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テンペル襲撃3

スルトは黒龍ドラゴニオンと対峙した。

ドラゴニオンは威厳のある龍だ。

黒い体はつやを放っている。

それはまるで王者のごとくであった。

「ククク……きさまがスルトか?」

「!? しゃべれるのか」

スルトは軽い驚きを見せた。

だが、スルトは冷静だ。

スルトは厳格で冷静で、威厳を持ち、権威がある人物だった。

聖堂騎士団の長は権威や敬意がなくては務まらない。

部下たちはスルトに進んで服従する気にさせるのだった。

そんなスルトの欠点は冷静すぎることだった。

スルトに愛がないわけではない。

セリオンは情熱的だが、スルトはどこか冷たすぎると思わせるところがあった。

まるで彫刻のような感じを抱かせるのだ。

それが恋愛でも影を落としていた。

もっとも、スルトは女性を求めたことなどないのであまり関係はなかったが、スルトはアンシャルと違ってもてたことはない。

「我が名はドラゴニオン。黒龍の王者なり。スルト総長よ、おまえは我が爪と牙でかみ切られるのだ」

「たかがトカゲがよく言う」

「クックック、挑発しても無駄だ。さあ、我が力の前に屈するがいい!」

ドラゴニオンが爪で薙ぎ払ってきた。

スルトは大きくジャンプして、後退する。

今度はスルトが攻撃する番だった。

スルトは大剣でドラゴニオンを突いた。

しかし、スルトの大剣はドラゴニオンの体で止まった。

受け止められたというより、攻撃が効かなかったのだ。

ドラゴニオンが口を開けて、かみついてくる。

スルトはすぐにその場から離れた。

ドラゴニオンの牙が閉ざされる。

「クックック、そんななまくらの攻撃など我が体には効かぬわ。燃え尽きるがいい!」

ドラゴニオンが口から炎の息をはいた。

すさまじい灼熱が辺りを焦がす。

スルトは炎に呑み込まれた。

ドラゴニオンは満足そうに眺める。

「ククククク……さすがのスルトもこれまでか」

「勝手に人を殺すな」

「!?」

スルトは炎が晴れると無傷で姿を現した。

甲冑が焦げ付いてもいない。

どのような方法でブレスを防いだのか?

