるの?」っときつい声で言う。
だが、その言葉にいち早く反応したのも星菜だった。
「やめてって言ってるでしょ?」
「なんで榛君の前で、そんな冗談いうの?」
「いい加減、私も怒るよ??」
初めて星菜の怒っているところを見た。
しかし、そんなことを忘れさせるような、とんでもないことを清花は軽く口走る。
「別にいいじゃん!?」
「好きなら好きって面と向かっていいなよ!!」
「私は言えるよ?」
「榛彦のことが好きだって!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
『おかしいだろ?』
『おかしすぎるだろ?』
最初、俺は夢でも見ているのかと思った。
しかし、俺が見ているのは現実…。
俺が見ているのは、疑似恋愛シミュレーターを使っての現実行為。
なぜなら、疑似恋愛シミュレーターは先ほども言ったように、現実を望めば現実が反映される。
だから、これが嘘なんてことはありえない。
とにかく、冗談か本当かはわからないが、星菜も清花も俺のことが好きだということだ。
まさに気分は雲の上だった。
しかし、そこから俺を呼び戻す一言があった。
「で?」
「結局、星菜に告るわけ?」
『――――――――――――――――――――!?』
『うそだろ?おい!!』
そうやって、俺は一瞬自分の耳を疑った。
『いくらなんでも率直すぎだろ?』
『お前は遠まわしに言うことはできないのか!?』
そう思ったからである。
しかし、答えを出さないわけにはいかない。
俺は鼓動の高鳴りと共に口を開いた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「俺はお前のことが好きだ」
「俺は星菜のことが好きだ…」っと―――――
一瞬、空気が硬直した。
しかし、その数秒後、清花が沈黙を破る。
「あたし振られたのかぁ~」
「あたし星菜に負けちゃったのかぁ…」という形で…。
それは今まで俺が聞いたことのないような切ない声であり、俺はその時初めて清花の涙を見ることになった…。
『くっそ…』
『なんでお前が…』
『なんでお前が泣くんだよ…』
気付けば、俺も涙を流していた。
それは俺が昔から清花のことが好きであり、昔からずっと想っていたということを指し示していた。
『なぜこんなものを使わないと気付かなかったのか?』
『なぜこんなものを使わないと気付くことができなかったのか?』
そう思うと自分が虫けらに見えてくる。
本当にちっぽけでたまらない。
俺は清花が俺を好きなのかを試すのが怖かったんだ。
それは、好きすぎていたから。
それは、嫌われたくなかったから。
少なくても“友達”でいたかったから。
いくら疑似恋愛シミュレーターといっても、本当のことを知ってしまえば、後戻りは決してできない。
そう、、、
俺は“恋愛”を恐れていたのだ。
本当に自分でも情けないと思う。
こんな機械を使ってでしか相手に告白ができないのに、本当に好きな相手をゲームで選択できないなんて…。
臆病者にもほどがある…。
『これはゲームなんだ!!』
『決して失敗なんて恐れるんじゃない!!』
『本番で成功したものだけが、勇者なんだ!!』
『あきらめなければ、想いは実る』
『誰かがそう、言っていただろ?』
俺はそう自分に言い聞かせ、自分に立ち向かうことにした。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「ごめん…」
「やっぱり、自分の気持ちに嘘はつけないや…」
そして、俺はここで涙を拭う。
それは、自分自身に気合いを入れるため。
それは、告白というものの準備を整えるため。
「本当にごめん、星菜…」
「俺やっぱり清花が好きだ!」
俺はもう、嫌われるのを覚悟で言った。
なぜなら、それは仕方がないことだから。
これでもう、どちらも俺に振り向くことはないだろう。
しかし、それでいいと思った。
だって、現実でやり直せばいいのだから…。
俺はそう思っていた。
しかし、、、
しかしである。
「えっ?」
「あんたが…」
「榛彦があたしを??」
「榛彦があたしを???」
そうやって、なぜか2回訊く清花…。
それに、俺は「あぁ」と一言だけ切なく答える。
それは、星菜を裏切った事への表れであり、俺の心は自重しながらも清花を求めているということを指し示していた。
それを聞いた清花は「本当に?本当に?」っと、またもや同じことを2回繰り返した。
そして「あぁ」と再び同じように答える俺…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
それからである。
「……………………………………………………」
「あのぉ…」
「わっ…私邪魔なら行くね?」
ここでいわゆる空気読めない奴の誕生…。
「待ってくれ…」
俺は星菜に向かって静かに言う。
しかし、その言葉を聞き取る前に、星菜は俺達の前から走り去ってしまった。
だが、その顔には涙が溢れ出ていた。
俺は仮にも好きになった子を泣かしてしまったのだ。
『どうしようか?』
先ほどは“空気読めない奴”というかわいそうな表現をしてしまったが、実際悪いのは俺で、最低なのも俺だということはわかっている。
そう、、、
そんなことはわかっているのだ。
しかし、、、
しかしである。
この状況…。
いい雰囲気とでもいうのか?
