表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/287

パレルモス

アンシャルとアオイはパレルモスの港に入った。

船からは痛んだ、古代の遺跡が見えた。

これらの遺跡は観光客向けにPRされるのが普通であるが、パレルモスではただ、荒廃するのに任せているようだ。

「……古代の遺跡をこのようなみすぼらしい姿にするなど、何と野蛮な。この町の人間には教養はないのか」

アンシャルは荒れ果てて閉鎖された遺跡を見て悲しくなった。

少なくとも、ほかの都市では遺跡はこのような扱いは受けていないと聞く。

おそらくパレルモスだからだろう。

港には船が停泊していたが、やはりガラの悪さは目立つ。

海賊とまではいかないまでも、素行の悪そうな連中が乗っていた。

「約束だ。俺はここまでしか連れてこれないよ」

漁師のおっちゃんがすまなそうに言った。

「安心してくれ。ここまでで十分だ」

「ありがとうございました」

おっちゃんが船を港に入れる。

アンシャルとアオイはそのまま船から降りた。

おっちゃんは猛スピードで港から去っていった。

よほど逃げたかったと見える。

「さて、この町で海賊の情報を入手できるといいのだがな」

「ほーほほほ、それには及びませんよ」

「!? グランシャイト!?」

港に現れたのはグランシャイトだった。

この男は何か楽しんでいるようだ。

「……いったい何を企んでいる?」

アンシャルは警戒した。

このグランシャイトという奴は陰謀を企む。

警戒しておくにしておくことはない。

「それはそれは。意外ですな。この私ほど善良な者もおらぬでしょうに」

「よく言う。この詐欺師め」

アンシャルはへどが出ると思った。

「アンシャル殿、あなたを我々のアジトに招待いたしましょう」

「何のつもりだ? 罠か?」

「いえいえ、そのままですよ。まあ、確かにアンシャル殿には退屈かもしれませんがね」

アンシャルはグランシャイトの意図が測りかねた。

この男が言っていることは怪しい。

何か目的があるはずだ。

何の理由もなくアンシャルたちをアジトに招くわけがない。

「アンニーバレもいるのか?」

「もちろんですよ。私が案内したしましょう。この岬の先にある洞窟まで来てください」

そう言うとグランシャイトは会心の笑みを浮かべた。

アンシャルたちはグランシャイトについていった。



そこは静かな洞窟だった。

そして内部は広々としていた。

明かりが洞窟内を照らし出す。

「来たな」

「アンニーバレか」

アンニーバレが洞窟の中で待ち構えていた。

「クックック、今度は負けねえぜ?」

「無駄なことを……おまえでは私たちに勝てない」

アンニーバレは前回、アンシャルと戦って実力差を思い知らされたはずだ。

それなのにアンニーバレには勝利への自信があるようだった。

アンシャルはふしぎに思った。

「確かに俺ではおまえに勝てないだろう。だが、俺が戦うわけではない。おまえたちの相手をするのはこいつだ! 出ろ! 海竜バルカ!」

開けた海に面しているところから、海の竜が現れた。

その姿は大きく、上半身は筋肉質だった。

皮膚の色は青だ。

アンシャルとアオイはとっさに武器を出す。

「はーっはっはっはっはっは! どうだ! こいつは俺の命令に忠実だ! こいつならおまえたちをぶっ殺せるだろうさ! さあ、バルカ! こいつらを殺せ!」

アンニーバレが哄笑をする。

これこそがアンニーバレの自信のもとであった。

自分ではアンシャルにかなわないから、モンスターを使うというわけだ。

「アオイ、気をつけろ。こいつは強敵だ」

「わかっています、アンシャルさん」

バルカが大きな腕で薙ぎ払う。

二人はジャンプしてそれをタイミングよくかわす。

この程度の攻撃をかわせないほど二人はのろくない。

「そうだ! やっちまえ、バルカ!」

アンニーバレが絶叫を上げる。

今のアンニーバレにできることは応援くらいだ。

「フッ、ずいぶん、応援できると見えるな」

アンシャルが皮肉のユーモアを言った。

アンニーバレを揶揄していることは明らかだ。

「けっ! 強がりはバルカに勝ってから言え!」

バルカが再び攻撃にうつってくる。

