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SNS活動

「はいっ。今日はですね~、フォロワーさんからオススメされていた洋画を見てみました。イギリスの恋愛映画ですね。


 1年付き合ったカップルが別れちゃうんですけど、女の子の方が辛過ぎて男性との記憶を消去しちゃうんです。そういう科学技術がある世界線なんです。手術を受ければ誰でも可能っていう。


 いや、もうね。見てて私は胸が痛くなりました。なんか、付き合ってから別れるまでの過程が凄くリアルで、お互い気持ちはあるんだけど昔のように付き合えない。何をしても倦怠感が拭えないみたいな。それが自分の過去の恋愛と重なって――」


 今日は仕事終わりにユーチューブの撮影をしている。今回はお勧め恋愛映画の紹介だ。昨晩、元彼の夢を見た影響もあるかもしれない。


 SNSでファンを増やすには、何を求められているかを分析することが重要だ。その為に自分の解析は欠かせない。


 私は女性のファンが多い。特に10~20代の若年層が8割以上を占め、残りが男性と30代以上の方という構成割合だ。


 次にその8割の子達が私に何を求めているかを分析する。私だったらモデル業がメインなので、ファッションや美容のことが主軸になると導かれる。


 あと他の仕事でも同じだろうが、人間性が重要となる。そこに魅力が無ければすぐに飽きられてしまう。私にとって強みになる人間性とは、親近感だ。モデルだけれど他の人達より親しみやすい方だと自負している。庶民系モデルとでも言うのだろうか。だから料理や恋愛、私生活についても、よく話すようにしている。


 ちゃんとカリスマ性もあるけれど、人間らしさもある。それが私の理想像だった。 


「はいっ、じゃあ最後まで観て下さってありがとうございました。これからもね、定期的に動画を配信したいと思いますので、この動画が面白いと思ったらチャンネル登録お願いします。じゃあまたね~。……。……。……よし」


 カメラを止める。口角が下がる。肩の力が抜けた。仕事モードが解除された。


 私は家ではだらしない部類だ。誰かと一緒じゃないと、仕事モードにならない。だから1人で撮影するユーチューブは毎回気を張っている。時々素が出てしまうこともあるけれど。


「ん~っと」


 私はそのまま、前回配信した動画のコメント欄に目を通す。今が頑張り時なので、極力コメントを返すようにしている。


 それにごく稀にだが、今後の動画のヒントも紛れていたりする。《まもりちゃんの何々を教えて欲しい~》とか、《此処凄い良かったよ! まもりちゃん行ったら凄く気に入ると思う!》とか。ファンの子達はコメントに返信が来たり勧めたことをしたりすると、より熱心な信者となってくれる。


 ファンの子達と私は相互関係にある。私を見て元気を貰ったと言ってくれる子が居るように、私も彼女達からパワーを貰っている。そうやって応援して愛してくれるのは一番のモチベーションだ。私は私を愛してくれる人を大切にしたい。


「結構コメント来てる」


 前回は私の好きな小説を紹介した。読書の季節だったことをふまえた動画だった。


 動画は12分。4冊紹介した。ファン層に合った物をメインにしつつ、2冊は変化球を織り交ぜた。


 1冊目は、七月 隆文さんの「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」。2冊目が、住野 よるさんの「君の膵臓をたべたい」。3冊目が相沢 沙呼さんの「medium 霊媒探偵・城塚翡翠」で、4冊目が、川上 未映子さんの「夏物語」だ。


 こんな感じで、1・2冊目が私のファンにドストライクな作品を選び、残り2つは「東條 まもり」のの幅や深みを感じさせる物を選んだ。


 動画を配信したのは、3日前だ。コメントは112件来ていた。私は1つずつそれに返信していく。


《君の膵臓をたべたい、わたしも読みました~! 2人が可愛過ぎて、切な過ぎて大号泣でしたっ! またまもりちゃんの好きな本紹介して下さい!》


《だよね~っ。一生に一度でいいからあんな恋愛してみたいよねっ。私の高校時代はあんな感じじゃなかった……》


 次のコメント。


《medium良いですね! 僕もまんまと騙されました! まもりちゃんがミステリー好きなんて意外です! 続編もお勧めですよ~》


《あ~、続編まだ読めてないっ。また今度読んでみるね。ふっふっふっ、意外な一面もあるのだよ》


 また次のコメント。


「あ」 


 と、そこでユーザー名に目がいった。《@takanashisyuntaro》。


 よく、コメントをくれる人だった。


 今日もコメントしてくれてる――。


《川上 未映子さんの「夏物語」、素晴らしいですよね。あくまでも現実的なのに、最後まで飽きさせない筆力。1人の女性の人生や思考が深く掘り下げられていて、川上 未映子先生の思慮深さや品性を感じます。勝手なお勧めとなりますが、「すべて真夜中の恋人たち」も素敵ですよ。良かったら読んでみて下さい》


――きっと年上の男性、だよね。


 最近よくコメントをくれる@takanashisyuntaroさん。文面から、他のファンよりも落ち着いた印象を受ける。


 コメントもそうだし、句読点の使い方なんかもそうだ。いつも穏やかで、私は漫画の「推しの子」の雨宮 五郎先生みたいなイメージで思い浮かべている。


 @takanashisyuntaroさんのコメントが落ち着いているので、私も同じような文体で返信する。私はこういう時子供っぽく思われたくない、とか思ってしまう面倒くさい性格なのだ。


《いつもコメントありがとうございます。川上 未映子さん、素敵ですよね。1人の女性として共感できる所が多く、一度お会いしてみたいです。「すべて真夜中の恋人たち」、また読んでみますね。これからも応援宜しくお願いします》


「こんな感じで、良いかな……」


 私は少し迷った末、送信する。他の人達よりも時間を掛けたけれど、送ってしまえば気持ちはすぐに切り替わった。


 返信しても読まれるか分かんないしね――。さ、次、次。


 1時間近く掛け、全てのコメントに返信していった。


 



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