仲宗根隼人の目的
「あのー、すいません。」
成人男性に警察官が声をかける。
「ちょっと職務質問にご協力お願いします。」
「え、ええ。」
「では、まず免許証など、身分が分かるものを提示してください。」
「はい…。」
男は自分の財布から免許所を差し出す。その名前欄には仲宗根隼人と記載されていた。
「ここら辺で何か変わったことはないですか?」
「い、いや…。特には…。」
目線を泳がせ、回答を濁す。
「因みに、貴方はここで何を?」
「えっ、別に。何となく通りかかっただけですけど…。」
「そうでしたか。実は不審者の通報がありまして、お気をつけください。ご協力ありがとうございました。」
そう言うと警察は踵を返す。その顔には男に対しての拭い切れない不信感を抱くのだった。
●仲宗根 隼人の正体と目的
仲宗根隼人は今日も美結の家の近くを徘徊する。
スマホを見ると髙山美奈との写真が待ち受けに設定されていた。隠し撮りではなく、二人で体を寄せ合い、笑顔で撮った写真だ。
仲宗根は美結の母である髙山美奈と正式に交際していたのだ。仲宗根は真剣に結婚まで考えていた。
だが、結婚の話になると、
「まだ手のかかる娘がいるから。」
と拒否されていた。仲宗根からすると「そんなこと関係ない。」と思っていた。何時なら良いのかとはっきりしない態度をじれったく感じていた。
そんな中、急に連絡が途切れたのだ。電話をしても繋がらず、メッセージを送っても既読にならない。
試しに職場に行くと、
「ああ、髙山さんね。辞めたよ。急に来なくなってね。無断欠勤の後、そのまま解雇扱いになったよ。」
職場の人間から証言を得た。家の住所は知らなかったが、周囲の聞き込みなどから、凡その住所が分かった。
その行為が不審に思われたのか、警察が増えた気がする。
だが、その甲斐あってか、住所と愛する相手の娘を把握することができた。
美結ちゃんは母がいなくなっても、普通に生活を続けている。取り乱した様子も塞ぎ込んだ様子もない。むしろ、活動的に意欲的に過ごしている。
そんなことが可能なのか?それまでの生活がどのようなものだったかは分からないが、極々一般的な子どものように見える。
特に変わった事と言えば、買出しやゴミ出し、洗濯などの家事も一人でやっていること、週に一度程度お金を下ろしていること。そして、時より同じ人物と思えないほど冷淡な目をすること。
もう少し情報がほしい。だが、これ以上聞き込みをし、警察に目を付けられるのは好ましくない。最後に一人だけ。できればあの子と近しい人物、そして話をしたことを言いふらさない人物。もしくは他人に言っても冗談か些細な事と思われる人物。悩みこんでいると、それに適切な人物が目の前に通りかかった。
同級生の女の子から非常に有意義な情報を聞くことができた。
・突然、見た目や言動が人が変わったようになった。
・そう思えば、次の日は今まで通りになる日もある。
・そんな日でもちょっかいをかけると、また人が変わったようになる。
思春期特有の心身の変化もあるかだろうが、始まった時期が怪しすぎる。
「それが、丁度、美奈が消息を絶った時期と重なる。」
母がいなくなって、パニックになり、落ち込む。または、自暴自棄になるのであれば想像できる。だが、寧ろ美結は好転しているかのように感じる。
「でも、どうやって…。」
頭を抱えるが、考えがまとまらない。そこで話しかけた女の子にある取引を持ち掛けた。




