レヴィア
地下施設……アンシャルとパトリックはそこを訪れていた。
レヴィアの司る方位は西。
レヴィアは四番人の紅一点だ。
唯一の女性である。
パトリックの事前情報ではレヴィアは好戦的で、戦いを好むという。
「この地下施設はエレベーターで降りられるようだ」
「アニキー、どこに通じているんでやんすかね?」
「さあ、な。ただ、レヴィアは地下にいるということだけは確かだな」
アンシャルが手の甲でエレベーターを叩いた。
アンシャルたちは最下層まで下りてきた。
するとフロアが魔法の水で覆われた。
この中では水の中でも呼吸ができるのだ。
アンシャルは一気にバックステップした。
槍を持った女が槍を構えて落ちてきたのだ。
「へえ、あたしの一撃をかわすなんてやるじゃない。ファントスやファーブスを倒しただけのことはあるわね」
女は青いプロテクトスーツを着ていた。
女は気が強そうで、女王然とした雰囲気をまとっている。
「あたしはレヴィア。水のレヴィアよ」
「おまえがレヴィアか。私はアンシャル・シベルスクだ。おまえは四番人の一人のようだな?」
「そうよ。このあたしを倒さない限り、ヒュオン様のところには行けないわよ」
「なら、話は早い。戦いと行こうか」
「うふふ! あたしもファーブスのバカがうつったみたい。あたしは強い相手と戦うと燃えるのよ! この魔法水の中ではあたしにかなうと思わないことね?」
「この中では慣れるまでは苦労しそうだな」
「はっ!」
レヴィアが槍でアンシャルを狙ってきた。
アンシャルはそれをさばく。
レヴィアの槍はかなり鋭い。
一撃一撃が強烈だった。
レヴィアはこの魔法水での戦いに特化しているのだろう。
この中ではアンシャルが不利だった。
アンシャルは大きく地面を蹴った。
するとかなり高く跳んでしまった。
アンシャルはくるりと回転すると、地面に着地しようとする。
「逃さない!」
レヴィアはアンシャルに突っ込んできた。
そのスピードはまるで人魚を思わせた。
(速いな……さすがに見逃してはくれないか……)
アンシャルは長剣でガードする。
アンシャルだからこそガードが間に合ったと言えようか。
「くっ、これを防ぐの!? 螺水槍!」
レヴィアはスクリューのごとく回転した槍を繰り出した。
この一撃をくらったら、致命傷は避けられない。
アンシャルは風の剣でそれを中和する。
この魔法水の中には魔力が満ちている。
そのため、アンシャルの風の技も水中であるにも関わらず、使うことができた。
「スピアフィッシュ!」
レヴィアは槍先から、水の刃を撃ちだした。
水の刃は三方からアンシャルに迫る。
アンシャルは一気にレヴィアに接近した。
回避と同時に接近したのだ。
アンシャルは長剣を振り下ろす。
「ぐうっ!?」
レヴィアが苦悶を上げる。
アンシャルは明らかにレヴィアを押していた。
それにだいぶこの中も慣れてきた。
慣れれば基本戦闘力が高いアンシャルの方が有利になる。
「くらいなさい! 氷烈砲!」
レヴィアは氷のレーザービームを出した。
アンシャルは風の剣を出して、迎撃する。
風と氷が正面からぶつかった。
「アイスマイン!」
レヴィアは上昇した。
そして上方に氷の塊をいくつも作った。
「さあ、これでフィナーレよ! 死になさい!」
レヴィアがアイスマインを次々と落下させてくる。
ただ、この攻撃で終わりはしないだろう。
レヴィアはこの攻撃でアンシャルに隙を作り、その間に攻撃してくるだろう。
アンシャルは追いつめられた。
アンシャルはアイスマインを回避する。
レヴィアはそのあいだから氷の槍で急降下してきた。
「とどめ!」
「風巻!」
アンシャルは上方に向けて風の竜巻を起こした。
レヴィアはそれをまともにくらった。
アンシャルの真上にいたからこそ、全身を風の刃で斬り刻まれた。
「あああああああああああ!?」
レヴィアは吹き飛び、地面に落下した。
もはや槍も手にしてはいられないようだ。
「くっ……あたしが水の中で敗れるなんて……あたしの負けよ……」
ばたりとレヴィアは倒れた。
これで四番人のうち三人は倒された。
残りは風のハルピュイウスだ。
セリオンは聖堂でアンシャルが亜空間に捕らわれたことを母ディオドラから聞いた。
「アンシャルが? それでアオイは元気がなかったのか」
「そうなの。でも、兄さんのことだから無事だと思うんだけど」
「そうだろうな。アンシャルのことだ。自力で出てくると思うが?」
「私もアオイちゃんにはそう言ったのよ。ただ、アオイちゃんはこういう経験が少ないでしょう? だから、必要以上に兄さんを心配しているようなのよ」
セリオンはアンシャルの実力を疑っていない。
そもそも、この程度のことを自力でどうにかできないようなら、テンペルの副長は務まるまい。
セリオンもディオドラも心配は不要だと思っていた。
アンシャルのことだ。
ひょっこり姿を現すに違いない。
「わざわざ、助けに行くようなことでもないさ。俺たちはただ待っていればいい。アオイはそれが分からないんだろうね」
「でも、私はセリオンが同じようなことになったら、きっと心配するわ」
「母さん、心配のし過ぎだよ。俺はもう子供じゃない」
「うふふふ……セリオンは大人のつもりでも、私からしたらいつまでも子供のままなのよ?」
ディオドラはセリオンにほほえみかける。
セリオンはため息を出した。
それもまた一面の真実だった。
ディオドラはセリオンを産んだ。
それはディオドラからすればいつまでもセリオンは子供なのだ。
エスカローネも同じようなものだ。
ディオドラは二人を我が子だと思っているのだから。
「やれやれ、俺は子供扱いは好きじゃないんだがな」
「あきらめなさい。セリオンは私の子供、私の息子よ」
「それはわかっているよ。俺は母さんの息子で幸せだ」
「私もセリオンの母で幸せなのよ」
「アンシャルは俺にとって父親も同然だ。アンシャルは俺を導いてくれた。それには感謝している。それにしても、闇の勢力がうごめいているようだな」
「そのようね。このところ事件が立て続けに続いたわ。これは何者かが主導していると見て間違いないわね。私たちを狙う者たち……いったい、何者かしら?」
このところ、アルテミドラの事件から始まって、何かが動いているような気がする。
セリオンにはそんな直観があった。
枝葉の事件が突き詰めれば、何かに結びついているような、そんな気がするのだ。
「俺も調べられる限りで、調べてみよう。アンシャルの一件も何者かの意図を感じる。母さんも気をつけてくれ」
「ええ、私は人質にはなりたくないから、気を付けるとするわ」
二人はうごめく闇を感じていた。




