表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/287

ハイリヒ・シュタット

アンシャルは目を覚ますと、神聖な都市にいた。

「うっ……ここは?」

アンシャルは立ち上がる。

アンシャルがいたのは路地裏だった。

家々が立ち並び、店が軒を重ねている。

「私は確か……」

アンシャルはここに来たいきさつを思い出す。

「そうだ……ヒュオンによってここに送られたんだ。やれやれ、ここはいったいどこだ? どうやら亜空間のようだな」

アンシャルはため息をついた。

せっかくアオイと幸せなひと時を送っていたというのに……。

水をぶっかけられたかのようだ。

だが、アンシャルは気持ちを切り替える。

ヒュオンはここを『ハイリヒ・シュタット(Heiligstadt)』と呼んでいた。

「まずは表に出てみよう」

「おっと、そうはいかねえな」

「? 誰だ?」

「クックック、俺たちは先輩だよ」

「先輩だと?」

アンシャルの前に屈強な体をした、がらと目つきが悪い男たちが現れた。

アンシャルの前に立ちはだかっている。

アンシャルの通行の邪魔をしているようだ。

「そこをどいてくれないか? 私は表に出たいのだが?」

「へっへっへ! 聞いたかおい! こいつは何もわかっちゃいねえ」

「へい、親分、身ぐるみはがしていいですかねえ!」

「ククッ、こいつカネ持ってそうでゲス」

「おまえたちは追いはぎか?」

アンシャルは心底、軽蔑するかのような視線を三人組に向けた。

「私は急いでいる。そこをどけ」

「へーへっへっへ! それは聞けねえなあ」

「では、実力行使させてもらおうか」

「へーっへっへっへっへっへ! ここを通れると、ぐはあああ!?」

「お、親ビン!?」

「ひえー!? お助けえ!?」

アンシャルは風を拳にまとってボスらしき男のみぞおちにパンチを一発くらわせた。

ボスは一撃で白目をむき、ノックアウトされた。

「ひええええええええ!?」

手下たちは一目散に逃げだした。

アンシャルは表に出た。

そこは人があふれていた。

まるで一つの町だ。

ハイリヒ・シュタットという名の通り、聖なる感じが至る所からした。

町全体から聖なる雰囲気が満ちている。

「さて、人はいるようだし、情報でも集めるか」

「いやー、アニキー! さすがですねー!」

「おまえは?」

そこに現れたのは一人の優男。

「あっしはパトリック(Patrick)と申します。しがない情報屋でさあ!」

「情報屋? それは都合がいい。ここはどこだ?」

「その前に、店で食事でもとりましょう! いい店知ってるんですよ!」

「……いいだろう」

アンシャルはパトリックについていくことにした。

この男が情報を扱っているなら、価値があるだろう。

まずはこの場所について知る必要があった。



喫茶店ゾネ(Sonne)にて。

アンシャルはアイスコーヒーを注文した。

パトリックにも同じものを出してもらった。

情報には対価がある。

「いやー、アニキは強いですね。あのヤーコブス(Jakobus)たちを瞬殺なんて、かなりの実力者で?」

「私はテンペルの副長だ」

「テンペル? あの宗教軍事組織の?」

「そのテンペルであっている」

「なるほどー、強いわけだ」

「それで、ここはどこなんだ?」

アンシャルが本題を切り出す。

パトリックはストローでコーヒーをすすった。

「ここはですね、氷のヒュオンの亜空間でし」

「ここが亜空間であることはわかっている。どうすれば、ここから出れる?」

アンシャルはそんなことはわかっていると言外に告げた。

アンシャルの言葉を聞くと、パトリックはしおれるようにしょんぼりした。

「ここから出れた人間はいないですよ」

「だが、出れる方法はあるはずだ。手がかりはないのか?」

「確かに出る方法はあります。ですが、それがあまりに危険なんでし」

「危険?」

「今のところ、この亜空間に捕らわれて脱出できた人間はいないでしよ」

「その危険な方法とは?」

「氷のヒュオンを倒すことでし」

「なんだ、そんなことか。それなら話は早い。ヒュオンはどこにいる?」

「ヒュオンはハイリヒ・シュタット中央の神殿にいるでし。まさか、アニキ、ヒュオンを倒しに行くなんて言いませんよね?」

「ヒュオンを倒せばいいのだろう? それならば勝機はある」

「アニキ、話しを最後まで聞いてください。ヒュオンの奴は結界で守られているんでし」

「結界?」

アンシャルがいぶかしんだ。

ヒュオンをどうやら直行して倒せばいいというわけではないらしい。

四番人しばんにん――ヒュオン配下の四人の実力者です。この四番人を全員倒さなければ、ヒュオンのもとへはいけません」

「その四人の名は?」

「風のハルピュイウス(Harpyius)、水のレヴィア(Lewia)、炎のファーブス(Faabus)、土のファントス(Fantos)、この四人でし」

「なるほど、よくわかった。ここに道具屋はあるか?」

「ここをまっすぐ行った所にあるでし」

「そうか。情報提供に感謝する。それじゃあな」

アンシャルは代金を置いて立ち去ろうとした。

その時。

「アニキー! あっしを見捨てないで下せえ!」

パトリックがすがりついてきた。

涙目を浮かべている。

どうやらパトリックはアンシャルについてくる気のようだ。

「私は一人で行く。おまえはついてくるな」

「アニキー! あっしを連れてってくだせー!」

パトリックはアンシャルの袖につかみかかった。

ものすごい力でアンシャルを引っ張る。

「おい、離せ。私は自力でここから脱出する」

アンシャルは切り捨てるようにパトリックに言う。

パトリックはそれでもあきらめない。

しぶとさはものすごかった。

「アニキといっしょなら、ここから出れるかも知れませんでしょ? それにあっしはひらめいたんでし! あっしのひらめきは裏切らないだし!」

「……まあいい。どうしてもというなら連れてってやる。だが、アニキはやめろ。私の名はアンシャルだ」

「わかったでし! アンシャルのアニキ!」

「……」

こうして亜空間ハイリヒ・シュタットから脱出するためにアンシャルは行動を開始した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