ー第2節 激務に追われる社員たちと大量の残飯。食事をただのエネルギー補給としか考えない過酷な環境に、アカリの心身はついに限界を迎え、深い悲しみに包まれる。
第2節 激務に追われる社員たちと大量の残飯。食事をただのエネルギー補給としか考えない過酷な環境に、アカリの心身はついに限界を迎え、深い悲しみに包まれる。
怒涛のような昼のピークがようやく過ぎ去った午後二時過ぎ。食堂の喧騒がまるで嘘のように静まり返る中、アカリを待ち受けていたのは、体力よりも精神を最も深く削り取る過酷な作業だった。
下膳口に山のように積み上げられたトレイの群れ。そこには、アカリが朝早くから丹精込めて作った色鮮やかな小鉢や、出汁が染み込んだ煮物が、ほとんど手つかずのまま残されていた。
「また、こんなに……」
残飯を大きなゴミ袋に次々と流し込むたびに、アカリの胸はギリギリと締め付けられるように痛んだ。この大企業で働く社員たちは皆、想像を絶する過酷なノルマや、終わりの見えない派閥争いという強烈な重圧に日々晒されている。彼らにとって昼食の時間は、心身を「休む」ためのものではなく、午後の終わらない戦いに向けて「とりあえず胃袋に何か固形物を詰め込む」だけの、極めて無機質な作業になり果てていた。
味わう余裕など誰一人として持っていない。片手でスマホの画面をスクロールしてメールを打ちながら、あるいは分厚い資料の束に目を通しながら、ただ口を動かして飲み込むだけ。昼休みの時間がなくなれば、どれほど栄養満点で美味しいおかずであっても、容赦なく残して仕事へと戻っていく。
自分の真心を込めた料理が、単なる「残飯」として大量に廃棄されていく光景を見るのは、料理を生きがいとするアカリにとって、自らの存在意義を根本から否定されているようなものだった。
毎日上司から理不尽に怒鳴られ、心を込めた料理は誰にも見向きもされずに捨てられる。誰の役にも立っていないという真っ暗な無力感と、連日の睡眠不足による過労が相まって、アカリの身体は鉛のように重くなっていた。視界が急にグラリと大きく揺れ、足元がおぼつかなくなる。
「もう、ダメかもしれない……私、何のためにここで働いているんだろう……」
心身ともに完全な限界を迎えたアカリは、ふらつく足取りで誰もいない薄暗い休憩室の隅へと向かい、冷たく硬いパイプ椅子に崩れ落ちるように座り込んだ。




