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アレスの復活

オルドラーゴたちは邪龍アレスを復活させるため、郊外にあるアレス神殿に向かった。

アレスは封印された後、神殿を建てられてその封印が管理されていた。

アンシャルたちはオルドラーゴについていって、その儀式を妨害しようとした。

アレスの復活はオルドラーゴにとって悲願だ。

アレスがもし復活したら、ノヴァ―リアは廃墟になるだろう。

邪龍による破壊活動はノヴァ―リアの政府を転覆することになるだろう。

もっとも、それこそがオルドラーゴの目的なのだろうが。

これはノヴァ―リアだけの問題ではない。

ノヴァーリアを蹂躙した後は、その矛先をアレスはほかの国に向けてくることは確実だ。

それを考えれば、アンシャルとアオイにはここでアレスを封印を解かせるわけにはいかないのだった。

黒龍魔道士団は放浪の魔道士団である。

彼らはかつてアレスに仕えた者たちの末裔なのだという。

その組織構造は血縁を重視した、疑似家族的なものだった。

彼らは百年前から、アレスの復活のために行動してきた。

つまり、彼らは百年目にはアレスの封印が弱まると知っていた。

アレスは百年前に人々を恐怖と絶望に叩き落した龍である。

アレスは暴虐の化身だった。

町は破壊され、人々は無残にも虐殺された。

多くの血が流れた。

当時の政府は弱体で、あまりに無力だった。

つまり、人々は政府に守ってもらえなかったのである。

こうなれば、人々はっもう政府など信用しなくなる。

当時には常備軍という概念がなく、ノヴァ―リアでは傭兵隊が当時の唯一無二の軍事力だった。

ただし、この傭兵隊は怠惰で臆病であり、戦う前は威勢がいいが、実際の戦闘になるとあっさりと持ち場を放棄するなど、極めて信用が置けないものであった。

ノヴァーリアは経済的には繁栄していたが、常備軍を持つことは嫌ったので、手ごろにカネで済ませるため、傭兵隊を雇うことにしたのである。

この傭兵隊は傭兵隊長に率いられ、有能であれば、極めて危険であり、無能であれば味方が滅びるという致命的欠陥を持っていた。

それに傭兵隊はノヴァ―リア各都市と傭兵契約を交わすのだが、あまりに戦果を挙げると、傭兵契約が打ち切られることもあった。

そこで傭兵隊長たちは考える。

どうすれば、解雇されないか?

どうすれば、己の身を守ることができるか?

