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王宮奪還

夜、プラカの一角で暴動が起きた。

暴徒は貴族の横暴に叛意を募らせていた。

彼らはエリシュカ王女万歳と叫び、貴族の政治を批判した。

暴徒が町で暴れているという知らせはすぐに王宮に届いた。

ヴェンツェルは玉座で寝ていた。

それはここで寝なければ、ほかの誰かがここに居座るのではないかという猜疑心からだった。

ヴェンツェルは目を覚ました。

「? いったい何事だ?」

「王子殿下! 暴動です! スヴェルトラヤ地区で暴動が発生しました! 暴徒はエリシュカ王女をかかげている模様です!」

「なんだと!? いまさらエリシュカなど……愚かな奴らだ。暴徒は全員処刑せよ!」

「はっ!」

王宮の中がにわかにあわただしくなった。

兵士たちが急いで武器を携帯する。

王宮からは兵士たちが次々と暴徒の鎮圧に向かっていった。

それをアンシャルはしげしげと眺めていた。

「よし……王宮から兵士が出て行ったな。これで暴動の目的は果たされた。

あとはどれだけ兵士を引き付けておけるかだ」

アンシャルは教会の屋根から降りた。

そして、教会の中にいる戦士たちに話しかける。

セリオン、エスカローネ、サラゴン、アリオンらだ。

「セリオンはこれから王宮の中に侵入してくれ。ほかのものは王宮前で陽動だ。私たち四人の役割はセリオンをヴェンツェルのもとに送ることにある。セリオンにはヴェンツェルと戦ってもらう。ヴェンツェルのことだ。おとなしく降伏することはないだろう。まず戦いになると思っていい。セリオン、覚悟はいいか? すべてはおまえにかかっている。エリシュカは王宮への誘導だ。地下水路を使ってヴェンツェルのいる玉座の間へセリオンを導いてくれ」

「わかった。俺はやる」

「わかりました。セリオン殿を玉座にまで導きます」

アンシャルはその場の全員を見た。

全員の覚悟を改めてアンシャルは確かめた。

「よし、それでは決行だ。この作戦が成功するよう、神に祈ろう」

全員はその場で神に祈りを捧げた。

どんなに緻密に練られた作戦も、たまたまとか偶然とかでうまくいかないと気がある。

それに彼らは自分たちが最善を尽くした後、神の支援があればいいと思っていた。

最初から神頼みではない。

セリオンはエリシュカと、ほかのメンバーはアンシャルに率いられて教会を後にした。



「ここです。ここを小舟に乗って進めば、玉座の間に出られます」

「へえ、シンプルなんだな」

「でなければ、緊急脱出路になりませんから」

セリオンはエリシュカと共に小舟で水路を進んでいた。

水路はしんと静かで、水の流れる音がした。

「セリオンさんは不安はないのですか?」

「不安か。俺はたとえどんな不足な事態が起こっても、最善を尽くすだけだ」

「セリオンさんは英雄だと聞きましたが?」

「まあ、な。俺は暴龍ファーブニルを倒した。だから、今は英雄と名乗っている。……不安なのか?」

「え、はい……アンシャル様を疑っているわけではありませんが、これから自分がどうするか、それが分からないのです。この旅でアンシャル様にいろいろ相談をして頂いたのですが……」

エリシュカは不安そうな顔を見せた。

まあ、不安を持つなということの方が無理というものだろう。

セリオンは一戦士でしかないが、彼女は女王に、国の代表にならなばならないのだから……。

「俺から言えることは何もないな。アンシャルと手紙のやり取りでもしたらどうだ? いろいろ相談に乗ってくれるだろうさ。そういう政治的なところはアンシャルがよく知っている」

