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ー第3節 絶望の底で冷めたスープを飲んだ刹那。目も口もない不思議な毛むくじゃらの存在「おつまみモンスター」が現れ、彼女の心に溜まった濁りを跡形もなく飲み込む。

第3節 絶望の底で冷めたスープを飲んだ刹那。目も口もない不思議な毛むくじゃらの存在「おつまみモンスター」が現れ、彼女の心に溜まった濁りを跡形もなく飲み込む。


 機械の駆動音だけが微かに響く静まり返った休憩室。アカリの手には、小さな紙コップが弱々しく握られていた。中に入っているのは、今日のランチで提供した味見用のコンソメスープの残りだ。すっかり冷めきって、表面には油が白く浮いて固まりかけている。

 誰にも望まれず、ただ冷えていく今の自分の惨めな状況を象徴しているかのようなそのスープを、アカリは無意識に口へと運んだ。冷たく、塩気だけがやけに際立って舌に残る液体が、乾いた喉をゆっくりと通っていく。

 その冷たいスープを『飲んだ刹那』だった。

 ふわり、と。

 アカリの目の前の空間が、まるで水面に波紋が広がるようにぐにゃりと歪み、ありえないものが唐突に姿を現した。周囲には誰もおらず、もし誰かがいたとしても絶対に視認できないであろうそのはアカリの心に長年ヘドロのようにこびりついていた「絶望」「悲しみ」「上司への激しい怒り」「報われない自己嫌悪」といったあらゆる負の感情の塊、すなわち『心の濁り』を、凄まじい吸引力でズズズッと吸い出し始めたのだ。

 それは単なる表面的な慰めなどではなかった。根本からの『心の濁りの完全な消滅』だった。冷たい手で心臓を鷲掴みにされ、息をするのも苦しかった重苦しい感覚が、みるみるうちに薄れていく。毛玉がもきゅもきゅと満足げに動くたびに、アカリの心は洗い立てのガラスのように透明に、そして羽が生えたように軽やかになっていった。

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