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白虎城

アンシャルとアオイは出立の準備を整えた。

二人は武器を持ち、武装してヤパーナー自治区に行くつもりだった。

おそらくヤパーナーの側も戦いの準備を整えているだろう。

現地では戦いになる。

アオイは袴を着ていた。

アオイもヤパーナーと戦うつもりだ。

アオイの心はアンシャルと共に在った。

「アオイ……準備はいいか?」

「はい、いつでも」

アンシャルはアオイの気持ちをおもんぱかる。

アンシャルにはアオイが同胞であるヤパーナーに武器を向けられるのか、不安があった。

アオイはそんなアンシャルの考えを読み取ったかのように答える。

「アンシャルさん、安心してください。私は同胞に剣を向ける覚悟はできています。私はアンシャルさんと共に生きたいです。ですから、私のことは信じてください」

「アオイ……私は君を信じている。私と共にヤパーナーと戦ってくれるかい?」

「はい」

アオイの目は本気だった。

アオイは本心から同胞と戦うつもりなのだ。

「この戦いが終わったら、私はシベリア人になってもいいです。せめてこの戦いが終わるまでは……アンシャルさん、私をシベリア人にしてくれますか?」

「ああ、もちろんだ。アオイ、君に言わねばならないことがある」

「はい」

アンシャルは覚悟を決めた。

アンシャルは自分の想いを自覚している。

それを口に出すだけだ。

答えはわからない。

アオイはどう思うかはアオイの自由だ。

だから、アンシャルにも不安がある。

だが、この戦いの前に言っておきたかった。

「アオイ……私は君が好きだ。愛している」

「アンシャルさん……」

この言葉はアンシャルから言うつもりだった。

「アオイにはこの戦いが終わった後も私といっしょにいてほしい。君には私の伴侶になってほしいんだ」

それは嘘偽らざる言葉。

アオイはどう答えるだろうか?

「はい、私もアンシャルさんを愛してます。私はアンシャルさんとずっといっしょにいたいです。私をアンシャルさんの伴侶にしてください」

「アオイ……うれしいよ」

アンシャルはアオイの唇に口づけした。

短い、唇が触れるだけのキスだった。

気持ちの問題は片付いた。

後は二人でヤパーナー自治区に向かうだけだ。

「よし、行こう」

「はい、どこまでも」

その時、アンシャルのもとに使いがやって来た。

「アンシャル副長! 大変です! 至急外に出てください!」

「何だ? どうした?」

アンシャルとアオイは宿舎の外に出た。

「あれは……!?」

アンシャルは目を見張った。

ヤパーナー自治区があった場所に大きな和風の城が出現していた。

その大きさはシュヴェリーンの建物の中でも群を抜いていた。

シュヴェリーンは建物の高さに制限を設けている。

ヤパーナーの城はそれを越えていた。

ヤパーナーの側がツヴェーデン征服を意図していることは明らかだった。

ヤパーナーはもはや取り返しがつかないところまで行きついてしまったと言える。

「アオイ、あれが何だかわかるか?」

「いえ、私にもわかりません」

「ホンジョウ・ミカドの示威行為か」

ミカドという人物はよほど権力を誇示したがるものらしい。

ここに来いというわけか。

ただ、アンシャルはまず、シゲミツと接触するつもりだった。

これがヤパーナー全体の意思ではないのはシンゴとルリカの行動から明らかだ。

一部のヤパーナーの暴走を止めるために、二人はヤパーナー自治区へと向かった。



アンシャルとアオイは自治区の門のところまでやって来た。

門には誰もいなかった。

まるで入りたいのならいつでも入ってこいと言わんばかりである。

「不気味だな」

「アンシャルさん……おじい様は無事でしょうか?」

「わからない。シゲミツ殿がこの反乱に加わっていなければいいのだが……」

二人は政庁に行った。

政庁には誰もいなかった。

前回会談で訪れた場所に二人は来た。

そこにはシゲミツが倒れていた。

「シゲミツ殿!」

「おじい様!」

「うう……」

アンシャルはシゲミツを見た。

シゲミツは腹から血を出して倒れていた。

一目でわかった。

致命傷だ。

「アンシャル殿……アオイ……」

「誰にやられた?」

「ううう……ホンジョウ・ミカドに……」

「奴か……」

シゲミツの意識は今にもこと切れそうだった。

アオイが必死にシゲミツを介抱する。

「おじい様! 死んでは嫌です!」

「アオイ……最期に見れてよかった。幸せになってくれ……ぐふっ……」

「いやー! おじい様!」

アオイはシゲミツに呼びかけるが、シゲミツはもう何もしゃべらない。

シゲミツは冷たくなっていく。

「おじい、様……」

「アオイ……行こう。ミカドのところに。すべての決着をつけるんだ」

アンシャルがアオイを止める。

アンシャルはシゲミツの目を閉じてあげた。

「アンシャルさん……どうして私たちヤパーナーがこうして血を流さなければならないのでしょうか?」

「すべてはホンジョウ・ミカドの陰謀だ。奴を私たちは止めねばならない。そのためには白虎城に行かなくては。つらいだろうが、シゲミツ殿はここに置いていくしかない。少なくとも、シゲミツ殿は陰謀に加担していなかった。むしろ加わるように強制されたのかもしれないな。だから、従わなかったために、殺された」

「そう、ですね……おじいさまの死は無駄にしません。こんなことをしたミカドは許せません! 天はすべてを見ています。ミカドの罪は天が許しません!」

「ああ、そうだな。あの城でミカドが待ち構えている」

二人はミカドへの闘志を抱いて、白虎城に向かった。

白い城が、天を目指して高く昇っていた。


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