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英雄叙事詩 Das Heldenlied  作者: 野原 ヒロユキ
~Himmel und Erde~
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VSバジーリオ

「カーカカカカカカ! このわし自ら尋問してやることを光栄に思うがいい。きさまらはなぜここにやって来た?」

バジーリオが王座から発言する。

その態度は尊大で傲然としていた。

まるで二人の命などいつでも自分の物にできるとでも思っているかのようだ。

セリオンは黙っているとエスカローネに危害をくわえられそうだったので、素直に答えることにした。

「俺はガイコツ盗賊団を倒すよう命じられてやって来た」

その言葉に周囲のアンデッドたちが反応する。

彼らはセリオンの言葉をあざ笑った。

周囲で爆笑が起こる。

まるで楽しくて仕方がないと言わんばかりだ。

冗談とでも思っているのだろうか?

「ククク……バカな奴らだなあ!」

「俺たちを倒すだって? 人間ごときが!」

「カーカカカカカカカカ! 愉快愉快! 無知とは恐ろしいものよのう! では、おまえたちは何者だ?」

「俺たちはテンペルの戦士だ」

セリオンは堂々と答えた。

それを聞いて、バジーリオはいっそうおもしろがる。

「カーカカカカカカ! テンペル! テンペルとはな! あの宗教軍事組織か! 確かにそのような組織に人間ならここにやってくることもうなずける。慈善活動も大変よのう……さて、我が配下の諸君? こ奴らをどう始末すべきかな?」

バジーリオが周囲のスケルトンに尋ねる。

手下たちは嬉々として答えた。

「火あぶりにするのがいいんじゃありませんか!」

「カーカカカカカ! 火あぶりか! できる限り、苦しむ殺し方をしたいが、火あぶりはいいアイデアだ! よし! この二人は今晩火あぶりで殺せ! それまでこいつらを監禁せよ!」

