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英雄叙事詩 Das Heldenlied  作者: 野原 ヒロユキ
~Himmel und Erde~
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ヘルクリウスとクヴァグスト

ゴーレム=トーデス・マシーネの動力部は腹部にある。

アンシャルはそれを突き止めた。

そしてすぐにスルトにこの情報を伝えて、オペレーターによって全軍に共有させた。

「戦士の皆さん! ゴーレムの動力炉は腹部にあります! そこがゴーレムの弱点です! そこを狙って攻撃してください!」

シエルの声がスピーカーから響いた。

「シエルの奴……なんだかんだ言って板についているな」

アリオンはゴーレムの腹を刀で貫いた。

ゴーレムはその瞬間動きを止めた。

動力炉を破壊され、機能を停止したのだ。

「へえ……さすがアンシャル副長だ。これならほかのみんなも倒せるな」

アリオンは猛烈な勢いでゴーレムを倒していった。

アリオンは15歳だったが、その戦闘力は聖堂騎士に匹敵する。

「行くぜ! 紅蓮剣!」

アリオンが紅蓮の剣でゴーレムを両断する。

アリオンの使える属性は炎だ。

炎を宿せば、アリオンの刀は切断力を跳ね上げる。

アンシャルは聖堂の前にいた。

聖堂の地下室には避難している人もいる。

ゴーレムはどうやら人しか狙わないらしい。

テンペルの施設に攻撃を受けた、という報告は今のところ上がっていない。

「多連・光明槍こうめいそう!」

アンシャルが光の魔法でゴーレムの動力炉を貫通する。

十体はいたゴーレムが次々と爆発していった。

「弱点さえわかれば、倒すことなど造作もない」

アンシャルが不敵な笑みを浮かべる。

アンシャルは普段は理知的だが、戦いを好む武人としての顔もあった。

アンシャルに向かってレーザーが照射される。

アンシャルは長剣でレーザーを反射させ、ゴーレムの腹部に当てた。

とたんにゴーレムが炎上する。

「たわいもない……しかし……」

アンシャルの懸念は別にあった。

ゴーレムそのものはたやすく撃破できるようになった。

それはいい傾向だ。

だが、空中から降りてくるゴーレムは減ることがない。

ゴーレムは倒しても倒しても次から次へとやってくる。

これは戦士たちを精神的にも肉体的にも疲弊させる。

疲労は確実に溜まる。

すべてはアルテミドラを倒しに行ったセリオンに託された。

「セリオン……」

その時だった。

アンシャルの上空からレーザーが複数発射された。

「何者!?」

アンシャルはそれをよけた。

アンシャルは上を見た。

そこには六本の腕を伸ばして、レーザーガンを撃ったゴーレムがいた。

カブトムシが直立したような赤いスマートなフォルムのゴーレムだ。

「よくぞかわした! 我が名はヘルクリウス(Herculius)! トーデス・マシーネの指揮官機なり!」

「トーデス・マシーネ……それがあのゴーレムの名か」

ヘルクリウスは地上に着地した。

「アンシャル・シベルスクとお見受けする! いざ尋常に勝負せよ!」

「いいだろう。同じようなゴーレムが相手なら、おまえにも動力炉があるな?」

アンシャルとヘルクリウスが向かい合う。

アンシャルのその顔は普段からは想像もできない、戦士の顔だった。



一方、サラゴンは。

サラゴンたち聖堂騎士は食堂を中心にして展開していた。

この地下にシェルターがある。

食堂の機能は平時と同じく動いていた。

さきほどまでサラゴンたちはゴーレム相手に苦戦していた。

ゴーレムはレーザーガンによって遠くから攻撃してくるし、頭を斬られても動きを止めないからだ。

アンシャルがゴーレムの弱点を見つけるまでは。

ゴーレムの弱点が発見されると、戦況は一気に変わった。

それまで押されていたテンペルの騎士たちが押し始めたのだ。

サラゴンもそれを感じ取っていた。

ゴーレムは次々と撃破されつつある。

このまま行けば勝てる! 

