海賊
海賊たちはすみやかにメッチーナ市内に入った。
メッチーナは海に面していて、その港に海賊が侵入してきたのだ。
海賊の略奪は時間との勝負である。
海賊は風のように襲ってきて、逃げる。
海賊の戦力では正規軍と戦うことはできない。
海賊は正規軍との戦いを避ける。
アンニーバレは船からメッチーナ市街を眺めていた。
グランシャイトがアンニーバレに近寄る。
「今回もいい収穫になりそうですな」
「当然だ。俺たちはプロの海賊だ。この程度は朝飯前だ」
メッチーナの町からは火が上がっていた。
誰かが、放火したのであろう。
実のところ、アンニーバレは今回の来襲で、事前に襲撃する場所を決めておいた。
つまり、事前に下準備をしておいたのである。
海賊は正規軍に太刀打ちできない。
そのため、可能な限り、無駄なことはしない必要があった。
グランシャイトは海賊たちの行動を満足げに眺めていた。
さて、アンシャル・シベルスクはどう出るか?
グランシャイトはそれが楽しみであった。
このメッチーナにアンシャル・シベルスクがいることは事前調査で分かっている。
そして、アンシャル・シベルスクのような人間が海賊を見過ごさないことも。
アンニーバレは計画通りに事が進んでいると思っているようだが、グランシャイトはアンシャル・シベルスクのことはアンニーバレにふせておいた。
グランシャイトの思惑ではこの二者が互いに殺し合ってくれればよいのである。
グランシャイトはひそかに内心でほくそ笑んでいた。
アンシャルとアオイは外に出た。
外では海賊たちが町を襲っていた。
海賊たちはカネの在りそうなところ……銀光を目指しているようだった。
「アオイ、海賊の狙いはおそらくメッチーナ銀行だ。奴らはカネのないところには決して向かわない。こちらから、先回りをしよう」
「はい!」
アンシャルの読み通り、海賊たちはメッチーナ銀行に現れた。
アンシャルたちはその前に立ちはだかる。
「これ以上は行かせない!」
アンシャルが銀の長剣を出す。
アオイも霊刀・月華を出す。
二人は押し寄せる海賊の波を迎撃していった。
海賊たちはおそらく事前に調査していたに違いない。
なぜなら、海賊たちの動きに無駄がないからだ。
だが、海賊たちの最大の誤算はアンシャルがいたことだった。
「くたばりさらせえ!」
海賊たちがアンシャルとアオイに襲いかかる。
「無駄だ!」
「させません!」
二人は美しい軌跡を描き、海賊たちを斬り捨てる。
「ぐはっ!?」
「がはっ!?」
「ぐうっ!?」
海賊たちは一瞬にして倒された。
海賊たちの山ができる。
アンシャルはアオイがいて心強さを感じた。
パートナーとして信頼できる強さだった。
「へっへっへ、ここまで腕が立つ相手は初めてだぜ」
「ヒュー、やるねえ」
「おまえたちは?」
そこに現れたのは、太っちょの海賊と、ひげの生えた海賊だった。
見るからに強そうだ。
おそらく、海賊たちの指揮官なのだろう。
「おまえさん方は何者だ?」
「私はアンシャル・シベルスク。テンペルの副長だ」
「私はカガミ・アオイです」
「俺様はマゴーネ、アンニーバレ海賊団の指揮官だ」
「俺はジスコーネ、同じくアンニーバレ海賊団の指揮官だ」
「おまえらのような奴らがいたのは計算外だが、ここで引くわけにもいかねえ。おまえらの命、ここでいただくぜ」
「はっはっは、覚悟しろ!」
「フン、覚悟するのはおまえたちの方だ。ここでケリをつけてやる。行くぞ、アオイ?」
「はい!」
アンシャルとマゴーネ、アオイとジスコーネが対面した。
アンシャルとマゴーネが向かい合う。
アンシャルはバスタードソードを構える。
「死にな!」
マゴーネはナイフを投げつけてきた。
マゴーネのナイフは風を斬り裂くかのよう。
アンシャルは長剣でそれをたやすく迎撃する。
「この程度では死ぬことは私にはできないな」
アンシャルが挑発する。
マゴーネはそれを真に受けた。
「この野郎!」
この程度の挑発に乗るとは相手の底が知れるというものだ。
アンシャルはそう思いつつも油断はしない。
戦いとは駆け引きでもある。
自分の手の内をさらすことは敗北につながりかねない。
「火炎投げ!」
マゴーネが炎を投擲してきた。
マゴーネは炎を扱えるらしい。
アンシャルは風の力を長剣にまとわせる。
風の剣でアンシャルはマゴーネの炎を斬り裂く。
「おおりゃああああああ!!」
マゴーネが接近してきた。
マゴーネは炎をまとった突きを繰り出す。
炎がアンシャルの顔を明るく照らす。
アンシャルは風の剣でマゴーネの突きを受け止めると、そのまま長剣でマゴーネを斬り捨てた。
「があああっ!?」
「私の勝ちだ」
「く、くそがっ……」
マゴーネは倒れた。
一方、アオイとジスコーネは……。
ジスコーネは槍をアオイに向けて突き出す。
アオイはそれを見切って、槍をやり過ごす。
一瞬の攻防。
「へえ、あんた女なのにやるじゃないか。俺の槍を受けられる女なんてな!」
ジスコーネは喜んでいるようだ。
どうやら彼は強い相手に燃える人物らしい。
ジスコーネが石づきで打ちつけてくる。
ジスコーネの攻撃は槍を細やかに扱う。
リーチを生かして一方的に攻める攻撃ではなかった。
アオイがジスコーネに斬りかかる。
ジスコーネはそれを受け止める。
一進一退の攻防があった。
アオイは攻めようとするが、攻めきれない。
それはジスコーネも同じだった。
実力は伯仲していた。
「こいつはどうだい? 地槍!」
ジスコーネが土属性の槍を出してくる。
アオイはとっさに月光剣を出した。
「くうっ!?」
アオイの顔が歪む。
「はっはっはっは! あんたやるな! だが、これまでだ!」
ジスコーネが力づくで押してくる。
その時、アオイが消えた。
「なっ!?」
ジスコーネが驚く。
アオイは一瞬にして間合いをつめて、斬撃をヒットさせた。
「月光閃!」
アオイの刀が月のごとき輝きでひらめき、舞う。
ジスコーネは斬り伏せられた。
「がっ!? ちく、しょう……」
ジスコーネは倒れた。
「アオイ、けがはないか?」
「はい、アンシャルさん。私は大丈夫です」
アンシャルはアオイが無事で安心した。
「海賊どもをこのままにしてはおけない。海賊船に乗り込むぞ?」
「はい!」
アンシャルとアオイは海賊船に乗り込みをかけることにした。




