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ザンツァ

彼は上空から、地上を眺めていた。

彼は全身をプレートスーツで覆い、黒い翼を持っていた。

彼の名はザンツァ。

闇の王フューラーに仕える使徒のひとりである。

ザンツァはシュヴェリーンの上空にいた。

空は青く、白い雲がかかっていた。

ザンツァはシュヴェリーンの町を眺めていた。

今から彼がやることはこのシュヴェリーンを破壊することだ。

「さて、これを使って、シュヴェリーンを破壊しつくそう。我らが闇の王フューラー様の御心のままに!」

ザンツァはそう言うと、球根のようなものを取り出し、それをヤパーナー地区に投下した。

これは破滅の始まりだ。

「さあ、シュヴェリーンの市民どもよ! 地獄を味わうがよい!」

悪しき謀略が始まろうとしていた。



「アオイ……きれいだ」

「アンシャルさん……」

アオイはアンシャルと共に結婚式の時に着るウエディングドレスを試着していた。

アンシャルはカネには困っていなかったので、最高級のドレスを、それもオーダーメイドを作ってもらった。

アオイのスレンダーな体に、ドレスがぴったりと密着する。

全体的に清楚な感じがした。

それはアオイが清楚だからだろうか?

アンシャルにはそれがどちらかはわからなかった。

「これで結婚式を挙げられるな。後は招待する者たちに招待状を配らないといけないな」

アンシャルはまず、スルト、ディオドラ、セリオン、エスカローネ、サラゴン、アリオン、ダリア、シエル、ノエル、関係あるところではヴァイツゼッカー大統領などの顔が浮かんだ。

アンシャルとアオイは店を出て外を歩く。

アンシャルがアオイの手を握る。

「いい結婚式を挙げたいな?」

アンシャルがアオイにささやきかける。

「はい、そうですね」

アオイもうなずく。

この二人は互いに深いところでつながっていた。

お互いわかり合えていたと言うべきだろうか?

結婚式は今週の日曜日を予定している。

場所はテンペル聖堂である。

「私は君のような人と結婚出来てうれしいよ」

「私もです。アンシャルさんは私の理想的な人ですから……」

その時、轟音が走った。

そして地面が揺れた。

「!? なんだ!?」

アンシャルはアオイを守るように伏せた。

その時アンシャルは見た。

超巨大な、赤紫色のものが姿を現すのを。

それは異形で、簡単な解説を許さない。

「あれは、何だ!? 生物なのか!?」

それは植物に近かった。

根が張りめぐらされ、根の上に楕円形の部分があり、さらに頂上には巨大な花が咲いていた。

この存在を花、とか植物とか呼ぶにはあまりに異形すぎた。

『これ』はシュヴェリーンをそびえたち、堂々とその禍々しい姿をさらしていた。

「アンシャルさん! あれはヤパーナー地区にあります!」

「何!? いったいヤパーナー地区で何が起きている!?」

「アンシャル様!」

「? ツバキか?」

そこに現れたのはくノ一のツバキだった。

彼女はアンシャルの前でひざまずいた。

「スルト様から至急お戻りくださるよう指令がありました。テンペルにお戻りください」

「あれの件だな?」

「はい、そうです。私たち諜報部はただちに調査に向かいます」

「そうだな。スルトの判断は正しい。わかった。情報を集めるのはおまえたちに任せる。私たちはすみやかにテンペルに戻ろう」

「それでは、私は失礼します」

ツバキの姿が消える。

「アンシャルさん……」

「アオイ、一度テンペルに戻ろう。すべてはそれからだ」

アンシャルはアオイを連れてテンペルに戻った。



テンペルでは作戦会議が行われた。

テンペルは非常事態と判断して、非常時の対応をした。

作戦会議は会議室で行われた。

ディスプレイには禍々しくそびえたつものがあった。

「諸君、よく集まってくれた。今回は突如出現したあの巨大な怪物に対する対策を考えなばならない。そこで、諸君は意見を出してもらいたい」

スルトがまず話の振出をした。

作戦会議に集まったメンバーはセリオン、エスカローネ、アンシャル、サラゴン、そしてディオドラだった。

ディオドラは戦士ではないが、糧食部部長として、食の面からの代表と見なされた。

あの巨大怪物が現れてから五時間経過していた。

しだいに状況が分かってきた。

まず、あの巨大怪物はヤパーナー地区に立っている。

ヤパーナー地区を中心にして、シュヴェリーンに広がりつつあるらしい。

あれが生物であることはツバキたちに調査で明らかになっている。

時間と共に根による侵食が進みつつある。

このまま放置すれば、シュヴェリーンは巨大怪物の根で全土を張りめぐらされるだろう。

そうすれば、新市街地の高層ビルが根元から倒されることになる。

事態は一刻の猶予もないのだった。

「あの巨大なものが生物であることはわかった。あれは動物なのか、それとも植物なのか?」

アンシャルが疑問を呈した。

このアンシャルの質問はもっともで出席者が全員アンシャルを見た。

「ツバキの調査では、『動物的植物』だそうだ」

スルトが結論を言う。

「つまり、この二つが区別されていない?」

セリオンの意見だ。

「そういうことらしい。そもそも誰が、いったいなぜこんなものを出現させたかはわかっていない。何が目的かもな」

スルトは現状ではわかっていないことが多いという。

だが、いつまでも時間をかけていたら根の範囲が広がるだろう。

それはシュヴェリーンが侵食されていくということだ。

ここにいる誰もが、シュヴェリーンを守りたいと思っていた。

「道路網が寸断されたら、食事の支給に支障をきたします。今のところ平常通り食事を提供できますが、非常食を出す準備が必要かと思います」

ディオドラが糧食部を代表して意見を述べた。

ディオドラの言っていることはもっともだ。

「もちろん、糧食部が正常に機能することは重要だ。確かに、たくわえてあった非常食を出す必要があるかもしれん。その時は報告してもらいたい」

「わかりました」

「スルト総長、アンシャル副長、この生物が誰によって出現したかは置いておきましょう。どうせ、議論しても結論が出ませんからね。それより、いかに対処するかを考えるべきではありませんか」

サラゴンの意見は正しい。

サラゴンは時間がないのに不毛な議論をする気がないのだろう。

「それはその通りだ。この巨大怪物のもとに部隊を派遣する。セリオンはこの巨大怪物のもとに、ほかのものはヤパーナー地区で生存者の救出だ。セリオン、おまえにいつも無理を言っているが、今回もおまえが頼りだ。おまえは独自の判断で自分の行動を取れ」

「ああ、わかった」

「それでは、私は聖堂で指揮を執る。諸君らは解散し、ミッションに移ってもらいたい。おそらくツヴェーデン軍も独自に動き出しているはずだ。現地で接触したら、協力してくれ。以上だ」

スルトは会議を解散させた。








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