エスカローネ
エスカローネ・シベルスカ(Eskaroone Siberska)はセリオンの義妹である。
彼女は本当の父と母を知らない。
彼女は幼いころ、ディオドラに拾われて、セリオンと共に育てられた。
エスカローネは幼いころからセリオンを愛していた。
15歳のころ、エスカローネはツァーラ師のもとで修業したいと申し出た。
ツァーラ師は光の導師で、光魔法の達人だった。
エスカローネが修行の話をディオドラに申し出たのは、セリオンの隣で戦いたいからだった。
つまり、エスカローネはセリオンの女になりたかったのである。
セリオンの女になるには、彼の隣で戦える必要があった。
セリオンは戦士だ。
そのため、エスカローネは女戦士になるため、修行を申し出たのである。
エスカローネがセリオンと別れてから5年が過ぎていた。
魔法は九つの元素属性を持っている。
光、闇、炎、水、風、土、雷、氷、無の九つである。
誰しも、すべての属性が扱えるわけではない。
扱える属性は天性である。
つまり、先天的に決まっているのだ。
エスカローネが扱える属性は光と無である。
『闇』は特殊で、倫理的に悪しき力で、普通の人は扱うことができない。
闇の魔法はその使用が禁止されていた。
それは倫理的に危険なものが多いからである。
特に精神に干渉したり、異常をもたらしたり、危険な破壊力を持つからであった。
邪悪な魔法が多いことも、危険視される理由だった。
闇の魔法は世界的に使用が禁止された。
しかし、禁止ほど人の好奇心を誘うものはない。
そのため、闇の魔法を習得しようとする者も出てくる。
各国政府は闇の魔法を国際的に摘発すべく、コンシリウム(Consilium)という国際会議を開いていた。
闇とは異端の領域なのだ。
そもそも、光の原理と闇の原理は宗教的に対立している。
そのため、光の側にある国と闇の側にある国に分かれていた。
ガスパル帝国のように闇の魔法を合法的に使える法律を持つ国も存在する。
ツヴェーデンは光の魔法の牙城で、そのため、ガスパル帝国と鋭く対立していた。
魔法を使うには『魔力』がいる。
魔法を扱うことができるエネルギーは『魔力』という。
魔法の威力は『魔法力』による。
エスカローネは現在20歳。
エスカローネは一日たりともセリオンのことを忘れた日はない。
エスカローネは幼いころからセリオンを愛し続けていたのだ。
エスカローネは開けた場所にいた。
ツァーラ師もその傍らにいた。
エスカローネは目を閉じる。
エスカローネの両手に聖なる青い光が集まる。
ここは修行場所だった。
地面はいろんな魔法を撃たれて変形していた。
この修行場なら、強力な魔法を放っても問題がない。
エスカローネの足元に青い魔法陣が現れた。
エスカローネは普通の魔法を出そうとしているのではない。
魔法は通常魔法と大魔法に区別される。
エスカローネが出そうとしているのはこの大魔法だった。
大魔法を習得したら、それはその属性を極めたことを意味する。
大魔法を習得できるのは一部の者だけだ。
普通はその高みには至れない。
ただし、大魔法は威力が高い分、発動に時間がかかった。
エスカローネは美しく成長していた。
髪は金髪で、ストレートのロングヘア。
その瞳は青く、服は軍服上衣にボックス型の青いミニスカート、青い二―ソックス、そして、白いマントをはおっていた。
「行きます! ゴッテス・ハウホ(Gotteshauch)!」
エスカローネが光の大魔法を発動させる。
上方から青い光の柱が地面に降り注ぐ。
広範囲殲滅魔法――ゴッテス・ハウホ――『神の息吹』である。
これはエスカローネのオリジナル大魔法だった。
それを見て、ツァーラ師が満足そうにうなずく。
「見事だ。これほどの領域に到達したおまえには私から教えることはもはやない。修行は終わりだ」
「え? それじゃあ?」
ツァーラ師はほほえんだ。
「うむ。おまえの家族のもとに帰るがいい」
「! ありがとうございます!」
エスカローネは花のような笑顔を浮かべた。
この瞬間をどれほど待ち望んでいたことだろう。
すべてはセリオンの隣で戦うため……。
そのために自分は生きてきた。
それはセリオンから愛されたいというエスカローネの願望だった。
この修行が終わることで、エスカローネはテンペルに帰ることができる。
テンペルはエスカローネにとって我が家も同然だ。
それにテンペルには女性の戦士部隊、ヴァルキューレ隊(Die Walküren)があり、エスカローネにはライザ(Leisa)とナターシャ(Natascha)という友人がいた。
そしてテンペルには義父アンシャル、義母ディオドラ、さらに愛するセリオンがいる。
エスカローネはセリオンを愛していた。
エスカローネはもともと髪をツインテールにしていたが、セリオンが大人っぽい女性が好みであることを知って、今のストレートに変えたのだ。
セリオンに会いたい。
エスカローネの想いが胸にうずいていた。
「ツァーラ師、今までありがとうございました。これで私も、戦士として戦うことができます」
「光の導師としておまえに助言しよう。私はおまえが闇の魔法と戦うために光の魔法を教えた。光の側の戦士たれ! 善き姉妹たれ! たっしゃで暮らすがよい」
ツァーラ師は感慨深そうにうなずいた。
そしてエスカローネはシュヴェリーンに向かった。
セリオンと再会するために。




