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ファントス

アオイは血相を変えて、テンペルに戻ってきた。

アオイの体からは血の気が失せている。

顔にも瞳にも生気がなかった。

「? アオイちゃん? どうかしたの?」

ディオドラが優しく語りかけてくる。

「ディオドラさん……アンシャルさんが……」

「兄さんが?」

「アンシャルさんが消えてしまいました!」

アオイはそのまま泣き出してしまう。

ディオドラは直観的にこれは何か起きたと理解した。

ディオドラはまず、アオイを安心させようとする。

そのためにするべきことをディオドラは理解していた。

ディオドラは泣くアオイをそのまま抱きしめた。

「……」

アオイが泣き止んでいく。

「どう? 落ち着いた?」

「……はい」

ディオドラはアオイを離す。

ディオドラはその後アオイから事情を聞いた。

話しによると、テンペル襲撃犯の一人が、アンシャルをどこかに消してしまったのだという。

ディオドラはそれを亜空間にアンシャルは送られたと、理解した。

ディオドラは自分の部屋にアオイを招き入れた。

ディオドラの部屋はあまり物が置いていない。

ディオドラには必要なものは少ないからだ。

彼女の部屋にあるのは本や、花といったものだ。

ディオドラはテーブルの向かい側にアオイを座らせた。

「そう……大変だったわね。でも、アオイちゃんはアンシャル兄さんを信じていればいいと思うの」

「アンシャルさんを、信じる?」

「そう。兄さんは自力で亜空間から出てくるわ。そんなに心配することないと思うわよ?」

ディオドラがヒマワリのような明るい笑顔を見せてくる。

ディオドラはアンシャルのことを信じている。

だから、どんなに絶望的であってもアンシャルは必ず、帰還するだろう。

「アオイちゃん、こんなことは兄さんといっしょにいればいくらでも起こることよ? それにアンシャル兄さんが帰ってくるところはあなたのもとでしょう? だから、アンシャル兄さんを愛しているなら、信じて待ちなさい」

「……わかり、ました。私もアンシャルさんを信じます」

アオイの目には光が宿っていた。



一方、アンシャルたちは――。

「アニキー……人使いが荒いでやんすよ」

「文句を言うな。黙って、道案内をしろ。ファントスのもとへ急げ」

「へいへい、わかりやしたよ」

アンシャルとパトリックは兵器工場に向かっていた。

四番人の領域は町の四方にわたって展開されている。

北のハルピュイウス、南のファーブス、東のファントス、西のレヴィアと四つの方位と関係づけられている。

アンシャルたちはそのうち、ファントスのもとに向かっていた。

事前情報によれば、ファントスは土の術を使うという。

ファントスはヒュオンに命じられて、兵器工場で兵器の生産にかかわっているらしい。

アンシャルはファントスと戦う前から、可能な限り、情報を集めていた。

情報収集は戦いの基本である。

亜空間にも『夜』という概念はあるらしい。

道は暗く、人通りは少ない。

アンシャルはこの町の人々を観察して、あることに気づいた。

それは生気がないのである。

皆が絶望しているかのような、そんな顔つきをしていた。

おそらく、ここから出れないことが精神的に追い詰められているせいだと思われる。

アンシャルには希望がある。

四番人をすべて倒し、ヒュオンをたおせば、この亜空間から脱出できる。

それが分かっているからこそ、アンシャルは絶望しなくて済む。

アンシャルはパトリックに道案内をさせて、兵器工場までやって来た。

「ここが兵器工場か」

「アニキ、ここって人気ひとけがないんですよ。怖くないスか?」

「おまえには勇敢さ(andreia)がないらしいな。ここにファントスがいるのか?」

その時、暗闇からクナイが投げつけられた。

「むっ!?」

アンシャルはそれを長剣ではじく。

暗闇の先には人影があった。

「何奴だ?」

「私はアンシャル・シベルスク。テンペルの副長だ」

「そのアンシャルが何の用だ?」

「おまえがファントスか?」

「そうだ。この私がファントスだ」

「私はおまえを倒しに来た」

「ほう……」

ファントスの目に興味の色が宿った。

好奇心といってもいい。

「愚かな挑戦者の末路は知っているのだろうな?」

ファントスが笑う。

ファントスには見えるのだ。

己の勝利が――。

「さあな。私は負けてやるつもりはない。パトリック、離れていろ」

「へいでさあ!」

パトリックは身を隠した。

それを見送ると、アンシャルは長剣をファントスに向ける。

ファントスは白い仮面をしていた。

彼は忍者のような服を着ていた。

「行くぞ! 風切刃!」

風のカッターが放たれた。

風のカッターは回転して、ファントスに向かう。

「フッ、その程度!」

ファントスは大きく跳躍した。

そして夜の空からクナイをいくつか投げつけた。

アンシャルは風の剣でそのクナイを薙ぎ払う。

クナイは地上に落ちた。

ファントスが背中の刀を抜いた。

そのままファントスはアンシャルに斬りかかる。

アンシャルも長剣を合わせた。

ファントスの刀は忍者刀にんじゃとうといって、やや短めの刀だ。

「クックック! 斬り刻んでくれるわ!」

ファントスが刀で斬り結んでくる。

その斬撃は鋭く、無駄がない。

アンシャルは防戦に追い込まれた。

「フン! これがアンシャル・シベルスクか! この程度の力で我に勝てると思ったか!」

「なめるな!」

アンシャルは反撃していく。

今度はアンシャルが押す番だった。

「ぬうっ!?」

ファントスは回避で精いっぱいだ。

アンシャルの斬撃がファントスを追い込んでいく。

「くっ、おのれ! これならどうだ! 土壁波どへきは!」

土の壁が地面から現れ、アンシャルに迫った。

アンシャルはそれを風の刃で斬り払う。

土の壁が粉砕された。

アンシャルは風のカッター・風切刃をファントスを狙って放つ。

「そんなものなど!」

ファントスは土の壁を出してそれを防ぐ。

「土の壁か……厄介だな」

「フン! この土の壁の前にきさまの術など効かぬ! 土槍どそう!」

ファントスが土の槍を出してきた。

この土の槍は硬質化されている。

刺されば致命傷は必至だ。

アンシャルは横によけた。

アンシャルはこのような正面からの攻撃をまともに受けるほどのろくない。

かわすことは簡単だった。

「……よかろう。この我の真の力、今こそ思い知らせてくれる! はああああああああ!!」

ファントスが地面の上に立った。

ファントスに土が付着していき、まるで鎧のようになる。

「これは土人術どじんじゅつ! 土の鎧よ! 死ねええええええ!」

ファントスが土を圧縮した拳を撃ちだしてくる。

アンシャルはさわやかにかわす。

「はああああああ!!」

ファントスが接近してきた。

その瞬間、アンシャルはファントスと交差した。

「フッ、その程度、我には……ぐはっ!?」

ファントスが地面に膝を付いた。

口から血をはき出す。

「な、バカな……この術が破られるというのか……?」

ファントスはそのまま倒れた。

土の術が解除される。

「まず、一つ」

「アニキー! すごいっすねえ! やっぱアニキについてきて正解でし!」

「次はファーブスを倒すとしよう。パトリック、案内してくれ」

アンシャルはすでに次の目標を見据えていた。

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