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エリシュカとの再会

ヴァイツゼッカー大統領はスルトにさっそく連絡を入れた。

スルトはエリシュカ王女との会談を受け入れた。

そうしてエリシュカ王女がテンペルにやって来た。

テンペルは聖堂騎士団総出でエリシュカ王女を待ち受けた。

もちろん、スルトを筆頭にアンシャルとサラゴンがつく。

セリオンもこの場にいた。

馬車と護衛の騎兵がテンペルの敷地の前で止まる。

馬車からはメガネをかけた茶色い長い髪の女性が現れた。

セリオンは一目でこの人物が理知的だと悟った。

もっとも、知識や教養があるということと、知力はイコールではないのだが。

護衛の兵士に取り巻かれながら、女性はやって来た。

「初めまして、スルト総長、私はチェカ王国の王女エリシュカと申します。お見知りおきを」

「初めまして、エリシュカ王女。私はテンペルの代表を務めているスルトだ。そしてこちらがテンペル副長のアンシャルだ」

スルトがアンシャルを紹介する。

「アンシャル様……お久しぶりでございます」

「エリシュカ殿も……より美しさが増したようだ」

エリシュカはふるえていた。

それはアンシャルならきっと希望に答えてくれると思っているからに違いない。

セリオンの目から見てもエリシュカは涙を流していた。

二人の言葉は少なかったが、この二人は互いにわかり合っているのだろう。

「それではエリシュカ殿との会談のために場所を変えるとしよう。聖堂の応接間に来ていただきたい」

スルトがエリシュカをリードする。

この出迎えは儀礼として必要だったが、会談には別な場所が適している。



スルト、アンシャル、エリシュカの三人は応接間に移動した。

人目がなくなると、エリシュカは泣いた。

「エリシュカ……そんなに泣きたかったのか?」

アンシャルがエリシュカをいたわる。

「だって、私はずっと一人だったんです! 国を追われて……ツヴェーデンに亡命するしかなくて……う、ううう……」

「やれやれだ。アンシャルと二人きりの時なら泣いても問題がないが、私もいるのだぞ?」

そう語るスルトの言葉には父性があった。

父性とは規範にかかわっている。

「うう、申しわけありません……緊張の糸が切れて……ずっと泣きたかったもので……」

「まあ、いいだろう。エリシュカ殿のためにお茶を用意させよう。それではリラックスして話に入ろう」

「エリシュカがここに来たのは私たちの協力を得るためか?」

「はい、そうです。ヴァイツゼッカー大統領からそう助言されました」

「あの狐め。厄介ごとは私たちに押し付けたいと見えるな」

スルトがヴァイツゼッカー大統領の思惑を見抜く。

もっともこの大統領はこういう人だったが……。

「スルト様、アンシャル様、私はチェカの王位に就きたいのです。お力を貸していただけますか?」

「我々は慈善団体ではない。我々のテンペルは宗教団体だが、見返りもなしで行動するほど愚かでもない。そこでどうだろうか? あなたが王位についた時、テンペルをシベリア人の代表と認めてもらいたい」

「そんなくらいのことでよろしいのですか?」

エリシュカは意外な感じを抱いたようだ。

エリシュカからすれば受け入れることは困難ではない。

「私たちは将来、シベリアを解放するつもりだ。その時のために、外交関係を持ってもらいたいのだ」

スルトは将来シベリア人の国家を認めてもらいたかったのだ。

今現在シベリアはガスパル帝国に占領され、属州とされている。

シベリウス教の行為を公に表わすことは死刑をもって禁じられていた。

シベリアはシベリア人の故郷だ。

民族的故郷といっていい。

「わかりました。そのようにはからいましょう。それで、チェカの王位に就くためには王宮を弟ヴェンツェルから解放しなければなりません。そのためには武力が不可欠です」

「それは私たちもわかっている。そこで、我々の戦力を派遣しよう。派遣するのはセリオン、エスカローネ、サラゴン、アリオン、そしてアンシャルの五人だ。彼らは一騎当千だ。無駄に多くの兵士を出すよりよっぽど有益だ」

スルトがテンペルの優秀な戦力を出すことを承知した。

だが、テンペルは傭兵ではない。

テンペルは軍事組織でもある。

「エリシュカ殿には今日はテンペルにとどまってもらおう。おつきの兵士たちもいっしょに泊まるとよいだろう。それに、アンシャルと話すにもいいだろうしな」

「エリシュカ……実は私は婚約したんだ」

「え?」

エリシュカが大きく目を開く。

「相手はヤパーナー女性のアオイという人物だ。私たちは互いに愛し合っている」

「それは良いことですね。アンシャル様はずっと女性と縁がありませんでしたから、そうなったのはとても良いことだと思います」

「食事の時に紹介しよう。それでは、政治の話しはここまでだ。ここからはプライベートな会話にしよう」

かくして、この二人は私的な会話を交わしたのだった。



夜、ひそかにテンペルに屋根から侵入しようとするグループかいた。

彼らはある組織の暗殺者であった。

もちろん狙いはエリシュカである。

彼らは家の屋根に上って、テンペルの様子を確かめていた。

「門の兵士が厄介だな」

「一撃で仕留めれば問題なかろう」

「エリシュカ王女は客室にいるようだ」

「まずは、陽動だな」

「おまえたちは何者だ?」

「!?」

闇の中から現れたのは金髪の戦士。

大きな剣を片手で持った男性だった。

「きさま、何者だ!」

「俺はセリオン・シベルスクだ。おまえたちは聞かずとも、暗殺者だな? 大方王女を暗殺しに来たんだろう?」

暗殺者たちは武器を取った。

セリオンを殺そうというのだ。

「フン! これだけの集団を相手にどこまで持つかな!」

「無謀の極みだ!」

「そうかな?」

セリオンは余裕で相手に返す。

暗殺者たちにはそれが気に障った。

「ええい、すぐに殺してくれる! そしてエリシュカも同じように葬ってくれるわ!」

「そうはさせない」

セリオンに一斉に暗殺者たちが遅いかかる。

セリオンは大剣を巧みに、操って暗殺者たちを斬り捨てる。

「ぐはっ!?」

「がはっ!?」

「なっ!?」

「バカな……!?」

暗殺者たちがあっさりとやられていく。

生き残った暗殺者たちは恐怖におびえた。

彼らは後ずさった。

そんな連中にセリオンは迫る。

「人を殺しに来たんだ。逆に殺されることもあり得るな?」

セリオンが大剣を暗殺者に向ける。

暗殺者たちは煙球を屋根に叩きつけた。

煙が周囲に充満する。

暗殺者たちはそのあいだに姿を消した。

「くっ、煙幕か!」

煙幕が消えた時、暗殺者たちの姿はなかった。

「取り逃がしたか……報告の必要があるな」

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