「ははっ!」

そうしてセリオンとエスカローネは一室に監禁された。



「セリオン、大丈夫?」

「ああ。奴らには拷問する趣味はないようだな」

セリオンは内心で笑っていた。

ガイコツ盗賊団は致命的なミスを犯した。

ボスがバジーリオであることが分かった。

それだけでも収穫だ。

それにこの手の集団はボスの権威と存在がものをいう。

ボスを倒してしまえば、ガイコツ盗賊団は瓦解するだろう。

それにセリオンには策があった。

火刑のときが、ガイコツ盗賊団を壊滅させるチャンスだ。

後は時間を待つだけだ。

「ごめんなさい、セリオン。私が引っかかったばかりに……」

エスカローネが申し訳なさそうに謝る。

「別にエスカローネは悪くない。それにエスカローネなら倒れている人を放ってはおけないだろ? 結果的にバジーリオのもとに潜入できたし、気にするな」

「ありがとう、セリオン」

セリオンとエスカローネとのあいだに沈黙が訪れる。

閉じ込められているために何もすることもない。

「ねえ、セリオン?」

「何だ?」

「膝枕してあげる」

「は?」

セリオンは目を丸くした。

エスカローネの言っていることが分からない。

「ほら、体力を消耗しないことが今は大切でしょう? だからよ」

エスカローネは自分の太ももをぱんぱんと叩く。

「……いいのか?」

「セリオンならいいわよ」

「そ、それじゃあ……」

セリオンはエスカローネの太ももに頭を乗せた。

エスカローネの太ももはとても柔らかくて弾力性があった。

エスカローネの体は肉付きがいいので、そんなところにセリオンはドキドキさせられる。

エスカローネが上からセリオンを見おろしてくる。

そしてセリオンの髪をなでた。

「やっぱり、セリオンは変わってない」

「? どうした?」

「あのね、私はセリオンと再会するのが不安だったの」

「不安? どうしてだ?」

「だって、セリオンが変わっていたらどうしようって……」

「何だ、そんなことか。俺はエスカローネを想わない日は一日たりともなかった。俺もエスカローネといっしょに戦いたい。エスカローネには俺の隣にいてほしいんだ」

セリオンはエスカローネに対して独占欲がある。

それはエスカローネのことを想っている証であった。

「でも、5年は長かったな。俺がエスカローネ以外の女性とこんなことをしていたらどうするつもりだったんだ?」

セリオンが意地の悪い質問をする。

その意図はエスカローネに伝わった。

「もう! 私はセリオンと結ばれると想っていたから不安はなかったわ。それも含めて、運命だと思っていたから」

「そ、そうか」

セリオンのアイスブルーの瞳をエスカローネの青い瞳がのぞきこんでくる。

セリオンは自分が赤くなっているのを自覚していた。

そもそもなぜこんな話をしているのだろうか。

「エスカローネ……?」

「何?」

「今晩の戦いは期待している」

「任せて! 修行の成果を見せてあげる!」

エスカローネはよほど自信があると見える。

セリオンはエスカローネの光魔法をこの目で見たわけではない。

女戦士クリーガリンとして、乙女ユングフラウとして……。

アンデッドと戦うのなら、光魔法は非常に有利だ。

アンデッドは光の浄化魔法に弱い。

エスカローネの強さは光魔法にあると言っていい。

「私が5年も修業してこれたのは、セリオンの隣で戦いたかったからよ。私は無力で守られるだけの女にはなりたくなかったの。だから、厳しい修行に耐えられた。すべてはセリオンのパートナーになるために」

「そうか……今のエスカローネなら俺といっしょに戦えるさ。それじゃあ、少し眠るとしようか。戦いのために、体力を残しておきたい」

セリオンはエスカローネの膝から離れた。

エスカローネは少し残念そうだった。

セリオンは思った、俺はエスカローネを愛していると。

エスカローネはどう思っているのだろうか……。



その日の晩――セリオンとエスカローネは火刑場に連れて行かれた。

王座が置かれ、バジーリオが腰かけている。

手下のスケルトンたちも、これから起きることを楽しみにしているようだった。

彼らにはいいショーなのだろう。

だが、セリオンはそのようなシーンを演じるつもりはない。

セリオンはバジーリオに最終宣告をするつもりだった。

「バジーリオ……これが最後だ。賠償か、死か。好きな方を選べ」

セリオンの言葉をバジーリオはあざ笑う。

バジーリオからすれば賠償などありえないし、ましてや死ぬなどということももっとありえない。

自分は死を超越した、永遠の命を手に入れたのだ。

「カーカカカカカカカ! バカめ! 我らに滅びなどない! 者ども! 火あぶりを始めろ!」

その時、セリオンの全身から闘気が吹き出た。

セリオンは手錠を破壊すると、大剣を出してエスカローネの手錠を破壊した。

スケルトンたちは突然のできごとに動揺する。

セリオンは手近なスケルトンに輝く大剣で斬りつけた。

「ぎゃあああああああ!?」

スケルトンは塵と化して消滅する。

セリオンはスケルトンに狙いをつけて、光の刃を飛ばした。

スケルトンたちが次々と斬り裂かれる。

斬られたスケルトンたちは塵に還る。

セリオンは光の大剣を振るいながら、スケルトンの群れに近づく。

そしてその隣には光をまとったハルバード・エスカリオス(Eskarios)を持ったエスカローネがいた。

エスカローネのハルバードはスケルトンを打ち砕いていく。

「ガー!? 何をやっているか! たかが二人に何たるざまだ! 数でかかって殺してしまえ!」

バジーリオが怒声を浴びせかける。

どうやらセリオンたちの予定外の反撃にブチ切れているらしい。

「エスカローネ、大魔法で攻撃できるか?」

「ええ! 広範囲殲滅大魔法を使うわ! セリオン! 時間を稼いで!」

「わかった!」

セリオンは時間稼ぎのため、さっそうとスケルトンの群れに斬りかかる。

スケルトンたちは動揺していた。

まさか、セリオンたちがこれほどの攻撃をしてくるとは思っていなかったのだ。

彼らはアンデッドは光に弱いということすら忘れていたらしい。

おめでたい連中だ。

いや、哀れというべきか?