そう思った時だった。

サラゴンの横から何かが突撃してきた。

『それ』は騎士たちを何人か吹き飛ばした。

「むっ!?」

サラゴンが青い塊に注意を払う。

青い塊はサラゴンの前で変形し、人型をしたクワガタのような姿になった。

「何者だ!」

「きさまは黒豹くろひょうサラゴンだな?」

「そうだ。おまえは何だ?」

「私はクヴァグスト(Quagust)! トーデス・マシーネの指揮官機なり! この私と勝負せよ!」

「おまえたち、下がってろ」

「し、しかし……」

「これは命令だ」

「は……」

サラゴンは部下を下がらせた。

このような敵とは一人で戦った方が損害が少ない。

吹き飛ばされた騎士たちは地面でうごめいている。

その在り方から骨が折れているのだろう。

彼らはもはや戦闘には参加できない。

つまり戦力にはなりえないということだ。

まとまって戦ってもいたずらに被害を大きくするだけだ。

こうしてサラゴンとクヴァグストが向かい合った。



アンシャルとヘルクリウスが激突する。

ヘルクリウスは一本の腕からレーザーソードを使ってアンシャルに斬りつけた。

アンシャルはそれをガードする。

ヘルクリウスは反対の腕でレーザーソードを出して攻撃してくる。

アンシャルの長剣にそれが当たる。

「くっ!?」

アンシャルに圧力をヘルクリウスはかける。

「フハハハハハハ! このまま押しつぶしてくれる!」

ヘルクリウスがさらにパワーを増した。

アンシャルを押しつぶす気だ。

だが、そうはならなかった。

アンシャルは光を長剣から放出する。

光明剣こうめいけん!」

「何!?」

アンシャルは光の剣を出して、ヘルクリウスに対抗する。

光がアンシャルの長剣からあふれ出た。

ヘルクリウスの残りの腕が伸びて、レーザーガンを発射する。

アンシャルは後退すると、そのままレーザーをはじいた。

「くらえい!」

ヘルクリウスの腹部からビーム砲が現れた。

おそらく動力炉直結なのだろう。

太いビームがアンシャルに迫る。

アンシャルはビームを光の剣で弾いてそらした。

「風切刃!」

アンシャルが二発の風のカッターをヘルクリウスの腕の付け根に向けて放つ。

それはヘルクリウスの両腕を見事に切断した。

「なんだと!?」

「もうやめておくか?」

アンシャルは余裕の笑みだ。

ヘルクリウスはそれで気を悪くしたらしい。

「ふざけるな! まだ終わらん!」

ヘルクリウスの腹部に再びエネルギーが集まる。

そして拡散ビームが出された。

アンシャルはむしろ突き破った。

アンシャルは長剣に風をまとわせると、強烈な衝撃をヘルクリウスの腹部に叩きつけた。

風王衝破ふうおうしょうは!」

アンシャルの風がヘルクリウスの腹部に穴を開けた。

ヘルクリウスもほかのゴーレムと同様に、腹部に動力炉を持っているとアンシャルは考えたのだ。

「む、無念……」

そしてその推測は正しかった。

アンシャルの読み通り、ヘルクリウスの動力炉は破壊された。

ヘルクリウスは機能停止し、そのまま崩れ落ちた。



クヴァグストは一気にサラゴンに接近してくる。

その頭のクワガタでサラゴンを挟むつもりだ。

しかし、サラゴンもバカではない。

サラゴンは執拗なクヴァグストの挟み込みをしなやかにかわす。

「ガハハハハハハハハ! どうした? かわすだけで精いっぱいか!」

「ちいっ!」

サラゴンは悔しかったが、実際その通りなので認めるしかない。

サラゴンは隙をついて、クヴァグストを攻撃してみたが、クヴァグストの強度は硬く、まったく斬れなかった。

ザコのゴーレムとは段違いの硬さだ。

クヴァグストの装甲を破らない限り、サラゴンは勝てない。

「ガーッハッハッハッハッハ! 無駄だ! おまえのなまくらではこの私のボディーを傷つけることなどできぬわ!」

「フッ」

「? 何がおかしい?」

サラゴンは不意に笑った。

このタイミングで笑うとはどういうことか。

サラゴンにはまだ見せていない手があった。

サラゴンも聖堂騎士である。

「いや、私も聖堂騎士なのだよ」

「? それがどうした?」

サラゴンは会心の笑みを浮かべた。

「私も闘気を使えるのだよ!」

サラゴンは全身から黒い闘気を放出した。

どこか燃えるようでそれは揺らめいている。

「これは黒曜気こくようき! これからが本番だ!」

サラゴンはクヴァグストのクワガタに斬りつける。

クワガタは黒い闘気によって切断された。

「なにい!?」

おどろくクヴァグスト。

サラゴンはしてやったりだ。

「フッ、こんなものだ」

「くっ!? ならこれで!」

クヴァグストはサラゴンと距離を取った。

遠距離攻撃に切り替えるのだろう。

クヴァグストの腹部にエネルギーが集まる。

クヴァグストは腹部から太いビームを出した。

「死ねえい!」

太いビームがサラゴンのもとに向かう。

サラゴンは黒曜気の斬撃を繰り出す。

ビームはそれて地面にぶつかった。

「バ、バカな……」

「こいつでとどめだ!」

サラゴンは猛烈な瞬発力でクヴァグストとの間合いを一気につめると、そのまま黒曜気で突きを出した。

クヴァグストの腹に大きな穴が開いた。

サラゴンの突きはクヴァグストの腹部を貫通していた。

「私が……負けたのか……」

クヴァグストはそのまま機能停止して倒れた。




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