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ー第6節 自分の料理が人を傷つけたという嘘にショックを受けたアカリは、料理を作る資格がないと絶望する。社員証を置き会社を去ろうとする彼女の前に、息を切らしたツカサが現れる

第6節 自分の料理が人を傷つけたという嘘にショックを受けたアカリは、料理を作る資格がないと絶望する。社員証を置き会社を去ろうとする彼女の前に、息を切らしたツカサが現れる


 一方、解雇を言い渡されたアカリの受けた絶望は、誰の目から見ても底知れないものだった。

 彼女はサメジマが自分を陥れるために卑劣な陰謀を企てたなどとは微塵も疑っていなかった。その純粋すぎる心のゆえに、「自分の作った料理で、社員の皆さんが苦しんでしまった」というサメジマの突きつけた嘘の事実を、真正面から受け止めてしまっていたのである。

 薄暗く誰もいないロッカールームで、アカリは長年使い古した自分のロッカーの前に立ち尽くし、両手で顔を覆ってとめどなく溢れる涙を流していた。

 これまでどれだけ心を込めて、みんなの健康と笑顔を願って料理を作ってきたか。少しでも元気になってほしくて、出汁の温度管理に気を配り、食材の切り方を工夫してきた。しかし、自分の未熟さのせいで、取り返しのつかないミスを犯し、人を傷つけてしまったのだ。そう思い込んだ彼女の心は、激しい自責の念によって粉々に砕け散っていた。

「私には……もう、料理を作る資格なんてない」

 誰もいない空間に、震える声が悲しく響いた。アカリは涙で濡れた手で、ずっと大切に身につけていたエプロンの紐をゆっくりと外した。そして、自分の名前が刻まれた社員証を外し、冷たい金属のデスクの上にそっと置いた。

 これ以上、誰にも迷惑をかけたくない。自分の存在が、これ以上誰かを不幸にする前に、静かにこの会社を去ろう。

 そう悲痛な決意を固めたアカリの背中は、ひどく小さく、今にも消えてしまいそうに頼りなかった。彼女がロッカーの扉を閉め、重い足取りで部屋を出ようとした、その時だった。

 バンッ! と乱暴な音を立ててロッカールームの扉が開かれた。

 そこに立っていたのは、ネクタイを緩め、激しく息を切らしたツカサだった。彼の目は血走り、アカリの絶望に満ちた悲痛な姿を見た彼の胸には、サメジマに対するかつてないほどの強い怒りと、そして何よりも、大切な彼女を守り抜けなかった自分への激しい苛立ちと不甲斐なさが渦巻いていた。

「アカリ……っ!」

 ツカサの低く、しかし熱を帯びた声が、静寂に包まれたロッカールームに響き渡った。

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