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アンニーバレ

ノヴァーリアの砂浜で、セリオンとエスカローネはバイクに乗っていた。

二人は休暇がもう終わるので、ツヴェーデンに帰るため、支度をしていたのだ。

「この海とももうお別れなのね」

エスカローネが寂しそうに言う。

「また来ればいいさ。この海はいつでも俺たちを受け入れてくれる。この緑海マーレ・ヴェルデはいつ見てもきれいだろうから」

セリオンはバイクのエンジンをふかす。

荷物は亜空間収納でしまってある。

後は生身の自分たちが帰ればいいだけだ。

エスカローネがセリオンの背中に腕を回す。

「……」

エスカローネは胸が大きい。

そのため、どうしてもこうすると胸が当たるのだ。

セリオンの背中でエスカローネの胸が形を変える。

セリオンはエスカローネのことが好きだ。

だから、意識してしまう。

この休暇ではエスカローネの魅力を余すことなく感じることができた。

セリオンはエスカローネの肉体も愛しているのだ。

「アンシャルさんもノヴァ―リアに来ているのね?」

「ああ、そうらしい。手紙で知らされた。まあ、アンシャルのことだから古代の遺跡でも見て回るんじゃないか?」

アンシャルは学識もある。

知的興味がある人なのだ。

当然、古代の知識は持っている。

かつて、南ノヴァ―リアはマグナ・グラエキア(Magna Graecia)と呼ばれていた。

古代では北部、中部よりも南部が繫栄していたのだ。

その時一陣の風が吹いた。

エスカローネの長いストレートの髪が風に乗って揺らめく。

「ふう……いい風」

同時にエスカローネの白いマントもなびく。

エスカローネはいつもの服に着替えていた。

青い軍服上衣、青いボックス型のミニスカート、青い二―ソックス、それに白いマント。

「よし、いい加減に出発しよう。じゃあ、走るぞ?」

「ええ、いいわよ」

セリオンはバイクのアクセルを入れた。

バイク『メルツェーデス』は緑の海から疾走していった。

セリオンとエスカローネは再び戦いに身を投じるために。



アンシャルを前にして、アンニーバレは剣を抜いた。

アンニーバレは邪魔だと思ったのか、マントも脱ぎ捨てる。

「アンシャル・シベルスク……おまえは絶対に許さねえ! この俺がじきじきに殺してやるぜ!」

「フッ、できるかな?」

「ほっほほほ。お久しぶりですね、アンシャル殿?」

アンニーバレの傍らから現れたのはグランシャイトだった。

アンシャルはグランシャイトとは一度しか、会っていなかったが、その名は覚えていた。

「おまえは……グランシャイトだったか? おまえが海賊の来襲にかかわっていたとはな」

グランシャイトが不敵に笑う。

「フフフフ……利害が一致しただけですよ。我々はあなたがたとは戦う宿命にあるのですから」

「闇の組織が考えそうなことだ。おまえもそこの男といっしょに戦うのか?」

「フフフフ、まさか。この私はこれでも平和主義者なのですよ? 私はここであなたがたの戦いを見物させてもらいましょう」

「先生よう、ここは俺に任せてもらうぜ? 部下たちの仇を取らなきゃならねえ!」

「ほっほほほ、わかっておりますとも、アンニーバレ殿」

グランシャイトは余裕を見せた。

それがアンシャルの気に障る。

「そういうことだ、アンシャル・シベルスク。この俺と勝負しろ!」

「いいだろう。相手をしてやる」

アンニーバレが突きの構えを取った。

アンニーバレが刺突を繰り出す。

アンシャルはそれを長剣で受け止める。

アンニーバレの攻撃は海賊の親玉にしては洗練しすぎていた。

アンシャルはアンニーバレが良い生まれだと気づいた。

なぜなら、アンニーバレの攻撃は平民のものではないからだ。

むしろ貴族的だった。

よくよくアンニーバレを観察すると、彼の服も貴族趣味だ。

アンニーバレの技術は貴族的教養のなせるものだった。

「くらいやがれ! 水泡突すいほうとつ!」

アンニーバレが水の突きを出した。

水をまとった突きは強烈な衝撃を伴った。

「うおっ!?」

アンシャルが後退させられた。

この男はだてではない。

アンシャルは水に対応するために風を長剣にまとわせた。

「ほう……風かい? おまえさんは風を使うようだな。だが、そんなつむじ風じゃ俺の攻撃をさばききれねえぜ? はいよ!」

アンニーバレが三点を狙った突きを繰り出す。

アンニーバレは突きをメインに使う剣術を修めているようだ。

アンニーバレの技『三点突さんてんづき』だ。

「くっ!?」

アンシャルはそれに対して長剣を合わせてやり過ごした。

アンシャルが反撃する。

アンシャルは風の剣でアンニーバレを打ちつける。

「ぬおっ!?」

アンニーバレが剣で受け止めるものの、アンシャルの方が押していた。

「て、てめえ! なめんじゃねえぞ!」

アンニーバレも水を剣にまとわせて、風の剣に反撃する。

アンシャルはいったん引き下がった。

アンシャルは長剣から風の刃を放った。

「風切刃!」

風のカッターが回転しながらアンニーバレに向かう。

アンニーバレは横によけて回避する。

アンニーバレはそのままアンシャルに接近し、華麗な連続突きを出す。

アンシャルはガードするしかない。

だが、ここまででアンニーバレの攻撃はアンシャルに通じていないのだ。

「風月斬!」

アンシャルが風の斬撃を横に放った。

「おっと!」

アンニーバレのは紙一重でよける。

「へっ、ここまで俺様と戦えたのはおまえさんが初めてだぜ。それに敬意を表して、この俺様の最強の技で殺してやるよ。はああああああ!!」

アンニーバレの剣から水が回転して昇った。

これこそアンニーバレの最強技。

「くらいな! 螺旋水蛇剣らせんすいじゃけん!」

回転する水は蛇のように形を取り、アンシャルめがけて突き進んでくる。

まともにくらったら致命傷だ。

アンシャルは風を集めた。

そしてその風を螺旋の水に叩きつける。

「は! 風王衝破ふうおうしょうは!」

風が水に叩きつけられる。

風は水を破って、破砕した。

「バ、バカな!? この俺の最強技だぞ!?」

アンニーバレは目の前で起こったできごとが信じられないようだ。

明らかに動揺している。

アンシャルは隙だらけのアンニーバレに風を打ち込む。

風王降臨ふうおうこうりん!」

風がアンニーバレの上から叩き落される。

アンニーバレはぼろくそにされていった。

「ぐあああああああああああ!?」

「とどめだ!」

アンシャルがアンニーバレに斬りかかると、バリアが現れた。

「何!?」

「ほっほほほ。アンニーバレ殿にはまだ死んでもらっては困るのですよ」

それはグランシャイトの術だった。

グランシャイトがアンニーバレを守ったのだ。

「邪魔はしないんじゃなかったのか?」

「ほっほほほ、助けはしないとは言っておりません」

「よく言う……」

このままでは言った、言わなかったの展開になりそうだ。

アンシャルは聡明だったので、この不毛なやり取りをするつもりはなかった。

「せ、先生……」

「ここは引かせてもらいますよ。それではアンシャル・シベルスク殿、ごきげんよう」

グランシャイトとアンニーバレの姿は消えた。

どこに去ったかは分からない。

「やれやれ、黒幕はグランシャイトだったか。それにしても海賊は迎撃できたか。それで満足するしかないな」

アンシャルは船から海を眺めて、逃げた二人がどこに行ったか考えていた。

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