今度は正面から太い腕でパンチを繰り出してきた。

こんな攻撃を直撃したら、一瞬で死ぬだろう。

アンシャルとアオイは散開した。

バルカは知能が無いようで、ボケっとしている。

その隙にアオイが斬りこんだ。

アオイの刀・霊刀・月華げっかがバルカの肌に弾かれる。

「くうっ!? なんて硬さですか!」

バルカは拳を振り上げて、そのままアオイに叩きつけた。

アオイはすみやかに後退する。

バルカの拳が地面に叩きつけられた。

地面は一メートルは深い穴が開いた。

すさまじいほどのバルカのバカ力である。

「これでもくらえ! 風切刃!」

アンシャルが風のカッターを放つ。

風のカッターは回転しつつ、バルカに当たる。

しかし、バルカの体が硬くて、風切刃ははじけ飛んだ。

「まったく効かなかった、か」

アンシャルは自分の技が効かなくても冷静だった。

アンシャルは指揮官も務めるため、冷静沈着だったのだ。

この技が効かないのなら、別の技を試せばいい。

「行きます!」

アオイは月光剣でバルカを斬った。

バルカの腕から血が流れた。

アオイの攻撃はバルカの体を傷つけたのだ。

だが、これほどの巨大生物だと、傷もたかが知れたものだった。

それだけではない。

バルカの傷は泡が現れて、それによってふさがっていった。

「再生したのか……」

「そんな……」

これで戦いはもっとシビアになった。

バルカを倒すには、ちまちまダメージを与えてはだめで、一撃必殺の技でケリをつけるしかない。

アンシャルは自分の技の中で、バルカを倒せそうなものを探す。

その時、バルカが口に水を集めた。

ウォーターブレスだ。

すさまじい水の圧力がアンシャルたちを襲う。

水は収束されたら、強烈な圧力を生む。

バルカは二人を巻き込むように薙ぎ払うようにはいてきた。

もっともそれは範囲を広くした分だけ、威力が低下したということでもある。

「きゃあああああああ!?」

「アオイ!」

アオイがウォーターブレスに巻き込まれた。

アンシャルがとっさに救い出さなかったら、やられていただろう。

「うう、すいません、アンシャルさん……」

「安心してくれ。私があいつを倒してみせる」

「はーっはっはっはっはっはっはっは! どうだ! これがバルカだ! こいつの前ではおまえたちなのゴミ同然! さっさとくたばっちまいな!」

アンニーバレが盛大な声を上げる。

アンニーバレはバルカが負けるとは思っていない。

そこに油断がある。

アンシャルはバルカが隙を作るように仕向けた。

再び、バルカの拳がアンシャルに落とされる。

ドカーンと轟音を上げて拳が落下した。

再び砂の上に小さなクレーターができる。

アンシャルはこの瞬間を待っていた。

バルカの攻撃は一つ一つが大仰強い。

つまり、攻撃を繰り出した後に、再度の攻撃に時間がかかるのだ。

それこそ、アンシャルの狙いだ。

アンシャルは白銀に輝く長剣を、バルカの額に突き刺した。

バルカは即死だった。

そのまま崩れ落ちるように倒れて、バルカは青い粒子と化して消えた。

「こんなものだな」

「バ、バカな…………」

アンニーバレからさっきまでの威勢は消えていた。

アンニーバレががくがくと震えて後ろに下がる。

「頼む! カネなら払う! ここは見逃してくれ! この通りだ!」

アンニーバレが気持ちいいくらいの土下座をする。

アンニーバレはアンシャルと取引をしようと持ち掛けているのだ。

当然、アンシャルはそんな事をするつもりはない。

その時、アンニーバレの後方から炎の球が発射された。

それはアンニーバレに命中し、彼を焼き殺した。

「ほーほほほ。役立たずには消えてもらいましょうか」

「グランシャイト、おまえか」

グランシャイトはどこ吹く風だ。

アンニーバレを殺したことをいささかも恥じている様子はない。

「もともとこの海賊団は使い捨てでしたからねえ。彼が死んでも問題はないのですよ。もっとも、見苦しい最期でしたが……」

「グランシャイト……このまま逃がすと思うなよ?」

「わかってますとも。ここで私たちの戦いを始めるとしましょうか」

グランシャイトは目を赤く光らせて、アンシャルを凝視していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