「……なぜ生きている?」

「愚問だ。私がドラゴンのブレスなどで死ぬと思ったのか?」

「ならば今度は本気でやらせてもらうわ! 死ねい!」

ドラゴニオンが再び紅蓮の炎の息をはきつける。

ドラゴニオンは今度こそスルトは塵と化したと思った。

だが、スルトはブレスを防いでいた。

スルトの大剣には雷の気があった。

「なんだ、それは!?」

ドラゴニオンが瞠目する。

「フッ、これは雷気らいき。私の闘気だ」

スルトは雷の気をさらに出力を上げて繰り出した。

ドラゴニオンのブレスが押されていく。

「くっ、こしゃくな!」

ドラゴニオンは焦る。

ドラゴニオンから余裕が失われていく。

「フン!」

スルトは雷気でドラゴニオンのブレスを押し返した。

「グッ、こんなバカな!?」

「どうした? 自慢の炎は通じなかったと見える」

「なめるな!」

ドラゴニオンは強気をうしなっていた。 

ムキになってスルトにかみつく。

ドラゴニオンは翼にエネルギーを集中した。  

ドラゴニオンの黒い翼が輝く。

「これで消え去るがいい! 流星弾りゅうせいだん!」

ドラゴニオンから無数の流星の光線がスルトに対して叩きつけられる。

それはすさまじい攻撃の雨だった。

今度こそスルトはおしまいだとドラゴニオンは思った。

流星弾の衝撃から一人の影が飛び出てきた。

スルトだ。

スルトは攻撃と同時に雷をドラゴニオンに叩き落した。

雷降斬らいこうざん!」

「グオオオオオオオオオオオ!?」

ドラゴニオンが悲鳴を上げる。

それはスルトの攻撃が、雷がドラゴニオンに通じたという証。

スルトの雷はドラゴニオンの硬い体を貫通したのだ。

雷の前にはドラゴニオンの体も有効ということだ。

「こ、こしゃくな!」

「これで決めさせてもらおう! 雷霆龍牙斬らいていりゅうがざん!」

スルトは雷の斬撃でドラゴニオンを何度も斬りつけた。

それから、さらに大剣をドラゴニオンに突き刺し、跳びあがってドラゴニオンを両断した。

ドラゴニオンは絶叫を上げる間もなく死んだ。

「ローデと言ったか……どうやら私を殺すのは失敗だったようだな」

スルトは消えゆくドラゴニオンの体を眺めていた。




アンシャルとアオイは着々とキノコバナを倒していった。

このまま行けばテンペル内のキノコバナは全滅するだろう。

「アオイ、きつくはないか?」

「大丈夫です、アンシャルさん。私はこのくらいではへこたれませんよ」

アオイがほほえんだ。

アオイからは余裕が感じられた。

アンシャルはそんなパートナーを誇らしく思う。

「アンシャル・シベルスクとお見受けする」

「誰だ?」

アンシャルの前に白い衣の神官風の男が現れた。

その隣にはヤギの頭をした亜人がいた。

「あなたたちは何者です?」

アオイが問いかける。

「私はヒュオン、氷のヒュオンだ」

「我はグランシャイト」

「我々はザンツァ様の部下だ」

「ザンツァ? それは何者だ?」

アンシャルにはザンツァという名には心当たりがなかった。

「ザンツァ様は我らのあるじです。こんかいのテンペル襲撃もそのザンツァ様の意思なのです」

グランシャイトが説明する。

「それで、おまえがアンシャル・シベルスクか?」

「そうだ」

「それではおまえにも消えていただこう。召喚獣ゲニウス! アストリウス(Astrius)!」

ヒュオンの前に魔法陣が現れた。

回転する魔法陣からは大きな体の怪物が姿を現した。

「こいつはミノタウロスか。いや、通常の個体よりも強いな」

アンシャルがそう分析する。

「その通り。強化型ミノタウロスとでも言えようか。さて、アンシャル・シベルスクよ、こ奴の手にかかって死ぬがいい」

アストリウスは手に大きな両手斧を持っていた。

「グモオオオオオオオ!」

アストリウスが咆哮する。

「……アオイ……下がっていてくれ」

「アンシャルさん?」

「君では重い相手だ。ここは私が一人で戦う」

「……わかりました」

アオイは聡明だ。

アンシャルが言わんとしたことを理解した。

アオイでは勝てないと、アンシャルは判断したのだ。

「それでは、アンシャル・シベルスク、我らは去らせてもらう」

「失礼しますぞ」

そう言うと、ヒュオンとグランシャイトは消えた。

「やれやれ……こいつをこのまま放置してはおけないからな。ここは私が相手をするしかないか」

アンシャルが長剣を構える。

アストリウスは大きな斧で斬りつけてきた。

アンシャルは紙一重で回避する。

こんな斧の攻撃をまともに受けたら、一撃で即死だろう。

「グモ?」

「知性はないらしいな」

アンシャルが反撃する。

それをアストリウスは簡単に防いで見せた。

アンシャルは目を細める。

アストリウスが斧に魔力を集める。

それは土の属性だった。

「グモオオオン!」

アストリウスは斧から強烈なオーラを発した。

斧から土属性のオーラの刃が放たれる。

「風衝!」

アンシャルは風の衝撃波を繰り出して、それを迎撃する。

どちらかと言えば、中和に近い。

風と土は相反する属性だった。

アンシャルとアストリウスは、いわば風と土という反対の属性を操ることになる。

「ほう……土の属性を使うのか。ただのミノタウロスではないようだな」

「グンモオ!」

アストリウスが斧を上にかかげた。

アストリウスの斧に大きな石が形成された。

アストリウスの狙いは明確。

あの石でアンシャルを叩き潰すつもりだ。

「ンモオオオオオオオ!」

大きな石が撃ちだされた。

アンシャルを狙って石が進む。

アンシャルは風を長剣にまとわせた。

アンシャルはこの石を迎え撃つつもりだった。

「はっ! 風月斬!」

風の斬撃が大きな石を一刀両断にする。

「グモオオオオオオン!?」

「おまえは強いようだから、手加減はなしだ」

アンシャルは荒ぶる風を全周囲に集めた。

風が回転して、スピードを増していく。

これは恐ろしい暴風だった。

アオイから見てもこの風はアンシャルのものとは思えなかった。

アンシャルの風は穏やかだ。

普段はそうだ。

この暴風は圧倒的脅威だった。

アストリウスはこの風を見て、本能的に恐怖を感じたのだろう。

後ずさっていた。

「行くぞ? 風王烈衝破ふうおうれっしょうは!」

アンシャルからすさまじい風の衝撃と刃が放たれた。

それはまるで地面を更地にするかのようなすさまじい風だった。

アストリウスの体が斬り刻まれる。

この技はアンシャルの最強技だった。

「グウウウモオオオオオオオオオオオオオオ!?」

アストリウスの絶叫は吹き荒ぶる風の前に消えた。

この技が放たれたが最後、その対象は消え失せる。

アストリウスの体は完全に消滅していた。

「まあ、こんな所か」

アンシャルが不敵な笑みを浮かべた。

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