鬼人
アンシャルとアオイは白虎城に侵入した。
白虎城は静けさに満ちていた。
「おかしいな」
「アンシャルさん?」
「誰もいないとはどういうことだ?」
そう、白虎城には誰もいなかった。
城は階段を通じて上へと通じている。
アンシャルたちは走って上の階へと急ぐ。
だが、この城からは禍々しいオーラが湧き出ていた。
何もないはずがない。
ゆえに、一層この静けさが不気味であった。
「どこかで何かが仕掛けてくるかもしれない。気をつけよう」
「はい」
「フン、そこまでだ」
「ここは通さないよ」
「おまえたちは……」
そこに現れたのはシンゴとルリカであった。
ケガは魔法で治したのだろうか?
長い廊下で二人はたたずんでいた。
「懲りないな。また倒されたいのか?」
アンシャルが剣を向ける。
「フン、それはどうかな? 我らは新しい力を手に入れた! この力があればおまえたちなど一ひねりだ」
「それはどういいうことですか?」
「こういうことさ!」
二人が赤い気を収束した。
赤い気は二人を包み込み、その姿を膨張させていく。
「くっ、これは……!?」
二人の上に鬼の姿が現れる。
鬼の上半身が形成されていた。
「フハハハハハハ! これは鬼人法! 鬼と一体化する秘術だ! さあ、アンシャル・シベルスク! 今度こそおまえを殺してやるぞ!」
「アオイお嬢様、今度は負けないよ!」
アンシャル対シンゴ、アオイ対ルリカ二人の戦いが始まるとしていた。
シンゴが間合いをつめる。
シンゴが鬼の手でアンシャルを叩き潰そうとする。
アンシャルはバックステップで後退した。
アンシャルの手前が吹き飛ばされる。
木々がはじけ飛んでいた。
こんな攻撃をくらったらひとたまりもない。
「風切刃!」
アンシャルは風のカッターを撃ちだした。
風のカッターは回転しつつ、シンゴに迫る。
「はっ! 赤気拳!」
シンゴが拳から赤い気を放った。
アンシャルの風切刃はシンゴの赤い気によって破られた。
アンシャルは赤い気を身をひねってかわす。
「フン! どうだ! この攻撃は!」
シンゴは拳からいくつもの赤い気を出してきた。
今度は数で攻めてくる気だ。
アンシャルは風のバリアを張ってそれを防ぐ。
しかし、バリアにはまるで弾丸のように繰り出される拳によって亀裂を入れられていく。
このままでは破られるのも時間の問題だろう。
「うおおおおおおお! 赤気波!」
シンゴが赤い気を波状にして放出してきた。
地を走る波がアンシャルを襲う。
アンシャルは赤い波を引き付けて迎え撃つ。
アンシャルの剣に風が収束される。
「風月斬!」
風の斬撃は弧を描き赤い波を打ち払った。
「フン、さすがはアンシャル・シベルスクか。だが、お遊びはここまでだ。これで決めさせてもらう! 赤気解放!」
シンゴの全身から強力な赤い波動が放出される。
シンゴは本気を出す気だ。
アンシャルはシンゴから強大なプレッシャーを受けた。
シンゴが前面に巨大な球を形成する。
赤い球はまるで燃え盛る太陽だ。
「クハハハハハハハ! これはいかにアンシャル・シベルスクといえども防げまい! これで最期だ! 逝ねい! 赤気陽(せっきよう!)」
シンゴが灼熱した太陽を撃った。
アンシャルに回避はできない。
アンシャルはこの攻撃を受ける以外にない。
アンシャルは防げるか?
アンシャルは長剣に風をまとわせた。
アンシャルの長剣が風で振動する。
アンシャルは灼熱した太陽に、長剣を振り下ろす。
赤い太陽は一刀のもとに分割された。
割れた太陽は爆発する。
アンシャルの技『風振剣』である。
「なっ!? バカな!?」
シンゴが驚愕する。
アンシャルは得意げな顔だ。
これはシンゴの奥の手だったのだろう。
奥の手を防がれた以上、シンゴにこれ以上の攻撃はない。
「くらえ! 風王衝破!」
アンシャルはシンゴに接近し、風の衝撃を叩きつける。
「ぐっはああああああああ!?」
シンゴは吹き飛ばされ、床を何度もバウンドした。
アンシャルは今回もシンゴを殺さないように手加減していた。
手ごわかった。
鬼人法……恐ろしい秘術だ。
さすがにシンゴを殺すことはなかったが、これ以上強かったら手加減はできなかっただろう。
向かい側ではアオイとルリカが死闘を演じていた。
ルリカは手から電撃を出した。
電撃がルリカから放たれる。
アオイは霊刀・月華でそれをしのぐ。
今回のルリカは前回よりも、それを上回るプレシャーをかけてきた。
「ほらほら、どこを見ているのさ!」
ルリカは電撃を執拗に、繰り出してくる。
アオイは月光を剣に収束してそれを防いでいた。
アオイには反撃のチャンスがなかった。
ルリカは遠距離攻撃に徹しているからだ。
今回のルリカは接近戦はしてこないらしい。
そう思っていたため、アオイは反応が遅れた。
ルリカが接近してきたのだ。
ルリカは鬼の手でアオイを薙ぎ払ってきた。
アオイは後方に全力で跳びのいた。
アオイが着地して、態勢を整える。
アオイの上の服に亀裂があった。
幸いなことに、出血はしていない。
「くらいな!」
ルリカは上から電撃を落としてきた。
アオイはこれに巻き込まれた……そうルリカは確信した。
「ははは、なんだい。こんな簡単にやられるとはね。あたしがパワーアップしすぎたかな?」
ルリカが勝利の笑みを浮かべる。
だが、それはまだ早かった。
爆風の中からアオイが飛び出てきて、ルリカに斬りつける。
「なっ!?」
ルリカはプロだ。
不意を突かれても、反応は間に合った。
ルリカは後退して、アオイの斬撃から逃れた。
アオイはルリカの攻撃をくらったように見せかけて、反撃の機会をうかがっていたのだ。
「外しましたか……さすがにできますね、ルリカさん……」
「なめんじゃないよ! はっ! 赤気刀!」
ルリカがアオイに近接攻撃を仕掛けてくる。
ルリカは赤い気の刀でアオイに斬りつける。
アオイはそれを刀で防ぐ。
ルリカは跳びあがって、赤い気をまとった蹴りを繰り出した。
アオイは『月光剣』でガードするものの、弾き飛ばされる。
アオイのブーツが引きずられた。
「はっ、はっ、はっ……」
ルリカから余裕が失われていく。
「くう……まさか、ここまでやるとはね……だけどこれまでだよ! ここでケリをつける! はあっ! 電光!」
ルリカの鬼の手に強力な電光がつどう。
ルリカは電光をビームとして発射した。
アオイがとっさに後ろに下がる。
ビームは床を貫通した。
すさまじい威力だ。
「くっ……なんて威力……」
「あっはっはっは! さあ、終わりだよ!」
ルリカが再び電撃を出した。
アオイは跳んでいた。
アオイは落下のままに刀を鬼につき当てる。
「ぎやあああああああああ!?」
アオイはさらにジャンプして回転すると、月光斬をルリカに叩き込んだ。
確かな手ごたえとともに感触があった。
「そ、そんな……」
ルリカはがくりと倒れると、そのまま意識を失った。
戦いはアオイの勝利で終わった。




