ー第2節 モンスターはアカリの心の澱を残さず飲み込み、現実逃避を明確に否定する。生きる上での苦痛からの究極の解放を再確認した彼女は暗い感情を払拭し、確固たる自信を取り戻した
第2節 モンスターはアカリの心の澱を残さず飲み込み、現実逃避を明確に否定する。生きる上での苦痛からの究極の解放を再確認した彼女は暗い感情を払拭し、確固たる自信を取り戻した
おつまみモンスターは、アカリの心から溢れ出していたドロドロとした暗黒の感情――自分が他者を傷つけてしまったという疑心暗鬼や、深い絶望といった『心の澱』を、まるで極上のスイーツでも味わうかのように、むしゃむしゃと音を立てて食べ尽くしていった。
モンスターが咀嚼するたびに、アカリの胸にのしかかっていた分厚い鉄板のような重圧が、嘘のように軽く、澄み切っていくのを感じた。
そして次の瞬間、アカリの脳裏に、言葉を持たないはずのモンスターから強烈なメッセージが直接流れ込んできたのである。
『別の世界へ生まれ変わることを夢見たり、死後の世界へ逃げ込んだりすることに、何の意味がある? 命の繋がりは、今、ここにある現実の世界にしか存在しない。今の世界での究極の領域を、お前はすでに知っているはずだ。それを取り戻せ』
その力強い思念は、雷のようにアカリの精神の奥底を撃ち抜いた。
そうだ。生きるということは、生まれること、老いること、病に苦しむこと、そして死に行くことの恐怖や苦痛を常に伴う。しかし、彼女の料理は、その避けられない苦痛から人々を解き放ち、今この瞬間を笑顔で生き抜くための圧倒的な命のエネルギーを与えるものだったはずだ。
あの時、一口食べただけで活力を取り戻した社員たちの笑顔。彼らの目に宿っていた感謝の光。自分が食材に向き合い、命の力を極限まで引き出してきたその過程に、誰かを傷つけるような不純な要素は一切混じっていなかった。
「……そうよ。私の料理は、絶対に誰も傷つけない。私の料理は、命を優しく繋ぐためのものなんだから!」
アカリの瞳から、絶望の涙が完全に消え去った。代わりに彼女の目には、かつてないほど力強く、揺るぎない確固たる自信の光が宿っていた。
暗い感情を完全に払拭し、自らの存在意義を再確認したアカリは、力強く立ち上がった。その時、休憩室の扉が勢いよく開き、息を切らしたツカサが飛び込んできた。彼はアカリの力強い瞳を見ると、すべてを察したように安堵の笑みを浮かべた。
「アカリ、お前の無実は俺が必ず証明する。俺と一緒に来てくれ」
「はい、ツカサさん。私、もう逃げません」
二人はしっかりと視線を交わし、力強く頷き合った。ツカサはアカリの手をしっかりと握り、会社の最上階にある役員会議室へと向かって駆け出したのである。




