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桜の木に背を預けて  作者: 田古 みゆう


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2/8

桜の木に背を預けて(2)

 だが、僕はこの風景を見ると憂鬱になる。僕はこの風景があまり好きではない。


 理由は、あの夢だ。


 毎年、ピンクの花びらが舞い散る季節になると、必ず同じ夢を見る。もう何度目になるだろうか。だけど、何度見ても変わらない。あの夢の結末はいつも同じだった。


 僕の伸ばした手が彼女に触れることはなく、彼女は泣き笑いのような表情を浮かべたまま。


 夢の中に出てくるあの子が誰なのか、僕には分からない。だけど、あの子が夢の中の僕にとって特別な存在なのだということは分かる。


 彼女の涙を拭うことが出来なくて悔しいという思いを抱いて目覚める度に、胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚に襲われる。それが夢に振り回されているみたいで、嫌だと思う。だから、僕は春という季節が、桜という花がいつからか好きではなくなった。


 いつの間にかホームルームは終わり、新しいクラスへ移動することになった。先生が出て行き、それに合わせて生徒達もぞろぞろと移動を始めている。


 僕も重い腰を上げ、それに倣った。階段を上がり廊下に出ると、各教室の前に張り出されている紙を見て騒ぐ生徒たちの声が聞こえてくる。


 僕は自分の名前を探すために視線を動かした。するとすぐに見つかった。二年三組。それが僕の新たな所属クラスらしい。


 さっそく教室に入り黒板に書かれた座席表を確認する。どうやら窓際の一番後ろ。端っこだ。


 席に着き、鞄を置く。他のクラスメイト達は談笑したりしている。だけど僕は、そんな気分になれず、机の上に頬杖を突いてぼんやりと窓の外を眺めていた。先ほどの教室よりも高い位置にあるため、校庭がよく見える。


 ふわりと風に乗ってピンク色の花びらが飛んできた。ひらりと目の前を通り過ぎるそれに誘われるように目線を動かすと、誰もいないはずの校庭に人影を見つけた。


 その姿をぼんやりと見ていた僕だったが、次の瞬間に僕は目を大きく見開いた。心臓が大きく跳ね上がる。


 そこには――あの子がいた。


 どくんどくんと鼓動が激しくなる。呼吸の仕方を忘れてしまったかのように息苦しくなった。だけど、目が離せない。まるで金縛りにあったように体が硬直する。


 そんな僕のことなどもちろん気づいていない彼女は、ゆっくりと桜の木に向かって歩いていく。そして、木の下に辿りつくと、立ち止まりじっとその木を見上げた。


 一体何をするつもりなのだろう?


 疑問に思い様子を見ていると、彼女は、幹に手を添えて、優しく撫で始めた。

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