それは何事もほどほどにすることである。

勝ちすぎてもいけないし、負けてもいけない。

こうなれば、傭兵隊長たちは相互に内通し合い、八百長戦争に現を抜かす。

このような傭兵隊が邪龍アレスに立ち向かえるはずがない。

実際、傭兵隊長たちはアレスを遠くから見ただけで恐怖に支配され、遁走したのだった。

アレスは巫女アルビーナ(Albina)によって封印された。

人的犠牲はすさまじかったと聞く。

さて、黒龍魔道士団は神殿の中に入っていった。

それを遠くの草むらからアンシャルとアオイが見ていた。

「やはり、あいつらは本当に邪龍を復活させるつもりのようだな。気が狂っているとしか思えない」

「アンシャルさん、そういう人には普通の人の言葉は届かないのではありませんか?」

「ああ、そうだろうな。ここは実力行使と行こうか。ひとまずは奴らの隙を突こう」

二人は黒龍魔道士団の不意を突くことにした。



「風切刃!」

「月光剣!」

アンシャルたちは技で先制攻撃を取った。

魔道士たちは魔法を唱えることもできずに殺された。

「く、何だ、きさまらは!?」

「おまえたちの目的を邪魔する者だ。邪龍アレスの復活を許すわけにはいかない」

「天に代わって、私たちがお仕置きします!」

「なんだあ? 表がうるさいと思っていたらなんだ、てめえらは!?」

そこに現れたのはプラチナブロンドの目つきの悪い不良風の男。

「私たちはテンペルの者だ」

「テンペル? 知らねえなあ。いったいどこのバカだ?」

「テンペルは宗教軍事組織。そして、シベリア人の民族共同体だ」

「で、そのテンペルさんがなんで俺たちの儀式の邪魔をするんだ?」

「おまえたちの目的が邪龍アレスの復活だからだ。それを見ているわけにはいかない」

アンシャルは断言した。

「ククク、儀式を邪魔されるわけにはいかねえが、あんたら強そうだ。この俺と遊んでくれよ?」

男が邪悪な笑みを浮かべる。

この男はまるで獰猛な獣だ。

人間というよりも非人間的な男に見える。

「俺はバノッソ(Banosso)! さあ、熱く戦おうぜえ!」

「望むところだ」

「アンシャルさん……」

「? どうした、アオイ?」

「アンシャルさんはまず神殿の中に行ってください」

「アオイ?」

アンシャルにはアオイの意図が分かりかねた。

「このバノッソとは私が一人で戦います。そのあいだにアンシャルさんは神殿の中へ!」

「しかし……」

「アンシャルさん、私は信用されていませんか?」

「いや、そんなことはない」

「なら、先に行ってください。ここは私が抑えます」

「……わかった。ただし、無理はするな?」

「はい」

アオイはバノッソに斬りつけた。

バノッソはそれを『刀』でガードした。

アオイはそれを見て驚く。

まさかここで刀を使う人物と出会うとは思わなかった。

「そんなに珍しいかよ? この刀は俺の愛刀だ。いいねえ、互いに同じ武器だと純粋な勝負ができる! さあ、行くぜ!」

その時アンシャルが走って身体強化魔術で大きくジャンプし、アオイとバノッソを跳び越えた。

「なっ!? てめえ、どこに行く気だ!?」

「私は一足先に神殿の中に行かせてもらう! アオイ、頼んだぞ!」

「はい!」

「ま、待ちやがれ!」

「行かせません!」

アオイが再び刀で斬りかかる。

バノッソはそれをガードしないわけにはいかない。

再びつばぜり合いになった。

「くそったれが!」

「あなたには私と戦ってもらいます!」

「くっ! なめんじゃねえぞ! 女あ!」

バノッソは動揺していた。

アオイはそれを看破した。

それをアオイは利用することにした。

「それとも、女では相手になりませんか?」

アオイがうっすらと笑みを浮かべる。

それがバノッソの勘に触った。

「ふざけんな! てめえなんかすぐにぶっ倒してやる! 邪王火炎剣じゃおうかえんけん!」

アオイの挑発をバノッソはまともに受けた。

安い相手である。

バノッソの刀が黒い炎に覆われた。

「月光剣!」

月光と闇の炎がぶつかり合う。

月の光が反射して、輝いた。

二人は互いに刀をぶつけ合う。

バノッソは焦っているようだった。

おそらく、バノッソはオルドラーゴに近い人物なのだろう。

責任が彼の肩にかかっていると思われる。

バノッソの焦りは剣技に如実に表れた。

まず、キレがない。

それに早く終わらせようとしているのが、アオイには手に取るようにわかった。

バノッソが刀で突きを繰り出してくる。

アオイはそれを的確にさばく。

焦ったような攻撃ではアオイには通じない。

戦いには心理戦という要素もある。

それは完全にバノッソからは失われていた。

アオイはわざと隙を作った。

バノッソはこれに飛びついてくるだろう。

そして、戦いはその通りに進んだ。

「死にやがれ!」

アオイはバノッソの口汚さに嫌悪感を抱きつつ、バノッソの攻撃をやり過ごす。

バノッソは自分の攻撃が決まったと思い込んでいた。

一瞬だった。

アオイはバノッソに接近して斬りつけた。

「月光閃!」

「なっ、ぐはああ!?」

アオイの攻撃が見事に決まった。

「ちっくしょう……この、俺が……」

バノッソは倒れた。

アオイは神殿に向きなおった。

「さあ、アンシャルさんと合流しなければ……」


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