それとも、まずい雰囲気と言うべきなのだろうか?
まぁ、とにかくそんな中で、俺は告白した相手の前に立っている。
どうすべきだろうか?
次、星菜に合わせる顔がない。
その時の俺は、ここが疑似恋愛シミュレーションの中だということを忘れていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「でもさぁ~」
「あんたがあたしを思っていてくれてたなんて思わなかったよ!!」
「小さいころから一緒だったけど、あんた一度もあたしに振り向いてくれたことないじゃん?」
「いっつもシミュレーターであたし以外の女の子追っかけてさぁ~」
「本ト嘘みたいだよ!!」
清花は本当に嬉しそうにそう言う。
しかし、それは寂しい事でもあった。
俺は…。
俺と清花は幸せでいいかもしれない。
けれど、、、
けれど、星菜の場合は違うだろう?
俺が悲しくさせてしまった。
俺はひどいことをしてしまった。
謝ることもせず、去っていく星菜をただ黙って見送っただけ…。
俺は本当に最低だ。 本当に最低な野郎だ。
そんな男が、はたして誰かを愛す必要があるのか?
そんな男が、はたして誰かを愛していいものなのか?
俺はそんなことも見えなくなっていた。
そんな中、楽しそうに話す清花…。
それが俺には苦痛にしか見えず、それが嫌になって、俺はある言葉を放つ。
「付き合うのはやめよう?」っと―――――
もはや、エゴでしかなかった。
しかし、俺はそれでもいいと思った。
俺にはこれしかなく、もうそれ以外見えなかったのだから…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「うっ…嘘でしょ?」
「ありえないよ…」
「じゃあ、何のための告白なのよ…!?」
「おかしいでしょ?」
「ねぇ!おかしいでしょ?」
「あたしに…あたしに解るように説明してよ!!」
「ほらぁ!!」
――――――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――
俺は“グッ”と涙というやつが再び流れ出ないように、堪えながら話した。
「確かに、お前が…」
「俺は、お前のことが好きだ…」
「けれど、お前と付き合うわけにはいかない」
「それを、エゴと言われれば否定はできないし、お前を愛す資格ももはや俺にはないだろう…」
「だからだ…」
「だからなんだ!!」
「俺にはお前を愛す資格などないのだ!!」
俺はそう、叫ぶように言った。
もう俺達2人以外、誰もいない教室の中で…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「嫌だよ」
「そんなの嫌だよ!!」
清花はそれだけ言って走り去った。
そう、、、
清花は俺の前から消えたのだ。
教室に残るのは、俺と時を刻む時計の音だけ…。
あの時と同じく、俺が追いかけることはなかった。
もう、こんな思いはこりごりだ。
もう、こんな思いはしたくない。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――
現実世界、、、
俺はそこに戻った。
シミュレーションする時間はまだたくさんあったのだが、どうせいても仕方がない。
もはや虚無感の渦に巻き込まれるだけ…。
俺は、そう思ったから現実に帰ってきた…。
あれから1週間…。
俺は学校に顔を出していない。
それも、無断で休んでいるので成績に思いっきり響くだろう。
しかし、それでもよかった。
俺には心を整理する時間が必要だったから…。
もう他の女のことは考えない。
考えるのは、清花のことだけ…。
それで、、、
それだけで、俺は幸せを感じられるんだ。
そう思い、俺は学校のカバンを手に取った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
再び始まる、俺の戦争…。
そのために、俺は心を引き締める。
もう負け犬になるのはごめんだ。
絶対に勝って魅せる。
俺は恋なんてものに負けはしない。
恋愛とは実ってこそ意味があるんだ。
俺はそうやって自分を鼓舞した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
学校に到着し、ひとまず深く深呼吸。
これは俺の緊張を和らげるため…。
これは俺に慎重さを思い出させるため…。
俺の心臓は、一歩、また一歩と学校に近づくにつれて“ドキドキ”が“バクバク”に変わっていった。
それは映画の音響のように五月蠅く、それが“俺というもの”を指し示していた。
「おはよ…」
少しげんなりした声で俺は友達に言う。
すると、「どったの?」
「メールしても返事はあらへんし…」
「こっちは心配しすぎて死にそうやったんやで?」
と友達が心配していたことを俺に告げる。
だから俺は「わりいな…」っと少し目線を落として話した。
はっきり言って、あんまり休んでいたことを突っ込まれたくない。
突っ込まれても説明できるものではないのだし、これは俺自身の問題なのだから…。
