表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/29

ー第2節 アカリの料理は食べた者の本来の才能を完全に引き出す効果があった。業績不振で解散寸前だった部署の面々が食後に画期的なアイデアを閃き、次々と大型契約を勝ち取って周囲を驚愕させるのだ

第2節 アカリの料理は食べた者の本来の才能を完全に引き出す効果があった。業績不振で解散寸前だった部署の面々が食後に画期的なアイデアを閃き、次々と大型契約を勝ち取って周囲を驚愕させるのだ


 アカリの作る定食がもたらす効果は、単なる肉体的な疲労回復や体調不良の改善だけには留まらなかった。彼女の料理には、食べた者の脳細胞を極限まで活性化させ、「その人間が本来持っている才能を百パーセント、いやそれ以上に引き出す」という、到底信じられないような力まで秘められていたのである。

 その効果を最も顕著に体現したのが、社内でお荷物扱いされていた『営業部第十三課』の面々だった。彼らは長年にわたって業績不振が続き、次の四半期で成果を出せなければ部署ごと解散、全員が事実上のリストラ候補になるという絶望的な状況に追い込まれていた。

 課長のタナカをはじめとする六人の部員たちは、お通夜のような暗い表情で連れ立って食堂を訪れた。その日のメニューは『ブリの照り焼き定食』。黄金色のタレが絡んだ肉厚のブリに、柚子の香りが添えられた上品な一品だった。

 タナカが諦め半分の溜め息をつきながら、ブリの身をほぐして口に入れた瞬間。

 彼の脳内で、これまで繋がっていなかった無数のシナプスが、爆発的な閃光と共に一斉にリンクした。

「……っ!? これだ!!」

 タナカは突然、椅子から立ち上がって叫んだ。彼の頭の中に、これまで誰も思いつかなかったような、画期的かつ斬新なプロジェクトのアイデアが、完璧な設計図と共に浮かび上がったのである。それは、現在彼らが直面している困難な交渉を、一発でひっくり返すことのできる奇跡の戦略だった。

「課長、どうしたんですか!?」

「お前たちも早くこれを食え! そして午後からの会議の資料を全て白紙に戻すぞ!」

 タナカの剣幕に押され、部下たちも慌てて定食を口に運んだ。すると、彼らの目にも次々と光が宿り始めた。普段はミスばかりで自信を喪失していた若手社員は、突如として天才的なマーケティングの切り口を口走るようになり、口下手がコンプレックスだった中堅社員は、淀みない完璧なプレゼンテーションの構成をその場で空で暗唱し始めた。

 アカリの料理によって、彼らの中に眠っていた才能の種が一気に開花し、覚醒状態に突入したのである。

 その日の午後、営業部第十三課は、誰もが絶対に不可能だと匙を投げていた業界最大手の企業との商談に臨んだ。彼らはアカリの定食によって引き出された圧倒的な知力、交渉力、そして溢れんばかりのカリスマ性を存分に発揮した。先方の重役たちは彼らの提案に舌を巻き、たった一時間の会議で、年間数十億円規模の超大型契約が即日締結されるという前代未聞の偉業を成し遂げたのである。

 彼らが意気揚々と凱旋し、契約書をデスクに叩きつけた時、フロア中が水を打ったように静まり返り、やがて割れんばかりの歓声が巻き起こった。

「第十三課が、あの巨大企業を落としたぞ!」

「信じられない……彼ら、昼休みに何を食べてきたんだ!?」

 この奇跡の逆転劇を皮切りに、社内のあちこちで驚異的な成果が報告されるようになった。開発部のエンジニアは定食を食べた直後に難解なプログラムのバグを一瞬で見抜き、企画部の社員は数カ月間悩んでいた新商品のコンセプトを五分で書き上げた。アカリの料理は、社員たちの能力のリミッターを外し、彼らを無敵の天才集団へと変貌させていったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