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ホンジョウ・ミカド

アンシャルとアオイは城の頂に来た。

そこには壮年の男が椅子に座っていた。

その態度は傲然としていて、自らを『王』として主張していた。

「フン、よく来たな、テンペルの者どもよ」

「おまえが、ホンジョウ・ミカドか?」

「『様』をつけろ。きさまごときがこの私を呼び捨てにしていいいわれはない」

ミカドが目を細める。

全身から不快と伝えてきた。

「断る。私はおまえの家来ではない」

アンシャルには『様』などつけてミカドを呼ぶ気はない。

「傲慢もここまでくると救いがたいな」

ミカドは憐れむように言う。

今度はアンシャルが不快に思った。

この男とはどこまでいっても不快感がついて回るのだろう。

「どうして、こんなことをした?」

「はっはっは、これは片腹痛い。すべては我らヤパーナーがツヴェーデンを支配するため」

「そんなことができると思っているのか?」

「できる! この白虎城さえあれば!」

「この城に何ができる?」

「ふはははははは! この白虎城には精神を支配する力があるのだ! この力さえあれば、いずれ、ツヴェーデン全土は私の傀儡になるのだ!」

「……本気か?」

「本気だとも」

アンシャルは風王剣イクティオンを向けた。

「はっはっは! 力で来るかね? 言っておくが私は強いぞ?」

「おまえが強くとも関係ない。おまえをここで倒す。それだけだ」

「フン、テンペルとは合わぬとみられるな。君もそうかね? ヤパーナーの女性よ?」

「私はアンシャルさんを信じます! そして同じ道を歩みます!」

「そうかね。我ら同胞より、異教徒に追従するというのかね? ならば君もここで倒れるがいい」

ミカドは立ち上がった。

赤気せっきの、鬼術の真髄を見せてやろう」

ミカドからだから禍々しい赤い気が放たれる。

これは……。

「この気……まさか、おまえも?」

「フッ、その通り。我も鬼人よ」

「鬼と融合して新しい力を手に入れたか。どこまでも闇に堕ちたと見える」

「はっはっは! 闇こそ真の力よ! それが分からぬとは哀れよのう」

「闇の力は堕落だ。その迷信を私たちが打ち砕いて見せよう。行くぞ、アオイ?」

「はい、アンシャルさん!」

アオイもミカドに立ち向かう気のようだ。

迷いはない。

「フン、言葉ではなく、力で語れ! 闇刃あんじん!」

ミカドが闇の刃を発生させた。

闇の刃は二人に向かって飛んでくる。

「光明剣!」

「月光剣!」

二人とも光の刃を展開して、闇の刃を斬り裂く。

ミカドは物量で攻めてくるようだ。

さらに多くの闇の刃を発生させる。

アンシャルはともかく、アオイはまずい。

このままではアオイがやられるだろう。

そう判断したアンシャルはミカドの攻撃を自分に引き受けることにした。

アンシャルは前に出る。

「きえええええええ!」

ミカドが攻撃のパターンを変えた。

闇の刃がブーメランのように襲いかかってくる。

しかし、それによって隙ができた。

アンシャルはミカドに斬りかかる。

光の刃と闇の刃が交差した。

「無駄だ! 闇の前には光の力など無力!」

アンシャルは光の剣でミカドを斬りつけるものの、ミカドは闇の刃を発生させて、それを防ぐ。

ミカドの上に鬼の姿が現れた。

鬼が拳をアンシャルに振り下ろす。

アンシャルはすみやかに後退する。

鬼の拳が宙を打った。

ミカドが闇の力を球体に集める。

闇の球体は渦巻き、闇の力を収束させる。

「ダークフォース!」

闇が収束されて、アンシャルたちに襲いかかる。

闇は広範囲に爆発して、アンシャルたちを包み込んだ。

終わった、ミカドはそう思ったのだろう。

「フン、闇の力こそ真理なのだ。その前には光の力など無力よ」

「そうかな?」

「何!?」

闇の爆発の中から、光の力を収束した二人が現れた。

二人とも傷を負ってはいない。

闇の力は強大だ。

その力は恐ろしいほど強い。

だが、対抗策がないわけでもない。

それは光。

光は闇を中和できる。

闇の爆発は二人の光によって中和された。

「バカな! 闇の力だぞ!? その力の前に屈するのが理! 光が闇に勝てるわけがない!」

「腑抜けだな。光は闇の力を打ち破れるんだ。おまえがどんなに闇の力を強めようとも、光は必ずおまえの闇を打ち砕く!」

「ふぬうううう! こんな! こんなはずはない! 妖鬼マガダよ! 我と! 我と一つに! ぐうううううううううううううおおおおおおおおおお!!」

「!? 鬼と完全に一体化する気か!?」

鬼人法は鬼と『一時的に』一体化する術である。

ミカドは一時的な一体化ではなく、完全な一体化をもくろんだ。

だが、これは人間であることをやめることを意味する。