そんなことを考えながら、俺はとりあえず友達と1限の授業を受ける。
清花と星菜と同じクラスなのは、飯を食った後の3限の授業…。
その時間が近づくにつれて、緊張が高まっていくのが嫌と言うほどわかる。
もう、本当に死にそうだ。
苦しいんだ…。
苦しいんだ…。心というやつが…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
そんなことを考えていたら、とりあえず1限の授業が終わった。
あぁ、英会話は退屈すぎた。
あぁ、本当に英会話は退屈すぎた…。
なぜなら、俺は1時間半という時間を妄想の中で過ごした。
俺は授業中、ずっと『苦しい・死にそう・愛が欲しい』ということを考え、告白の時間が訪れるのをただ無意味に待っていた。
しかし、そんな中でも真面目なのが“俺”というものなのである。
なぜかというと、そんなどうでもいいことを考えていた時でも、俺はノートを取っていたからである。
まぁ、ただ黒板を写していただけなので決して真面目とは言えないわけなのだが(笑)
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そんな感じで俺は1限の授業を終え、2限の授業へと向かう。
次の時間は数理経済学…。
この授業を俺は楽しいと思ったことが1度もない。
それは教科そのものがつまらないから?
いいや、先生がつまらないからである。
俺がそう言うのにも、ちゃんとした理由がある。
数理経済学を担当する前園公博先生は生徒と目を合わせたりしない。
そう、今まで受けた授業の中で1度も目を合わせなかった…。
その理由を俺は知らないわけだが、ただひたすら黒板に向かって話をするだけの授業を、俺は好きになることはできない。
いや、、、
先生を嫌いなのは…先生を好きじゃない人は、俺以外にも沢山いるだろう。
そんなことを思いながら俺は黒板を写していた。
しかし、それにしても先生は“注意”という言葉を知らないのだろうか?
俺はふと、そんなことを思った。
なぜそんなことを思ったかというと、授業中にケータイを触っている奴or寝ている奴の量が多すぎるからである。
なんとクラスの6割がそんなんである。
いくら馬鹿学校だからと言っても、加減と言うものがあるのではないか?
とにかく俺はそう思った。
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そんなことを考えていると、時は勝手に流れ、2限の授業も無事に終わった。
そう、飯の時間になったのである。
しかし、腹を満たす気にはとてもなれない。
俺は授業が終わることによって、授業が始まる前のテンションに戻ってしまったのだ。
だから『さっきまでの元気はどこに行ったのだ?』と人に言われようが、とにかく食べる気にはなれなかった。
しかし、友達の前で、ずっとげんなりしてもいられない。
俺はそう思い、仕方なく飯を食べることにした。
「今日の学食は、南蛮風竜田揚げとカツカレースパゲッティーか…」
友達の新見和也が俺にそう言う。
それを聞いて「じゃあ、俺は南蛮にしようかな?」っと言ってみる。
正直、どっちだってかまわない。
なぜなら、腹にくるのは変わらないのだから…。
なぜなら、食べたくない事には変わらないのだから…。
「ホンマに?なら俺も!!」
そんな適当な感じで、俺達は南蛮ランチを頼むことになった。
しかし、これが意外とうまい。
俺自身が思ったより俺の腹は減っていたらしく、一口口に運んだ途端、あっという間に皿の上の物は無くなってしまった。
両者が食べ終わると「うまかったな」と和也が言うので、俺は「あぁ」と答えておいた。
なんだか、戦前の腹ごしらえのようだ。
そうやって、俺は心に力をつけて、清花と同じ授業に挑むことにした。
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時は流れ、、、
授業終了10分前…。
その時に俺の体にあったのが、体を蝕む緊張の上を行く緊張…。
ほとんどの者はこんな状況を理解できないだろう。
いや、こんな状況が理解できる者なんていないだろう。
しかし、俺は今そんな状況にあった。
“緊張から流れ出る汗”の枠では収まらない、尋常じゃない汗の量。
それは手汗だけではない。
もはや、体中から滝のように流れ出ているのだ。
今の季節は秋だというのに…。
そして、さらにエアコンがかかっているというのに、暑くて暑くてたまらない。
『体が??いいやぁ…心がだよ!!』
俺が1人でそんなことを考えながら戦闘準備をしていると、いつの間にか、10分という時間は満ちていた。
キーンコーンカーンコーン…
キーンコーンカーンコーン…
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戦闘開始…。
その言葉が、再び脳裏に甦る。
しかし前回のように、この戦闘は練習ではない。
そう、、、
この戦闘はゲームなどではないのだ。
本物の戦闘ならぬ、本物の戦争なのだ!!
