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ー第2節 サメジマは裏で食材調達費をピンハネし粗悪な食材を仕入れて横領していた。アカリが食材にこだわり始めたことで自分の不正が発覚する危機を覚え、保身のために焦燥する

第2節 サメジマは裏で食材調達費をピンハネし粗悪な食材を仕入れて横領していた。アカリが食材にこだわり始めたことで自分の不正が発覚する危機を覚え、保身のために焦燥する


 サメジマがアカリに対して激しい怒りを募らせていた理由は、単なる嫉妬やプライドが傷つけられたという感情的な問題だけではなかった。彼には、誰にも知られてはならない、そして絶対に隠し通さなければならない致命的な秘密があったのだ。

 実はサメジマは、長年にわたって食堂の運営資金を管理する立場を悪用し、食材調達費を大規模にピンハネするという不正を行っていた。会社から支給される本来ならば新鮮で高品質な食材を仕入れるための潤沢な予算を中抜きし、独自の裏ルートを使って賞味期限ギリギリの粗悪な加工肉や、廃棄寸前の萎びた野菜を安く買い叩いて食堂に納入させていたのである。

 そして、帳簿を巧妙に改ざんして浮かせた莫大な差額は、全て自分の隠し口座へと送金していた。彼はその横領した金を使って、夜の歓楽街で豪遊を繰り返し、身の丈に合わない高級外車を乗り回すという放蕩の限りを尽くしていたのだ。

 アカリが自分の指示通りにレトルト食品だけを扱っていた頃は、味が濃い化学調味料で粗悪な食材の不味さを誤魔化すことができたため、この横領が周囲に発覚することはなかった。

 しかし、アカリが覚醒し、食材の命の力を極限まで引き出す手作り料理にこだわり始めたことで、状況は劇的に一変した。

「課長、今週届いたお野菜、少し傷みがおかしい気がするんです。私が直接、農家さんに連絡して鮮度を確認してみてもいいでしょうか?」

 ある日、アカリが何の悪気もなく放ったその一言に、サメジマは心臓が凍りつくような恐怖を覚えた。アカリの優れた味覚と食材を見る目は、もはや彼が用意する粗悪品を誤魔化しきれなくなっていたのだ。彼女が独自に仕入れルートを調べ始めれば、自分が長年手を染めてきた横領と不正な裏取引が白日の下に晒されるのは時間の問題だった。

「余計なことをするな! お前は言われた通りに料理だけしていればいいんだ!」

 サメジマは声を荒らげてアカリを怒鳴りつけたが、額には冷たい汗が浮かんでいた。このまま彼女を厨房に置いておけば、自分の人生は完全に終わる。横領が発覚すれば、懲戒解雇どころか横領罪で逮捕されるのは免れない。

 サメジマの心の中で、保身のための焦燥感がどす黒い殺意にも似た悪意へと変わり、アカリを完全に排除するための卑劣な計画が静かに幕を開けたのである。

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