第7話 みんなの旅行を満喫したら…
※この作品はフィクションであり、実際の地名、施設等とは一切関係ありません
ケイキ達は今、兵庫県、淡路島にいる。
ケイキ達は休日にどこかへ遊びに行こうという話になり、どこへ行こうかと計画を立てていた所、数ある候補の内当初は11番目くらいの優先度であった淡路島が、話しを進めていく内にコスパや移動費等、様々な要素を考慮していった結果淡路島が最適解であることに気がつき、今に至るというわけなのである
「うわー、これが淡路の景色」と、高台から広がる景色を堪能しているケイキ
チ「ここはニジゲンノモリって言って色々なアニメのアトラクションが楽しめるらしいよ」チョウコが饒舌に解説する
これに対し「へーそうなんだ」と皆が感心した
更に続けて「入園自体は無料でできて、チケット代を払えば各アトラクションを楽しめるんだって」
皆が「そうなんだね」と、別に行く予定もないのに心を弾ませている中、クッキだけは淡路島の景色を眺めて、感傷に浸っていた
懐かしいな…淡路島。と心に想いながら
ケイキ達はバスを利用して、次の目的地である伊弉諾神宮まで向かっている
淡路島には電車が通っていない為、移動は基本的にバスを使って行うことになる
近くのバス停からバスに乗り込んだ、その道中で窓から映る景色を眺めたり、早起きの疲れをとる為に眠りについたりと、移動中の楽しみは様々だ
1時間ほど費やし、伊弉諾神宮前のバス停に、バスが到着すると、バスに乗っていた多くの参拝客や、それ以外にこの近くに用事のある人たちがゾロゾロとバスから降りていった
もちろんケイキ達もその中の1人で、人がかりが落ち着いてからゆっくりバスを降り、2分ほど歩いた先で待っている目的地を楽しみにしながら、意気揚々と足を運んでいく
そして遂に、ケイキ達は伊弉諾神宮に辿り着いた
ショコラが一息つくように「やっとついた〜」とこぼす
ケ「あれ?大丈夫ショコラちゃん?まだあんまり歩いてはいないよ」
シ「そ…そうかもしれないけど、普段あまり家出ない人からすれば…バスに長時間拘束されるっていうのは、なぜだが疲れるものなの…」
ショコラとしては、ただ現状を説明したに過ぎないのだが、普段からどちらかといえばアウトドアで、これくらいのことではあまり疲れを感じないケイキからすれば、今のショコラの説明が少し愚痴とも聞こえた
ケ「もしかしてショコラちゃん…来たくなかった…?」
シ「うんうん、そんなことないよ、とっても楽しみにしてた…」
と必死に否定するショコラ
ケ「そっか♪なら良かった、無理はしなくていいからね♪」
ショコラからしてみれば本当は、楽しみにしてたが半分、行きたくなかったが半分なのだが
ケイキ達は伊弉諾神宮に足を運んでゆく、伊弉諾神宮は大きな鳥居をくぐった先にある石畳みのまっすぐな道を進んだ先に社殿が聳え立っており、当初ケイキ達が想像していたものよりは質素な印象を受ける
だがよく見てみるとそんなことはなく、本殿は思っていた以上に大きく細部まで作り込まれており、門の近くにある池も、滲むような緑色が池全体を覆ったような、これこそ和と言える姿をしており、見ているとなぜだが心が落ち着いていくのを感じた
チ「あの池は放生の神地っていって、昔は鳥や魚をあの池に放して命がいつまでも終わりませんようにって祈ってたらしいよ」
とチョウコが説明する
ケ「そうなんだねー」とケイキは感心しつつもあまり興味のない様子で、その先にある本殿へと進んだ
しばらく歩いてゆくと、遠くから見えていた本殿がようやく見えてきた。近くで見ると、外見だけでなく中見もこだわり抜かれていることに気がつき、芸術の事は分からないケイキ達からしてみても「これは普通にすごい」と感心しその景観に圧倒されている
ケイキが思わず「すごい」と呟くほどに
それに対しクリミが付け加えるように「まるで将棋ね」と至って真面目な顔で呟いた
ケイキ達にはその言葉は聞こえてはいなかったが、唯一耳に入ったショコラは何か恐ろしい話を聞いたような表情をしながら必死に笑いを堪えていた
チ「伊弉諾神宮は日本を作ったとされる神様、伊弉諾と伊奘冉が、日本を作り終えた後1番最初に作ったこの淡路島で休む為に建てられた、最古の神社って言われてるよ」と伊弉諾神宮のルーツについて説明してくれた
ケ「へ〜、って、じゃあこの淡路島が1番最初に作られた場所なの?」
と質問すると 「神話だとそうらしいよ」と答えてあげた
ケ「へ〜、チョウちゃん詳しいんだね!」
ケイキがキラキラした目で褒めている
チョウコは照れ臭そうに顔を赤らめているが、心の中ではそんなことはなくむしろ「計画どうり」と新世界の神になることを目指す男のようにニヤついていた
4人でお金を払い、現地のいろいろなものをみて観光する…だが観光資源というものにはそれが出来上がるまでの何かしらの歴史が存在するものであり、これを流れるように説明していくことでケイキに自分に対して物知りという個性を植え付けることができるのではないかとチョウコは考えた、もしこの作戦が成功すれば、ただの友達から『物知りという個性のついた友達』に昇格することができる!このように少しずつ新しい個性をケイキに植え付けていけば、いずれ自分のことをイセイとして認識してくれるのではないかとチョウコは考えた
そう…これはチョウコにとってはただの観光ではない、将来的にケイキを落とすための布石となる、重大な試練なのだ!!!
