第4話 混ぜた恋は、戻らない
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「……魔力を通して――っと。こうかしら?」
「はいはーい、こちら夢魔サポートセンター、アモレットですっ♡ おや、セレフィーナ嬢じゃないですか~! おはようございます!」
連絡先と言われて渡されたハンカチ大の魔法陣に魔力を込めると、昨日の夢魔の姿が立体に浮かび上がった。
「『おはようございます』ではございませんわ。
わたくし、昨晩もまたずっと夢を見続けておりますのよ! それも……非常に個人的な、夢を」
「おおっ、それはつまりとっても濃厚な恋心ってことですね~! さすがセレフィーナ嬢!ひゅーひゅーっ!あっつあつじゃないですか!」
「ふざけないでくださいませ!? あなたを追い払ったから、わたくし、てっきりもう終わったと思っておりましたのに……あの夢の内容、あなたが操作されているんではなくて?――」
「いえいえいえっ! ちょっと誤解があるようですっ!」
ぴしりと指を立て、夢魔は誇らしげに胸を張った。
「ご安心ください、原材料は100%セレフィーナ嬢の想いだけっ♪
わたしがしたのは――言うなれば、皮を剥いて差し上げただけ、なんですよ?」
「……皮、ですって?」
「はいっ。ほら、果物って、皮を剥いたら中が見えるじゃないですか~。
でもその中身は、最初からお嬢様の心のなかにあったものなんです!」
「……」
「わたしが夢の中に映し出したのは、あくまでお嬢様の本心ですからっ。
わたしは、ただそれを形にして差し上げただけなんですよ〜♪」
「……わかりましたから、早く元に戻してくださいませ」
「うーん、それがですね……もう、全部混ざっちゃってるんですよ〜」
「……は?」
「例えて言うなら――ミックスジュースです!」
「……みっ、何ですって?」
「お嬢様の恋心も、もう混ざってしまったんです。
目覚めても、それは夢の中にだけ留まってくれない。
だって、もともとあの夢は、お嬢様の本心が材料ですから~♡」
「……」
「バナナといちごとりんごを、一緒にミキサーにかけるでしょう?
すると、どんなに頑張っても、もう元のバナナだけ取り出すことってできないんですよね~」
「……」
セレフィーナ嬢は、思わず――唇を噛みしめた。
胸の奥に居座り続ける熱――それは確かに、夢だけのものではない。
「……では、わたくしは……もう、この気持ちを……」
「取り除くことは、できません♪ でも、扱い方なら、変えられますよ?」
「……どう、すれば?」
「――もう、告白しちゃえばいいんじゃないですか?」
「っ……!」
「心のもやもやをスッキリさせちゃえば、もう夢なんて見ませんってば♪
成功率、けっこう高そうですし! あのロジオンさんも、まんざらでもなさそうでしたしね〜♡」
「なっ……なっ……!」
「……というか、逆に、こっちからもちょっと後押ししてみましょうか? ロジオンさんのほうにも!」
「……は?」
「はいっ、そちらにも軽~く恋心への自覚をぽんっと促す夢を、ちょいっと流し込んであげればですね……
きっと、お嬢様にそっくりの女性が夢に現れて、ちょっと甘~い雰囲気に持ち込むのではでは?おおっ、我ながらナイス名案♪」
「…………っ!」
その瞬間、胸の奥で何かが軋む音がした。
ロジオンの夢の中で、自分ではない誰かが――彼に触れる? 甘く囁く?
(それがたとえ、わたくしに似せた幻でも……っ)
「……それは――だめ、ですわ」
「へ?」
「たとえロジオンの心が生み出した幻だとしても、
それがわたくしではない何者かによって、彼に……あの方に近づくなんて――」
「……」
「そんなこと、絶対に、嫌ですの。」
その言葉に、アモレットの受話器の向こうで、かすかに沈黙が落ちた。
「――あ、じゃあ、やめときましょう!」
唐突な明るい声。
「え?」
「うんうん、その反応、すっごく良いです! 最高に本気の恋心ですねっ♡
これ、たぶんこくったら、案外すんなりいけるやつです!」
「っ、そんな軽々しく……!」
「というわけで! カウンセリングはここまで~☆」
「ちょ、まだ話は――」
「次のご相談者さまが来ましたので切りま〜すっ! それでは恋に幸あれ♡ ぴっ!」
「ま、待ちなさいま――っ」
通信は、そこで無慈悲に切られた。
「…………」
残されたのは、魔法陣の沈黙と――
胸の奥に、ぽつりと咲いてしまった認めたくない恋の花。
そしてセレフィーナ嬢は――
頬を真っ赤に染めながら、魔法陣を畳んだ。
「……こく、など――するはずが、ありませんわっ!」
……けれど、その声は微かに揺れていた。
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あとがき。
第4話をお読み頂きありがとうございました。新作は公爵令嬢が愛しの騎士様と結ばれる恋愛ファンタジーです!ぜひお楽しみ下さい!
楽しかった、続きが少しでも気になる思われましたら★★★★★評価や作品ブックマークをどうぞよろしくお願いします!
次話はロジオンに視点を変えて。本日22:10に投稿致します。ぜひご覧下さい。
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