決して、失敗してはいけないのだ!!
俺はそう思いながら、清花に話しかけた。
「なぁ…」
「この後、暇か?」
「暇なら少し2人で行きたいとこがあるんだけど…?」
「どうかな?」っと…。
すると、「なになに?」「あんたが私を誘うなんて珍しいじゃない!!」
「一体どんな風の吹き回しかなぁ?」とニヤニヤ笑いながら話をする清花…。
俺は何食わぬ顔で、「どんなもこんなもねぇよ…」
「ただ、伝えておきたいことがあるだけだ…」とだけ言っておいた。
これは事実。
ただ、その真相が清花にばれていないだけ…。
『俺が清花のことが好きなこと』
これは今から初めて俺が口にすること…。
だから誰にもばれてなどいない。
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場所は変わり、家の近くの喫茶店。
昔から俺達は、何かあるごとにここに来ていた。
そう、、、
俺達2人はこの喫茶店と共に成長をし、そしてお互いを好きになった。
しかし、あの気持ちが本物かどうかはわからない。
それを確かめるのが、本日の俺の最大のミッション。
だから俺は、喫茶店に入ると同時に、本題に入ることにした。
「なぁ…清花……」
静かな喫茶店で、俺はまず一言目を放つ。
「なぁに?」
「どうし………」
ここで清花が話そうとするが、店員に遮られる。
「お飲み物はお決まりでしょうか?」
「もしよければ、オーダーをお伺いします」っと…。
俺は店員に「アメリカン1つ」と言う。
そして、清花は「オレンジで」と言う。
俺は別に見栄を張って“アメリカン”なんてものを飲んでいるわけではなく、これを頼んだのは、ただ単に“ここに来たら飲むもの”という決まりになっていたからだ。
そして、少しお子ちゃまに見える“清花のオレンジ”も、清花にとってはここでの定番の物となっていた。
そんな風に注文した“アメリカンとオレンジ”が席に到着した後、、、
俺は、待ちに待った本題に入ることにした。
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「俺達って出会ってからどのくらいだろうか?」
「えっ?」「なに??急に…??」
清花は当然の反応をした。
しかし、めげずにもう一度言ってみる。
「俺達の最初の出会いは小3だよな?」
「え?」「ぅ…うん」「そうだけど?」
「それがどうしたの?」
「っていうか、何なの?変な風に改まっちゃってさぁ?」
「怖いんですけど!?」
まぁ、これも当たり前だよな。
俺はそう思った。
しかし、こんなことでも俺はめげはしない。
「まぁまぁ、落ち着けって」
正直、「お前が落ち着け!」と突っ込まれる言葉だった。
しかし「うん、わかった」と清花は答えたのだ。
俺は少し、清花の素直さに笑ってしまったが、気を取り直して再び同じ質問をしてみた。
「俺達って、出会ってから長いよな?」っと…。
正直、この質問にも飽きていたところだった。
そんな時、、、
そんな時である。
ついに俺の求める答えが返ってきたのである。
「うん…長いね…」
「小3からだから、約10年かなぁ?」
「昔は2人とかでもバカやって、帰んなきゃいけないのに、夕方すぎても遊んでたっけ?」
「なんだか懐かしいなぁ~」
そう言って、清花は俺の前に留まる空気を見る。
そういった細かな仕草が、また俺の胸に“グッ”とくる。
やっぱり俺は清花のことが好きだ。
俺はそう、確信する。
そして、俺は告白した。
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「そろそろ2人の仲に、ケジメをつけようじゃないか…」
「お前さえ良ければ、俺達付き合わないか??」
それを聞いた清花は、右手で掴んでいたストローをコップの底に落とした。
そして一言、、、
「えぇ、もちろん」 と俺の目を見て言った。
それが俺にとって、、、
それが今日の俺にとって最高の言葉となった。
いや、俺の人生にとって最高の言葉か?
