バジーリオ
ある盗賊団が村を襲撃して、焼き討ちしていた。
彼らは『ガイコツ盗賊団』と呼ばれるアンデッドだった。
団長は『バジーリオ(Basilio)』と呼ばれており、王者のごとく貫禄があった。
頭の上には王冠を載せている。
「カカカカカカカ! 燃えろ! 燃えろ! すべてを焼き払え!」
バジーリオが楽しそうに声を上げる。
バジーリオの前には囚われた村人たちが集められた。
村人たちはこれからどうなるのか不安そうだった。
バジーリオはそれを見て喜んだ。
バジーリオが自らに印象づけるのは恐怖と絶望である。
村人たちはバジーリオを一目見るやいなや、悲鳴を上げた。
「カーカカカカカカカ! 村人諸君、よくやって来た」
「何でも命令を聞く! だから命だけは助けてくれ!」
村の代表らしき人が命乞いをした。
バジーリオはそれを見て笑みを浮かべた。
「さて……どうしたものか……おい、おまえたち! どうしたらいいと思う?」
バジーリオはわざとらしく部下に尋ねる。
バジーリオは笑っていた。
彼はこの状況を楽しんでいる。
村人の命を握っているということがバジーリオに快感をもたらすのだ。
「おカシラ! 生き残った村人に殺し合いをさせるのがいいと思いやす!」
「ほお……それはいいアイデアだな。諸君、それがいいかね?」
バジーリオは豪華な椅子に座り、睥睨するように村人たちを見回す。
村人たちは恐怖で顔をしかめた。
バジーリオは明らかにこの状況を楽しんでいる。
「カーカカカカカ! よかろう! このわしと一騎討で勝てたならおまえたちの命を助けてやろう。では誰が代表になる?」
「私だ! 村長の私が代表になる!」
バジーリオは満足そうにうなずいた。
「そいつに剣を渡してやれ」
「はっ!」
スケルトン兵が村長に剣を持たせる。
「カーカカカカカ! わしに勝てたら村人の命は許してやろう! さあ、かかってくるがいい!」
バジーリオは立ち上がって挑発した。
バジーリオは己の勝利を疑っていない。
バジーリオにとってこんなことは茶番にすぎなかった。
バジーリオに対して村長は頼りなかった。
「くらえ!」
村長はバジーリオの体に突きを出すが、バジーリオは笑っていた。
アンデッドに物理攻撃は通じない。
それにしても、この村長には剣の腕があるようだ。
シロウトではない。
「カーカカカカカカ! どうした? もっと本気で力を入れろ! そんなことではこのわしにダメージを与えることはできんぞ!」
「くそう!」
村長は焦ってバジーリオに斬りかかる。
そのすべての攻撃を、バジーリオは受けた。
バジーリオはアンデッド……普通の剣で攻撃してもダメージは通らないのだ。
それが分かっているバジーリオは余裕を見せた。
結局この勝負は自分が勝つしかないのだ。
最初から希望などないのだ。
バカな男だ!
バジーリオが見たいのは村人たちの絶望した顔である。
「カーカカカカカカカカ! どうした? これまでか?」
「これでもくらえ!」
村長は突きを繰り出した。
その剣には光の力が込められていた。
バジーリオはそれをまともに受ける。
「ぐああああああああああ!?」
バジーリオが尊大な悲鳴を上げる。
「カ、カシラ!?」
スケルトン兵たちが狼狽する。
「ぐうううううう……きさまあ! よくもわしに打撃を与えてくれたな! 死ぬがいい!」
バジーリオは持った長剣で村長を貫いた。
「ぐはっ!?」
村長は膝を付いた。
バジーリオは長剣を振りかぶると、そのまま村長の首をはねた。
「村長!」
「いやああああ!」
村人たちが絶望の目を向ける。
そうだ!
バジーリオはこれを見たかったのだ!