ミカドはこの心に闇を宿している。

心の闇は闇の力の源となる。

それは憎しみ……。

ミカドはツヴェーデンを憎んでいる。

それは闇の力を増幅させる。

ミカドの姿は一個の鬼へと姿を変えた。

その体はどす黒かった。

「がーはははははははは! どうだ! 闇鬼だ! 力が体全体を駆け巡る! まるではちきれそうだ! くくく! この力の前に光などカスにすぎぬわ!」

ミカドはアンシャルが気づいた時には、アンシャルの前にいた。

鋭い爪でミカドは切りつけてくる。

「くっ!?」

アンシャルは光明剣で受け止めたものの、その力によって吹き飛ばされた。

「アンシャルさん!」

「おまえもだ!」

ミカドは一瞬にしてアオイの前に移動した。

アオイは月光剣でミカドの爪を防ごうとする。

「ああっ!?」

しかし、ミカドの膂力はすさまじく、アオイはあっさりと吹き飛ばされる。

「かーっはっはっはっはっは! どうだ! 見たか! これが闇だ!」

「フン……そんなにツヴェーデンが憎いのか?」

「……なんだと?」

「おまえの原動力……それはツヴェーデンへの憎しみだろう?」

「当然だ! 我らヤパーナーは、ヤポニ人は第一級の民! それが二級市民として遇されるなどあってはならない!」

「よく言う……おまえたちが二級市民なのは国防にタッチしないからだ。おまえたちはツヴェーデンに守られてありながら、ツヴェーデンを憎んだ」

アンシャルがミカドを弾劾する。

それは生き方への批判だった。

「なぜ我らが国防になど関与しなければならんのだ? ふざけるな!」

「違うな」

「何?」

「血を流さずに何を言う」

「血だと?」

ミカドにはカネを払えば国防に関与したと思っている。

それが筋違いだと気づかずに。

「だから、おまえたちは二級市民なんだ」

「カネなら出した! それで不服なのか!?」

「そうさ。古代でヤポニ人の帝国が滅んだのは、おまえたちは国防を傭兵にゆだねたからだ。カネで兵士は雇えると考えたからだ。そういう生き方をしたからだ。世界的にはカネを払うなどという国防の在り方は軽蔑される」

「なぜ、ヤポニ人の血を流さねばならんのだ!」

「それがわからなかったから、おまえはツヴェーデンを憎むしかなかった」

ここまで説明してもわからないなら、ミカドに何を言っても無駄であろう。

ミカドにはカネを払うことは立派な貢献だと思っている。

だが、世界的には同盟国として戦場に参加するという在り方こそが、称賛される。

軍事資金を提供するという在り方は、『血を』流さないとしてレーム時代から否定的に見られていた。

アンシャルは立ち上がる。

アンシャルの剣からは銀色の光があふれていた。

それを見て、ミカドが恐れをなす。

「な、なんだ、それは!?」

アンシャルがミカドに近づく。

「く、来るな!?」

ミカドが怖気づく。

アンシャルはミカドに一気に接近すると、銀色の光でミカドを貫いた。

「ぐぎゃあああああああああああああああああ!?」

アンシャルの技『銀光剣ぎんこうけん』である。

「バカな! こんな! こんなことが!」

「終わりだ!」

ミカドの姿は風船が破裂するかのように膨張し、砕けた。

「やったか……」

「アンシャルさん!」

「アオイ……君は大丈夫か?」

「はい。私より、アンシャルさんは?」

「なんとか、大丈夫だ」

その時、ゴゴゴと白虎城が振動した。

「まずい! この城が崩壊する! アオイ、急いで逃げるぞ!」

「はい!」

二人はすみやかに城の中を駆けだした。



雨が降っていた。

その中でミカドはじりじりと動いていた。

ミカドは鬼と同化していたため、死をまぬがれた。

今のミカドは人の姿に戻っていた。

空は暗かった。

「おのれ……よくもやってくれたな……許さん……許さんぞ……!」

ミカドはアンシャルへの憎悪を心に抱いた。

この高貴なる我をよくもこんな無様な姿にしてくれたな!

許さん! 絶対に許さんぞ!

空で雷が鳴った。

ミカドは黒い何かに突き当たった。

「む? おお! 闇の王フューラー殿! 我に今一度力を……!」

フューラーは大剣を出すと、それでミカドを貫いた。

「ぐはっ!? な、なにをする!?」

「フハハハハハ。少しは楽しめた。おまえは余興にすぎん。さあ、ここで死ぬがいい」

「な、き、きさま……!?」

「あとは使徒ザンツァがやるであろう。おまえはここで眠るがよい」

「そ、そんな……」

ミカドは息絶えた。

ミカドの目は絶望を示していた。

「フフフフフ、フハハハハ! セリオン・シベルスクよ、帰ってくるのを楽しみに待っているぞ! ファーッハッハッハッハッハッハッハ!」

フューラーの哄笑が大空に響き渡った。



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