触れれば終わる――崩壊を宿した転生者
痛みはなかった。
ただ光だけがあった。
そして…何もなかった。
目を開けると、世界は消えていた。
建物も、人も、空も、何もなかった。
ただ白い虚空だけが広がっていた。
「あなたは死んだ」と声がした。
彼は答えなかった。
答えることができなかった。
まだ熱を感じていた。
あの瞬間を鮮明に覚えていた。
あの眩しさ。
あの爆発。
世界が一瞬にして消え去った。
「だが、完全にではない」と声は続けた。
彼の前に一人の女が現れた。
長い髪、穏やかな瞳。
あまりにも穏やかだった。
「もう一度チャンスをあげましょう」
彼は初めて彼女を見た。
「…なぜ?」
「誰かがその力を背負わなければならないから」
沈黙。
「どんな力だ?」
彼女はかすかに微笑んだ。
「あなたを殺した力よ」
彼は森の中で目を覚ました。
空は青かった。
空気は…澄んでいた。
澄みすぎている。
彼はゆっくりと立ち上がった。
…まだ生きている…
彼は一歩踏み出した。
足元の地面が…
崩れ落ちた。
…何…?
彼は後ずさりした。
彼は自分の手を見た。
手が震えていた。
…まさか…
彼は木に触れた。
幹は塵と化した。
…まさか…
彼は膝をついた。
…一体何をしたんだ…?
数日が過ぎた。
あるいは数週間。
彼は分からなかった。
彼はすぐに理解した。
彼は何も触れることができなかった。
彼は近づくことができなかった。
彼が触れたものはすべて…
溶けていった。
…これは力ではない…
彼の声は震えた。
――…これは呪いだ…
彼は一人暮らしだった。
誰とも接触せず、手に入るものを何でも食べた。
彼は身動き一つせず眠っていた。
彼は…恐怖に怯えながら息をしていた。
彼女を見るまでは。
「迷子かい?」
少女。
ショートヘア。
じっと見つめる視線。
近すぎる。
「これ以上近づかないで!」
彼女は立ち止まった。
「…どうして?」
「とにかく…近づかないで!」
彼女はうつむいた。
「あなたは変だわ。」
「あなたは分かっていない…」
「じゃあ説明して。」
沈黙。
彼は後ずさりした。
「これ以上近づいたら…死ぬ。」
彼女は彼を見た。
恐怖ではなく。
好奇心で。
「じゃあ、これ以上近づかないわ。」
彼女は座った。
少し離れたところに。
「でも、私は行かないわ。」
彼は眉をひそめた。
「どうして?」
「だって、あなたは一人だから。」
その答えは…
何よりも彼を傷つけた。
数日が過ぎた。
彼女は戻ってきた。
いつも。
あまり近づかないように。
「名前は?」
「どうでもいいわ。」
「私には関係ある。」
沈黙。
「レン。」
「私はアイラ。」
二人は話した。
遠くから。
いつも。
「今まで誰にも触れたことがないの?」アイラは尋ねた。
レンは俯いた。
「目が覚めてからずっと。」
「それは悲しいね。」
「それが一番いいのよ。」
「そうは思わない。」
ある日の午後、彼女はさらに一歩近づいた。
レンは身構えた。
「やめろ!」
「ちょっと試してみたいことがあるの。」
「だめ!」
彼女は手を上げた。
「もしそれが本当なら…」
レンはパニックに襲われた。
「やめろ!」
しかし、彼女はもう近すぎた。
「…ほんの少しだけ…」
彼女の指が彼の手に触れた。
沈黙。
何も起こらなかった。
レンは目を開けた。
「…何…?」
アイラは微笑んだ。
「あなたは全てを破壊するわけではない。」
「いや…そんなはずはない…」
「もしかしたら…」
彼女はまっすぐに彼を見つめた。
「あなたは守れないものだけを破壊する。」
彼女の言葉はレンに突き刺さった。
「…僕は何も守れない…」
「ならば、学びなさい。」
初めて…
レンは引き下がらなかった。
しかしその瞬間…
世界が震えた。
ひび割れ。
空中に。女神の声が戻ってきた。
「もう十分だ。」
アイラは空を見上げた。
「あれは何だ?」
レンは理解した。
「…何かを置き換えるために来た…」
亀裂が広がった。
闇。
破壊。
「その力はお前のものではない」と声は言った。「それは均衡だ。」
「均衡?」
「世界を維持するための破壊だ。」
レンは歯を食いしばった。
「…じゃあ、俺は武器なのか。」
「その通りだ。」
アイラは一歩前に出た。
「だからといって、私が破壊しなければならないわけじゃない!」
「それはお前が決めることではない。」
世界は崩壊し始めた。
木々。
大地。
空気。
レンは自分の手を見つめた。
「…もし何もしなければ…」
「全てが消え去る」と声は言った。
アイラは叫んだ。
「じゃあ、何かして!」
「できない!」
「できるわ!」
沈黙。
レンは彼女を見た。
「…もし力を使い切ったら…」
「…僕も消えてしまう…」
アイラは理解した。
「…じゃあ、正しくやって…」
「何?」
「破壊としてじゃない。」
彼女は微笑んだ。
「守るために。」
レンは目を閉じた。
初めて…
彼は破壊を考えなかった。
彼は守ることを考えた。
力が溢れ出した。
しかし、爆発はしなかった。
それは封じ込められた。
圧縮された。
そして…
それは消えた。
沈黙。
世界は…安定した。
裂け目は閉じた。
そしてレンは…
消えていた。
アイラは膝をついた。
「…バカ…」
彼女は涙を浮かべながら微笑んだ。
「…やっと分かったのね…」
風が吹いた。
そっと。
そして一瞬…
彼女は何かを感じた。
温かさを。
まるで誰かが…
彼女に触れたかのように。
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