セリオンは光輝刃を振るって、スケルトンの群れを圧倒する。

セリオンの後ろではエスカローネが聖なる、青い光を集中していた。

セリオンは斬り、突き、薙いだ。

セリオンの猛攻は止まらない。

アンデッドたちは徐々に後退していく。

エスカローネの魔力が高まりを見せていく。

「セリオン、もう十分よ!」

「よし!」

セリオンはエスカローネのもとに戻った。

「ハイリヒ・クロイツ(Heiligkreuz)!」

エスカローネを中心に十字の形が展開された。

地面から浄化の光がスケルトンたちを呑み込んでいく。

スケルトンたちは塵も残さず消滅した。

「すごいな……これほどとはな……」

セリオンはエスカローネの修業の成果を目を見張った。

これほどの広範囲魔法を習得するにはどれほどの努力がいるのだろうか。

セリオンはエスカローネを称賛する気持ちになった。

「どう? 私のこと見直した?」

「ああ、これほど強力な魔法を使えるとは思わなかった。アンシャル以上じゃないか?」

「ガー! 許さん! 許さんぞ!」

「バジーリオ!」

「まだ、消えていなかったの!?」

バジーリオは満身創痍になりながらも、まだ存在していた。

うなり声を上げながら、バジーリオはハイリヒ・クロイツの範囲の中から姿を現した。

「よくも! よくも仲間を浄化してくれたな! このわしが許さん! 神が許しても、このわしが許さん!」

バジーリオが吠えた。

その手には長剣があった。

「しぶとい奴だ。エスカローネ、奴は俺が相手をする! 手を出すな!」

「……ええ」

エスカローネはハルバードを下げた。

セリオンの戦いを見守るつもりだ。

エスカローネはセリオンの勝利を信じている。

セリオンは大剣でバジーリオの猛攻を防いでいた。

「きさまら人間がこのわしを傷つけるなどあってはならんのだ! わしは不死なのだ! そのわしが人間ごときに敗れるなど!」

「よく吠える……もとは人間だっただろうに……」

「うるさいわ!」

これはバジーリオが肯定したということだ。

おそらく、バジーリオは何者かによって意図的にアンデッドにされたのであろう。

それが何者かはわからないが……。

「一撃で決める!」

セリオンはバジーリオから跳びのくと、ダッシュして光の斬撃を繰り出した。

「光閃!」

セリオンの斬撃がバジーリオのみぞおちにヒットする。

「ガフウウウウウウウウウウ!?」

バジーリオは天を仰いで大絶叫を上げた。

バジーリオの体が浄化され消えていく。

「バカな……このわしが……」

バジーリオは消滅した。

それによって、ガイコツ盗賊団の事件も解決したのだった。

しかし、疑問は残った。

バジーリオに力を与えた人物である。

何者がバジーリオたちをアンデッド化したのか……。



ガイコツ盗賊団は全滅した。

事件は解決したかに見えた。

表向きはそうだった。

しかし、この事件は一層深い闇を伴っていたのだった。

「おやおや……バジーリオは死にましたか……もう少し使えると思っていたのですが……期待外れでしたね」

一人の優雅な紳士が言った。

彼はソファーに腰かけていた。

水晶球が置かれており、そこにはセリオンとエスカローネが映っていた。

この水晶球はバジーリオの目に映ったものを映像として映し出している。

彼は映像が途切れた水晶球をじっと眺めていた。

「それにしても……あのバジーリオを倒す者……テンペルの戦士クリーガーでしたか……私の邪魔になる可能性もありますね……テンペルは厄介な組織です」

彼は闇のために活動している。

この世界を闇が支配する――それこそ闇の勢力の理想郷。

テンペルはそれを邪魔する存在だ。

最悪、テンペルとの戦いは避けられない。

テンペルが追求しているのは『光の価値』だ。

それは『愛』だ。

だが、闇はそれとは異なるものを追求する。

闇が求めるのは、憎しみ、恐怖、絶望、怒り、嫉妬などだ。

彼にとって闇は真理だった。

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