ー第6節 ツカサはアカリの料理の力を独占しようと企む輩から彼女を誰にも気づかれないよう密かにガードした。その結果、二人の距離は少しずつ確実に縮まっていき、互いへの信頼と絆は深く結ばれるのだ
第6節 ツカサはアカリの料理の力を独占しようと企む輩から彼女を誰にも気づかれないよう密かにガードした。その結果、二人の距離は少しずつ確実に縮まっていき、互いへの信頼と絆は深く結ばれるのだ
アカリの料理がもたらす圧倒的な効果が社内に知れ渡るにつれ、当然ながらその力を己の利益のために利用しようとする不届き者たちが現れ始めた。
「あのアカリという女、うちの部署の専属料理人として引き抜こう。彼女の飯さえあれば、うちの部下たちは二十四時間文句も言わずに働くマシーンになるぞ」
「いっそのこと、外部の富裕層向けに彼女の料理を高値で売りさばくビジネスを立ち上げるべきだ。あの女なら適当に丸め込めるだろう」
一部の強欲な役員や、利益至上主義の幹部たちが、アカリを甘言で騙し、自分たちの支配下に置こうと水面下で卑劣な計画を企てていたのである。
しかし、彼らの目論見がアカリの元に届くことは、ただの一度たりともなかった。
なぜなら、ツカサが彼女の周囲に絶対的な防衛網を敷いていたからである。ツカサは社内で持つ自らの圧倒的な実務能力と、これまで培ってきた政治的な影響力をフルに駆使し、アカリに近づこうとする輩を次々と裏で叩き潰していった。
強引な引き抜きを画策した役員に対しては、彼が過去に行っていた不正な経理処理の証拠を極秘裏に突きつけ、完全に口を封じた。外部へのビジネス展開を企てた幹部には、彼が推進していたプロジェクトの予算を根回しで完全に凍結させ、物理的にも社会的にも身動きが取れない状態へと追い込んだ。
(彼女の純粋な領域を、下劣な連中に踏みにじらせるわけにはいかない。彼女の居場所は、俺が守る)
ツカサは冷徹な顔の裏で静かに燃える決意を抱き、アカリには一切その事実を悟られることなく、彼女のための安全で平和な聖域を完璧に維持し続けていた。
そんな血生臭い暗躍があったことなど露知らず、営業時間が終わった後の静かな食堂で、アカリは今日も一人で明日の仕込みをしていた。
「……アカリ」
ツカサが厨房の入り口から声をかけると、アカリはパッと顔を輝かせた。
「あ、ツカサさん! 今日も一日、本当にお疲れ様でした。今、ちょうどお湯が沸いたところなんです。ツカサさんのために、特別なお茶を淹れますね」
アカリは急須に丁寧にお湯を注ぎ、湯気の向こうでふわりと微笑んだ。その笑顔は、昼間のどんな料理よりもツカサの心を強く打ち、日中の冷酷な立ち回りで冷え切った彼の心を優しく溶かしていく。
「……ああ、頼む。お前の淹れる茶が、一番落ち着く」
ツカサはカウンターに腰を下ろし、差し出された温かい湯呑みを受け取った。誰もいない静寂の食堂の中、二人の間には穏やかで心地よい時間が流れていく。
ツカサはアカリを外敵から守り抜き、アカリはツカサの疲れた心を料理で癒やす。言葉に出して確認し合うことはなくても、二人の間の距離は以前よりも少しずつ、しかし確実に縮まっていた。
窓の外には夜景が広がる中、二人はただ静かにお茶を啜り、互いの存在がもはや自分にとってかけがえのないものになっていることを、心の奥底で深く感じ取っていたのである。




