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英雄叙事詩 Das Heldenlied  作者: 野原 ヒロユキ
~Himmel und Erde~
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ホグ

スルトは高いところから森を見ていた。

スルトは感じたのだ、混沌の諸力を……。

この森には人に災いをもたらそうとする者がいる。

それもかなり強い相手だ。

スルトはこの危険な相手との戦いを、セリオンの実戦経験にちょうどいいと考える。

セリオンには強くなってもらわねばならない。

セリオンは今はまだ未熟だが、将来大きく成長する可能性がある。

そのためには多くの経験が必要だ。

セリオンを強くするのは訓練ではない。

実戦こそがその人物を一回りも、二回りも成長させるものなのだ。

スルトは口を湾曲させる。

そう、それはおもしろいという感情だった。

不謹慎かもしれない。

だが、スルトにはセリオンの成長がありありとわかる。

スルトはセリオンには中核の騎士になってもらいたいと考えている。

セリオンは必ずそうなる。

スルトにはその未来が見えた。

混沌の諸力は危険な敵だが、この危機を乗り越えたとき、セリオンはさらなる高みに至るであろう。



セリオンとスルトは森の中を歩いた。

木々は高くうっそうと茂っていた。

スルトはセリオンを先導していく。

セリオンはスルトの後についていく。

急にスルトは立ち止まった。

「? どうしたんだ、スルト?」

スルトは遠くをじっと見つめていた。

セリオンはその眼光が何を見つめているかわからない。

「どうやらこの森には妖怪変化がいるらしい」

「妖怪変化?」

「あの広い場所に行けば分かる」

スルトとセリオンは森の開けた場所にやって来た。

「若き狼よ、武器を取れ!」

「あ、ああ」

セリオンは大剣を手に取った。

突然、銃声が鳴った。

銃弾がセリオンたちに放たれた。

セリオンたちは二人とも大剣でそれを防ぐ。

二人ほどの剣士なら銃弾をはじくなど造作もない。

森の中には霧も出てきた。

「若き狼よ、気息で気配を感じてみろ」

「気息で?」

セリオンは気息で周囲を感じてみた。

すると、何か怪しげな気配を感じた。

これは生き物だろうか?

知性があるかはわからないが、生命体であることは確かなようだ。

こちらに敵意を向けてくる。

性別はわからない。

人間ではないことは確かのようだ。

セリオンはここまで感じ取ることができた。

「何かいることはわかった。それが敵意を向けていることも」

「それで十分だ。見ろ。奴が姿を現すぞ」

ぴょんぴょんと跳びながら、小さな生き物が近づいてくる。

「ホーッコッコッコッコ!」

小さな生物はくるりと回転してセリオンたちの前に現れる。

セリオンは大剣を向けた。

「ホーッコッコッコッコ! あたしゃ、ホグ(Hog)ばあさん! この森の支配者さあ! 生きがいい獲物が二匹もいるとはねえ! 逃がしゃしないよ! あんたたちの肉はうまそうだねえ!」

