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英雄叙事詩 Das Heldenlied  作者: 野原 ヒロユキ
~Himmel und Erde~
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スルトとの出会い

セリオンがスルトと出会ったのは5歳のころである。

そのころはまだテンペルもまだ発達していなかった。

セリオンはディオドラと共にスルトのもとを訪れた。

ディオドラは内心の不安を隠してスルトに話をした。

「それで、この子の代父になってくれないでしょうか?」

ディオドラはストレートに尋ねた。

「ふむ……アンシャルが父親をしているが、それではだめなのか?」

スルトはアンシャルが良き父だと思っているし、実際ディオドラから見てもアンシャルは良き父だ。

ディオドラは不満があるわけでもない。

また、アンシャルに不足があるわけでもない。

ディオドラは息子には、セリオンにはスルトのような武の道を歩む父が必要だと思ったのだ。

スルトは武人だった。

アンシャルはどちらかと言えば学者であろう。

つまり、知の人ではなく、武の人を父にしたかったのである。

セリオンの望みは戦士になること。

それをかなえてくれるのは武人に他ならなかった。

「それで……この子の代父になっていただけますか?」

「ふむ……」

スルトはセリオンを見た。

セリオンはスルトの部屋の武器コレクションを見ていた。

壁には武器が飾られていた。

これらはスルトが愛用している武器なのだ。

スルトは大剣を扱うが槍や、弓と言った武器も極めていた。

スルトに扱えない武器はない。

壁にあるのは大剣、片手剣、刀、槍、斧、ハンマー、鞭、ハルバードなどなど……。

セリオンの目は輝いていた。

目の前の武器に入れ込んでいるようだ。

スルトはそれを見て取った。

「興味があるなら、手に取ってみるがいい」

スルトがセリオンを促した。

ディオドラは少し不安になった。

こんな武器に触って大丈夫なのだろうか。

スルトはそれを悟る。

「安心するがいい。この子は武器の扱いが本能的にわかる。決して危険はない」

「はい……」

幼いセリオンはまず斧に関心を示した。

それからハンマーに、槍に、最後に剣のところ来た。

大剣はセリオンの身長が低くて触れなかった。

たとえ触れても、取らなかったであろう。

「うん、まずはこんな斧から始めたい」

「セリオン君、君はどうして大剣に興味を持ったんだい?」

「大剣は将来的に扱いたい。でも今の俺では扱えない。だから、まず斧から訓練してみたい」

「君は『狼』だな」

「狼?」

「フフフ……『誇り高い』という意味だ。これから私は君を『若き狼』と呼ぶことにする」

スルトはディオドラに告げる。

「すばらしい子だ。このような子なら私は喜んで代父になろう」

「!? ありがとうございます!」

ディオドラは頭を下げた。

「この子を戦士にしてください! それがこの子の望みなんです」

「いいだろう。私が責任をもってこの子を戦士として鍛えよう」

そうしてセリオンはスルトに弟子入りしたのだった。



セリオンは闘気の出力をコントロールする訓練をしていた。

セリオンはやすやすと闘気を出すことができるようになった。

それ自体はコツをつかめば難しくない。

一般の聖堂騎士でもできることだ。

セリオンが今訓練しているのはその闘気を大~小、小~大へと調整する力だった。

つまり闘気の放出の加減だ。

すなわち、闘気のコントロールだ。

闘気は最大出力していたら、すぐに闘気切れしてしまう。

『最大闘気量』は人によって違うが、誰もが最初から多いわけではない。

これは訓練によって増やすことができた。

闘気欠乏というものがある。

闘気切れのことだ。

闘気の量は無限ではない。

しかし、セリオンは膨大な闘気量を持っていた。

とはいえいくらそれが大きくても限界はある。

セリオンはそのため、闘気の出力をコントロールする訓練をしていたのだ。

「最大闘気量に気をつけろ。いくら強くてもオーバーキルになってしまっては、無駄に闘気を消費したことになる」

「わかっているが……じれったいな……」

セリオンは大剣を構えて放出の訓練をしている。

セリオンの出力は訓練を続けているせいか、徐々に安定してきた。

もともと才能はあるのだ。

努力すれば、セリオンは戦いに関する術などはたやすく身につけられる。

もっとも料理の腕はいっこうに上達しないのだが……。

「集中しろ。集中だ」

その日は一日闘気の出力の訓練で終わった。



修業が進むと、スルトはセリオンを大岩のもとに連れてきた。

セリオンはスルトの何か企んでいるような目を見てその意図を悟った。

「フッ、若き狼よ。おまえはだいぶ闘気を扱えるようになった。今回はこの岩を両断してみるがいい。それで今回の修業は終わる。これは最終テストだ」

「そうだろうと思った」

セリオンは岩の近くに来た。

その岩を手で叩く。

ものすごく硬い。

今回のテストはこの岩を一刀両断にすることだという。

壊すだけなら、全力の闘気を叩き込めばできるだろう。

しかし、一撃でできるかといえば、セリオンには未知数だった。

「一撃でやるとなると、今の俺の最大の攻撃を叩き込むことになる。やってみるさ」

スルトが岩から離れるとセリオンは大剣の前で闘気を解放した。

今までの修業の成果が出ている。

セリオンから蒼い闘気が放出される。

それはまるで台風、暴風雨だ。

荒ぶる嵐――。

それを見たスルトは。

「まだ甘いな。闘気に練りが今一つだ。闘気の真髄は激しさではなく、静けさだ。フム……おまえの闘気は蒼い。ゆえに『蒼気』と名付けよう。これからは『蒼気』というがいい」

「蒼気……俺の闘気」

「いいか、闘気を突き詰めると個性的になっていく。それは一人一人の可能性だ。さて、では若き狼よ」

セリオンは岩に目を向ける。

セリオンは蒼気を大剣に流し込む。

そして大岩を切断したイメージをした。

『やる』のだ。

すべては可能性があることを信じることから始まる。

己を信じないものに大業はなせない。

セリオンは呼吸すると、大剣を大岩に叩きつけた。

大岩ははじけ飛んだ。

岩は両断された。

「まだ甘い。両断ではなく、切断すべきだった」

「これが今の俺の実力か……」

セリオンはため息を出した。

セリオンは両断は達成したのだが、斬れ筋がまだ甘かった。

『今』は……。

「なぜ、完璧に斬れなかったかわかるか?」

「それは……」

セリオンにはそれはわからなかった。

力の使い方に問題があったのだろうか。

スルトが答えを出す。

「おまえは岩に大剣を叩きつけたからだ。叩きつけるのではなく、叩き斬ればよかった」

「そういうことか……」

セリオンは納得した。

「さて、今回の修業はここまでだ。それでは帰るぞ」

「ああ」

セリオンたちは山を下山した。



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