絶望……バジーリオはわざと希望を見せかけて、期待させて、一気に絶望に叩き落したのだ。
「フン! 者ども! 村人どもを殺せ!」
「はっ!」
「ヒャッハー!」
こうして村人たちは殺害された。
バジーリオは王座に座ってそれを楽しげに見ていた。
亜空間収納という魔術がある。
その名の通り、亜空間にものを収納できる魔術だ。
魔法と魔術の違いは魔法はmagic であり、魔術はmagic art である。
セリオンはこの亜空間収納を使うことができた。
この中に、一台のバイクを入れてあるのだ。
このバイクの名はメルツェーデス(Mercedes)という。
セリオンとエスカローネはこれからガイコツ盗賊団の調査に向かうのだ。
セリオンはバイクにまたがると、エスカローネに乗るように促す。
「エスカローネ、乗ってくれ」
「ええ、わかったわ」
エスカローネがバイクに乗ってセリオンに抱きつく。
エスカローネの大きくて柔らかい胸がセリオンの背中に当たる。
セリオンはそれを意識すると、顔を上気させた。
エスカローネのつかまり方はどこか変ではないだろうか?
エスカローネはまるで恋人のようにつかまってくる。
セリオンはそれにドキドキしながらもエスカローネに出発を告げる。
「さあ、出発だ!」
セリオンはアクセルを入れてバイクを走らせる。
エスカローネが密着しているのが分かる。
バイクは走り出すと、エスカローネの白いマントが風でなびいた。
セリオンとエスカローネはガイコツ盗賊団が襲ったという村にやって来た。
セリオンがバイクを止めて、亜空間収納に入れる。
亜空間収納は便利な魔術でほぼ無制限に収納できる。
たとえば、水や食料、着替えなども入っている。
村は炎で焼き尽くされていた。
エスカローネが思わず、ぞっとする。
「これは……ガイコツ盗賊団がやったのか……」
セリオンも目をしかめた。
家々は燃えており、明らかに放火されていた。
そして広場には人々の死体が放置されていた。
どうやらガイコツ盗賊団は冷酷で残忍らしい。
その冷酷さを満足させるために放火や殺人を繰り返しているのだろう。
「ひどい……」
エスカローネは心からつぶやいた。
エスカローネは嫌悪感を抱いているようだ。
「ああ、ひどいな」
これを見て、セリオンも同感だった。
心から吐き気をもよおした。
人の命を何とも思わない行為……。
セリオンはこの代償をガイコツ盗賊団に支払わせるつもりだった。
「セリオン、あれを見て!」
「あれは……」
それは血の跡だった。
血痕が森の中を通っている。
「あれをたどれば、ガイコツ盗賊団のアジトまで通じているかもしれないな」
こんなことをする連中は許せない。
セリオンはエスカローネと共に武装して森の中に入った。
森の地面には落ち葉がたくさん落ちていた。
血痕は森の奥へと二人をいざなう。
「あ、セリオン! あそこに人が倒れているわ!」
「まだ、息があるのか?」
「行ってみましょう!」
その時、セリオンは何か不吉な直観を感じた。
「待て、エスカローネ!」
セリオンはエスカローネを追った。
何か嫌な予感がする。
「きゃああああああ!?」
「!?」
セリオンとエスカローネは網の罠にはまった。
倒れていたのは死体だったのだ。
「くっ……罠にかかったか……」
二人は網でつるし上げられた。
やっぱり直観は正しかったか。
「ごめんなさい、セリオン……」
「いや、今はここから脱出することを考えよう」
過ぎたことを悔やんでも仕方がない。
セリオンはどうやって脱出するか考えようとした。
「へへへ! まんまと引っ掛かりやがったな!」
「クークククク! バカな奴らだぜ!」
「いい獲物が引っかかったなあ!」
「おまえたちは……!?」
セリオンたちの周囲にアンデッドスケルトン兵士が現れた。
みな武装している。
「おまえたちはガイコツ盗賊団の者か?」
「あーん? よく俺たちのことを知っているなあ!」
「クックック! その通りだぜ! おカシラのところに連れて行くか」
「ああ、それがいいだろうな」
セリオンとエスカローネはあえて連中に従った。
ボスのもとまで案内させるためだ。
二人が案内されたのは森の中の屋敷だった。
屋敷の色は白だった。
アンデッドたちの色と同じだ。
セリオンとエスカローネはバジーリオの間へと案内された。