ホグの姿は直立した猫のような老婆だった。

体は子供のように小さい。

ホグは野性的な目を二人に向けてきた。

ホグの目から殺意をありありと感じる。

セリオンは戦いは不可避と判断した。

「フッ、ちょうどいい。若き狼よ、こいつの相手をしてみるがいい」

「?」

「おまえの力でこいつを倒してみるのだ」

「たまにはスルトが戦ってもいいんじゃないか?」

セリオンには不満があった。

スルトはセリオンばかり戦わせる。

たまにはスルトが戦ってもいいと思うのだ。

「私が戦ったら実戦経験にならない。これも修業だ」

「……わかったよ」

セリオンはしぶしぶ納得した。

一度決断すると速かった。

セリオンは前に出た。

「ホーッコッコッコッコ! さあ、どっちが戦うんだい? このあたしに勝てると思っているのかい? このあたしがあんたらをひき肉にしてやるよ!」

「俺が相手だ」

セリオンが名乗り出て、大剣を構えた。

「それじゃあ、いくよ!」

ホグが銃弾をぶっぱなしながら突っ込んでくる。

セリオンは大剣で銃弾をやり過ごす。

「死にな!」

ホグは右手の包丁でセリオンに突っ込んでくる。

セリオンは大剣でホグの包丁に合わせた。

セリオンは大剣を振るってホグを斬ろうとする。

「キエエエエエエエエエエエ!」

ホグは驚異的身体能力で大剣の刃をかわしてしまう。

セリオンの攻撃をホグはぴょんぴょんとよけた。

ホグがセリオンのうちの間合いに入って包丁で突いてくる。

セリオンは一気に間合いをとってそれを回避する。

「くっ……」

セリオンはすかさず、距離を取る。

セリオンは非常にホグと戦いずらかった。

ホグの間合いで戦えばやられる。

「死ぬんだよ!」

ホグは土の刃を作り出し、セリオンに伸ばしてきた。

セリオンは大剣で防ぐ。

「これでもくらいな!」

ホグは土の刃をいくつも形成した。

それをセリオンめがけて撃ちだしてくる。

セリオンは横に跳んでやり過ごす。

セリオンは一気に接近して斬りかかる。

ホグはそれをジャンプしてかわすと、セリオンの内側に入り込んでくる。

ホグがセリオンを斬りつけた。

セリオンは左腕に切り傷を負う。

正直、セリオンはホグとは戦いづらいと思った。

ホグの間合いで戦ったらめった刺しになるだろう。

その悪夢がセリオンには予測できた。

「まったくしぶといねえ! これでおっちにな!」

ホグが接近して銃弾を撃つ。

セリオンはそれを巧みに弾き飛ばす。

「無駄だ。俺に銃は通じない」

「フン、そのようだね!」

ホグは銃を後ろに投げ捨てた。

ホグは背中からもう一本の包丁を取り出す。

セリオンは蒼気を発した。

闘気を使わないでは勝てないと見て取ったからだ。

それに闘気を放出すると身体能力が向上する。

セリオンはパワーとスピードの両面で強化されるのだ。

セリオンはすばやく移動してホグに大剣で斬りつけた。

「グウウウウウウウウウ!?」

ホグはすぐに防戦一方になる。

「パワーストーン!」

ホグは自身の周囲に岩をまとった。

いわわ回転してホグの衛星のようになる。

「これでくたばりな!」

ホグは岩をセリオンに向けて送り出してくる。

セリオンは三つの岩を蒼気の刃で斬り捨てる。

蒼気による切断力はすさまじく、バターをナイフで切るように蒼気は岩を斬った。

セリオンは一気に間合いをつめてホグばあさんを斬る。

ホグは包丁でセリオンの大剣を受け止めようとする。

しかし、セリオンの斬撃はホグの包丁をはじき飛ばした。

「なっ、何だって!?」

ホグは目を丸くする。

「これまでだ」

「ひっ!?」

ホグは恐ろしさで腰を抜かした。

「たっ、助けておくれよ! なんでも言うことを聞くからさ!」

ホグは必死に命乞いをした。

その必死さにセリオンはあきれた。

「……」

セリオンにはホグを殺さなければならない理由はない。

セリオンはスルトを見た。

判断をスルトにゆだねたのだ。

「フッ」

スルトは笑うと、ホグに近づいていった。

「おい、おまえ」

「な、何さ!」

「この森は詳しいのか?」

「この森の中ならあたしの知らないところはないよ!」

「ほう……」

スルトはこれは使えるという目をした。

「ホグと言ったか。おまえの命は道案内をすることで助けてやろう。もし、我らに武器を向けたら、次は命がないものと思え」

「わ、わかったよ!」

ホグは仕方ないとばかりにうなずいた。

「スルト……このホグにどこを案内させるつもりだ?」

「ホグよ、混沌の諸力を知っているか?」

「ギクッ!?」

ホグは盛大に表情をひきつらせた。

二人ともこれは何かを知っていると思った。

「そ、それがどうしたのさ……」

ホグは明らかに狼狽していた。

まるで何かを恐れているかのような……。

「私たちは混沌の諸力を倒すべく、行動している。そのもとへ案内しろ」

「そ、それは……」

ホグは二の足を踏んだ。

「できないなら、ここで死んでもらうが?」

スルトがホグを脅す。

ホグはしぶしぶ受け入れる。

「わかったよ……けどあたしは戦わないからね! それでいいって言うなら案内しようじゃないか」

「ああ、誓って」

「フン……ついてきな」

ホグはサクサクと歩いて行った。

いつの間にか霧は消えていた。

「……信用できるのか? 俺たちを仲間のところに連れて行くかもしれないぞ?」

「安心しろ。こいつは俗物だ。自分の命がかかっているのなら素直に案内するだろう」

「そういうものか……」

「ほら! さっさとついてきな!」

「それでは行くとしよう」

「ああ、わかった」

セリオンとスルトはホグの後をついていった。

ホグの案内は正確だった。

どうやら正直に案内しているらしい。

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