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シキリア島

アンシャルとアオイはシキリア島に定期便で向かった。

海賊の親玉を捕えるためだ。

「シキリア島か……古代グラエキアの華と呼ばれたシュラクサイ……古代にはロマンが満ちているな」

アンシャルは船からシキリア島を見ていた。

その隣にはアオイがいた。

「アンシャルさんは古代が好きなんですか?」

「ああ、そうだ。私は古代の精神が好きだ。古代にはいろいろな国家があった。レームしかり、シュラクサイしかり、カルタージネしかり」

アンシャルは自らも古代を研究している。

特に古代グラエキアと、古代レームをもっぱら研究している。

シキリア島はグラエキア文化が花びらいた島だった。

古代レーム時代はグラエキア文化の出先機関のようなところだった。

シキリアは古代からいろんな勢力が闊歩したところだった。

ある時はカルタージネ、ある時はグラエキア、ある時はレーム、ある時はヒスパニア、ある時はゲルマニア……。

シキリアは王国だった時もある。

アンシャルはそのすべてを知っていた。

アオイはそんなアンシャルの一面を知れてうれしいようだ。

学者というものは案外子供っぽい。

アンシャルが語るシキリアの歴史はアオイの心を動かした。

シベリア人は歴史を重視する。

歴史を学ぶとはその中の人間性に惹かれるということだ。

どの国、地域の歴史を学んでもそれは変わらない。

歴史とは暗記科目ではない。

ヒューマンドラマなのだ。

それが悲劇か喜劇かは別として……。

アンシャルたちはシュラクサイに上陸した。

シュラクサイには半円劇場がある。

また、古代の神殿もあった。

アンシャルたちはこの町で情報収集することにした。

「なあ、アオイ……?」

「はい、アンシャルさん」

「わがままを言ってもいいか?」

「わがまま?」

「ああ、遺跡を見に行ってもいいだろうか?」

「遺跡、ですか?」

アオイが首をかしげる。

アオイにはアンシャルの真意が測りかねた。

「どうしても見に行きたいんだ。古代の研究者として、シュラクサイは劇場だ。これは私のわがままだ」

「ふふっ!」

「アオイ?」

「アンシャルさんも意外と子供っぽいところがあるんですね。いいですよ」

「よし!」

アンシャルはアオイに遺跡巡りの許可を求めたのだ。

シュラクサイは昔、グラエキアの大都市だった。

港を持ち、グラエキア文化が豊かに花びらいた。

レームの有力者たちはこのシュラクサイに子弟たちを送り込んで、グラエキア文化を学ばせた。

もちろん、公用語はグリーヒェン語である。

レーム人はバイリンガル民族だった。

アンシャルはぜひとも半円形劇場を見ておきたかったのだ。

アンシャルとアオイは劇場跡に訪れた。

そこには現代でも多くの人々がいた。

「人が多いな」

「それだけ、観光に来る人がいるということですね。アンシャルさんが来たがったのもわかるような気がします」

アオイはアンシャルに理解を示した。

「ここで写真を撮ってもいいか?」

「いいですよ。うふふ」

アンシャルはアオイといっしょにほかの人にカメラを手渡して写真を撮ってもらった。

もちろん、遺跡がバックにあるような構図で撮ってもらった。

「さて、本来の仕事にかかるとするか。アンニーバレ海賊団のアジトを探そう。アオイは観光案内所に向かってくれ。私は聞き込みをする」

「わかりました」

二人は二手に分かれて海賊団のアジトを探すため、情報収集を行うことにした。

アンシャルは人に話しかけて、海賊の噂を集めた。

そこで分かったことがある。

海賊団はパレルモス(Palermos)にアジトがあるらしい。

もちろん、あくまで噂だ。

パレルモスはシキリア島の北側真ん中の海沿いにある。

パレルモスはガラの悪い人が多いという特徴もあった。

シュラクサイからパレルモスへは民間の船で行くしかない。

アンシャルとアオイは合流すると、シキリアの地図を広げた。

そして集めた情報を総合する。

「やはり、パレルモスか……」

「観光案内所でも、海賊はパレルモスを根城にしているともっぱらの噂でした」

「ただの噂とは思えないな」

「どうします、アンシャルさん?」

「今のところ手がかりはそれだけだ。ほかに手がかりはないし、行くだけ行ってみよう」

「もし、違ったら?」

「その時は情報の収集をすればいいさ」

アンシャルとアオイは民間の漁船を使ってパレルモスに行くことにした。

ちょうど、漁師のおっちゃんがパレルモス近場に行くところだった。

「お兄さんたち、本気でパレルモスに行くつもりかい?」

「ああ、そうだ。それがどうかしたのか?」

「やめておいた方がいいぞ」

「どうしてですか?」

アオイが尋ねる。

「あそこは悪党のメッカだ。治安が悪くて有名だよ。ノヴァ―リアの政府だってへたに手が出せないんだ。悪いことは言わねえ。考え直したらどうだい?」

漁師は本当にこちらの身を案じているのだろう。

二人をいたわる気持ちは伝わった。

しかし、アンシャルは一度決断したことを変えるような男ではない。

そしてアオイもまたそんなアンシャルのことを理解していた。

「悪いが、私たちはパレルモスに行かねばならない。アンニーバレとの決着をつけるためにな」

「アンニーバレってあの海賊団の首領かい? 兄さんたちは海賊団ともめているのかい?」

「ああ、メッチーナでちょっと、な」

「やれやれ、連れて行ってもいいが、行きだけだ。帰りは向こうでどうにかしてくれ。それでいいなら連れてってやるよ」

「ありがとう、恩に着る」

「わかった。じゃあ、船の乗り込みな」

アンシャルとアオイは中型の漁船に乗り込んだ。

向かうはパレルモス。

アンシャルとアオイは海賊のアジトに船で向かった。

今度はこちらから攻めるつもりだった。

メッチーナでは防戦だった。

アンシャルは軍人でもある。

シベリウス教とは宗教と軍事が結合しているのである。

宗教軍という在り方は、シベリウス教の最大の特徴だった。

そしてシベリウス教において、光の原理と闇の原理は対立し、戦い合うという。

アンシャルはグランシャイトを放っておく気はなかった。

放っておけばまた、何か陰謀を企てるに違いない。

それを阻止するためにはこちらから出向き、倒す必要がある。

アンシャルの視線は遠くの海へと注がれた。

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