「そう、ですね。あ、そろそろつきます」

「よし、一暴れするとするか」

セリオンたちを乗せた小舟は止まった。



アンシャルたちは武装して門の前にいた。

エリシュカからの要請でできるだけ人を殺さないように言われている。

四人は円陣を組んで戦っていた。

これで背後は安全だ。

後はただひたすら前からの敵を相手するのみ。

兵士たちは四人を包囲しようとしている。

だが、この四人は一騎当千だ。

いくら王国の精鋭でも、彼らにはかなわない。

「さて、今ごろセリオンはどうしているかな?」

「きっとエリシュカさんが玉座の間へと連れてってくれると思います」

エスカローネが自信をもって答える。

「我々は自分たちの任務を全うするしかありませんな」

サラゴンが長剣で斬りつけてきた兵士を返り討ちにする。

「これが実戦の空気か! へっ! やってやるぜ!」

アリオンが闘志を燃え上がらせる。

アリオンは紅蓮の刀で兵士を薙ぎ払った。

兵士たちが吹き飛ばされる。

四人は軽々とチェカの精兵を叩きのめしていった。



「いったい何をやっている! ええい! 報告はまだか!」

「何を動揺しているのです?」

「!?」

玉座の間に通路が現れた。

そこからエリシュカとセリオンが出てくる。

「エリシュカ!」

ヴェンツェルが憎悪に燃えた目でエリシュカを見る。

エリシュカなど視界にも入れたくないと言わんばかりだ。

「きさま、よくおめおめと戻ってこれたものだな!」

「私は女王にならなばなりません。そのためには有効な手段を取ります。ヴェンツェル、チェックメイトですよ?」

「ふはははははははは! 片腹痛い! ここに来れただけで勝った気になったとは! 哀れみさえ覚えるな!」

「ヴェンツェル?」

「フン! 私にはまだこれがある!」

そう言ってヴェンツェルが出したのは薬品が入った瓶だった。

「それは……危険を感じる……よせ!」

セリオンはヴェンツェルを止めようとしたが、ヴェンツェルは瓶の中の薬品をすべてのみ干した。

「見るがいい! これはあのお方からいただいた力! 闇の力をおおおおおおお!!」

薬品を飲むとヴェンツェルの体が膨れ上がった。

まるで肉塊の熊のような怪物になる。

服は破けてちぎれた。

「はーっはっはっはっはっは! どうだ! すばらしいぞ、この力! 体中を力が駆け巡る! この力できさまらを屠ってくれるわ!」

セリオンはとっさに大剣を出してエリシュカの前に立ちはだかった。

「もう、言葉は通じない。こいつは倒すしかない」

「……はい、お願いします」

「フン! 男の陰に隠れるしかないのか! 情けないな、エリシュカよ! まずは護衛の男からぶち殺してくれるわ! パワークラッシュ!」

ヴェンツェルが大きな腕で叩きつけてきた。

セリオンはそれを大剣で受け止める。

ヴェンツェルは強力な力の打撃を繰り出した。

普通の相手ではあっさりと即死しただろう。

だが、セリオンは普通の相手ではない。

セリオンの力はヴェンツェルの力を上回った。

「な、なんだと!? なぜ、受け止められる!? そんなバカな!?」

「その腕、もらうぞ!」

セリオンは大剣を振るってヴェンツェルの右腕を切断した。

ヴェンツェルの右腕が宙を舞う。

「ぎいやああああああああああああ!?」

ヴェンツェルが叫びながら、のたうち回る。

どうやら、痛覚はあるらしい。

「き、き、き、き、きさま! よくも!」

「次は左腕を斬る」

「はっはっはっはっは!」

「? 何がおかしい?」

「フン! こんなこともできるのだよ!」

ヴェンツェルは右側に力を入れた。

すると、切断された右腕がはえた。

再生したのだ。

「! 再生か」

「そうだ! この私の体は再生する! きさまの攻撃など無力よ!」

セリオンの表情は変わらなかった。

それがどうした? と言わんばかりである。

「はーっはっはっはっはっはっは! くらえい! ファイアストーム!」

ヴェンツェルが上方から斜めに炎を次々と巻き起こした。

氷狼牙ひょうろうが!」

セリオンは氷の刃を炎に飛ばした。

炎が次々と凍っていく。

炎は周囲を破壊しただけで、セリオンにはまったくダメージを与えられなかった。

「な、何い!?」

「どうした? 手品はこれだけか?」

「きさま! この私を侮辱するつもりか! くらえ! フレイムタックル!」

ヴェンツェルは全身に炎をまとってセリオンに突撃してきた。

セリオンは氷の刃『氷結刃ひょうけつじん』でヴェンツェルを斬りつける。

二人は交差した。

ヴェンツェルが振り返る。

「フッ、この私の方が……!?」

ヴェンツェルは首を切断された。

ヴェンツェルの首が床に落ちる。

ヴェンツェルの体もそのまま崩れ落ちた。

「さすがに、首を切断されては再生できないだろう……」

セリオンが思った通りだった。

ヴェンツェルの首はいつまでたっても再生しなかった。

ヴェンツェルは死んだ。

かくして、王宮はエリシュカのもとに奪還された。

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