もはや、そんなことはどうでもよかった。
疑似恋愛シミュレーターというゲームではなく、現実世界で本当の恋を実らす…。
それが俺の求めていた“本当の幸せ”という形なのかもしれない。
俺はそう、理解した。
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次の休みの日、、、
俺達の初デートの日。
そんな記念すべき日に、俺はしてはいけないことをしてしまった。
そう、、、
俺は初デートで遅刻してしまったのである。
『俺はサイテーだ!!』
そう言って、俺は自分自身を責める。
遅刻した時間は、なんと3分…。
時間に疎い人間は「そのくらい別にいいじゃん!」「そのくらい別に普通!!」と言うだろう。
だが、はっきり言って俺はそんな人間とは一緒に居たくない。
それは俺が、“時間を守れない=最低な人間”と考えているからである。
しかし、そんな人間を嫌うこの俺が、俺が嫌う人間と同じことをしてどうする?
そう、、、
俺は自分を嫌いになってしまった…。
俺は自分を嫌いになってしまったのである…。
しかし、そんな俺を慰め続ける清花。
「気にしないでよ?」
「どうせ緊張でろくに寝れなかったんでしょ?」
「それなら仕方がないよ!?」
『よくわかっていらっしゃる』
『さすが、幼少からの付き合いだ!!』
俺は失礼ながらもそう思った。
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けれども、そんなに長くネガティブ思考を引きずる訳にはいかず、俺はデートに集中しようと努力する。
そんな中、清花が俺に話しかけてきた。
「今日はどこ行くの?」
「どこでもいいぜ?どっか行きたいところねぇの?」
「んー」
「一応、服が見に行きたいなぁとは思ってるんだけど?」
「にしても、あんたとこうやって改まって話すのなんか緊張するなぁ~」
「そうか!?」
「俺はそうでもないけど?」
そう言って強がっては見せる。
けれども、緊張で体に力が入っているのは丸わかりだし、それに俺が話す言葉には“ビブラート的なもの”が朗らかに掛かっている。
しかし清花は、気付かないふりをすることなく俺に突っ込んだ。
「別に強がらなくていいってばぁ!!」
「あたしだけを除け者にしないでよね!?」
「なんだか、余計に恥ずかしいじゃん!!」っと…。
俺はそれを聞いて思った。
『本当に優しくない子だ』
『少しぐらい気を使ってくれてもいいのでは?』っと…。
しかし、それが清花というものなのだろう。
俺にはそれがわかっていたので、自分が感じている恥ずかしさを必死に隠しながら、笑いながら言った。
『わかるけど…』 『わかるんだけど…』
『なんだか、強がっちゃうんだもん!!』
と、そうやって心の中で頬を膨らました。
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そんな感じで何気なく2人の会話が進んだところで、今日の最初の目的地…
服屋にやっとの思いで到着した。
そして中に入ると同時に、俺は清花に声をかける。
「ところで、お前って一体どんなファッションが好きなの?」っと…。
その答えを、服屋の隅から隅まで見回しながら言う清花。
「特にないけど、カッコいい系よりは可愛い系かな?」
「あ!?」
「でも“フリフリ”とか、そういうのはダメだからね?」
ここで笑いながら、俺の顔を見る清花。
『あぁ…本当に好きな奴とのデートは格別だ』
俺はここで真のデートの“真の楽しみ”を知った。
実際、星菜との恋がなければ、清花の気持ちを知ることなどはなかったのだろう。
しかし、知ってしまった…。
ゲームを使い、人の心を勝手に知ってしまったのである。
プライバシーの侵害とはよく言ったものだ。
疑似恋愛シミュレーターの前では、好きも嫌いも全て“OPEN”となってしまう。
だから、清花の気持ちもわかってしまったのである。
しかし、これが良い事なのか、それとも悪い事なのかは俺にはわからない。
けれど、結果的に“幸せ”を掴むことが俺にはできた。
俺にとってはそれが全てなのである。
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初デートから、8年という歳月が流れた頃、、、
なんと、俺達には2人目の子供が産まれた。
俺達は、あのデート後、共に互いを好きになりすぎ、時間の経過と共に、結婚することを決める。
その間、俺達は何度も何度もデートやデートを繰り返し続けた。
その歳月は、なんと4年、、、
別に、この数が多いわけでは決してない。
なぜならば、世の中にはもっと長い間“恋人関係のまま”を保った人間が沢山いる。
そして、それだけ長い間付き合っていたとしても、結婚できるかどうかはわからない。
『全ては神の仰せのままに…』なのである。
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だがここで、面白い事実を1つ教えようではないか!!
俺自身も結婚する直前に初めて知ったのだが、清花も疑似恋愛シミュレーターを使っていたらしい。
しかし、やたらと乱用していた俺と違い、使った回数はたったの1回。
そして使った相手は、なんと俺!!
それで清花は俺の気持ちを知り、俺に告白をさせた。
……というのは実に失礼なことであって、、、
清花は2年近くもの間、俺の告白を待っていたらしい。
それを聞いて、『可愛い奴め!!』と思ってしまう俺は本当に馬鹿だ。
本当にどうしようもない奴だ。
俺はそう思った。
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しかし、それが俺達の“幸せ”に繋がっていた。
結婚から2年目で最初の子供が産まれ、俺達はその産まれた女の子に蓮花と名付けた。
本当は俺的には、恋花と言う漢字が良かったのだが、清花に「恋の花とかは、さすがに恥ずかしいからやめて!!」と怒られ、蓮花と言う漢字になった。
いや、ここは“なってしまった”と言うべきなのだろう…。
なぜなら、俺はすんなりと清花の言うことを聞くからである。
そう、俺は何かと清花の言いなりである。
そう、俺は清花には逆らえない。
そう、俺は清花に尻を引かれているのだ。
まぁ、そんなことはさておき、、、
それからさらに2年という歳月が流れ、、、
俺達の間には駿眞という名の男の子が誕生する。
よって、ただいまの工藤家の人間は、
父、工藤榛彦、29歳。
母、工藤清花、28歳。
娘、工藤蓮花、2歳。
息子、工藤俊眞、0歳である。
しかし、結婚した今でも正直、清花に対して格好つけてしまうことが多々ある。
もう、清花は俺の妻であるのにもかかわらず、『どうだ?俺って格好いいだろ?』という、自分でもよくわからない行動に出てしまうのだ。
そうするたびに『あんたバカでしょ?』という目線が俺の周りに飛び交う。
正直、そういった空気が俺は苦手だ。
なぜかという理由を言う必要もないだろう。
ただ単に、冷たい冷めた空気が嫌いなだけ…。
ただそれだけである。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
いくつかの恋をしてきた人間達…。
いくつかの恋をしてきた俺自身…。
しかし、そのどれもが現在進行中の恋にはかなわない。
それは単に、清花と結婚をしたからということではない。
それは単に、2人の夜に2人で愛を誓ったからでもない。
それh、俺が清花を心の底から愛しているからである。
今までの恋が遊びだったから…?
そう言うと、何か誤解が生まれてしまうだろう。。
しかし所詮は、子供のお遊戯にしかすぎなかったということ。
俺が今までしてきた恋は、ただのそれだけなのである。
最後になってしまったが、俺は本当に清花を愛している。
それは俺の人生をかけて誓っても構わない。
そして、このことは“多分”とか“きっと”ではない。
『清花を愛している』という事実は、絶対に死ぬまで変わることはない。
ただその事実こそが、俺達の“幸せ”そのものなのである。
俺達人間は本当に好きな人と家庭持てるだけで、幸福を感じることができるのだ。
最後まで読んでくださった人に、
「ありがとう」の一言を伝えたい。
本当にありがとう。。