チョウコがぺらぺらと説明を続ける中、クッキはそれ聞いてチョウコ達には聞こえないように気をつけながら少し小馬鹿にするように苦笑いをしていた
伊弉諾神宮をひと通り見て回り終えたので、チョウコ達は次の目的地に向かおうと先ほどのバス停に足を運ぼうとしたが、ケイキが「お腹空いてきちゃったな…そうだ♪そろそろお昼にしない?」と提案してきたので、チョウコ達もそれに賛成し、近くにある飲食店に向かうことになった
飲食店に達着し、そこで…
ケイキは3番目に人気のスープを、チョウコは1番人気のシチューを、ショコラは2番目に人気の野菜が盛り付けられたハンバーグを、クリミは野菜が多く盛り付けられたハンバーガーと中辛のカレーライスを、それぞれ注文した
どうして中辛なのかをチョウコが尋ねると、どうやら一度カレールーを避けて白ごはんだけを食べ、カレールーだけになった後で、残ったカレールーを全てハンバーガーの野菜が詰め込まれている部分に重ねて詰め込み、『カレー&野菜味のハンバーガー』を作ることが目的だという
なぜライス抜きにせずわざわざライスも注文するのかというと、その方が作業感が出て面白いからとの事
ふと、ケイキは食べ物に連想されてあることが急に頭に出てきた
ケ「淡路島って玉ねぎでも有名なんだよね?」
何気ない質問だが、チョウコにとってはまたとないチャンス、もちろんその事も予習済みであり、チョウコは待ってましたとばかりにそのことをみんなに説明した
チ「そうだねー、淡路の玉ねぎは他のと違って、甘いっていうのが特徴なんだよ。淡路島の土壌にはね、海のミネラル成分が多く含まれていて、それが淡路産特有の甘みを引き出しているみたい、しかもその上で気候も丁度いいらしいよ、玉ねぎって大体15度〜20度くらいが丁度いいって言われてるんだけど、淡路島はその気温に絶妙に噛み合ってるみたいだよ。だから淡路の玉ねぎは甘くておいしいって言われてるのさ」
得意げに説明した、チョウコはこれでかなりのポイントを稼げただろうと、意気揚々にケイキの方を振り向く
しかし実際は、確かに面白そうに話しを聞いていたが、それはチョウコというよりはあくまで『チョウコの話した雑学』そのものにであり
ケ「へ〜そうなんだね〜、チョウコちゃんってホントに詳しいね♪」
と、これ以上には以前発展しておらず、チョウコが今回目指した『物知りな友達』というキャラ付けは残念ながらできなかった
チョウコはそれを知るや否や、頼んでいたドリンクを勢いよく飲み漁った
その様子を見て、事情をしるショコラは苦笑いをし、そんなことは知らないクリミには今の雑学で「旅先で便利な女」というイメージを与えてしまったのであった
昼食を食べ終え、ケイキ達は次の目的地に向け先程とは別のバスに乗り込んでいる
昼食を食べ終えた直後だからか、ケイキを除く人間組はスヤスヤとバス席で気持ちよさそうに眠っており、まだ起きてはいるものの、ケイキも眠たいという理性が顔に出ていた
「ケイキちゃんももう寝たら?」とクッキが促すとケイキは眠たそうな声で
ケ「うん…そうだね、クッキは眠くないの?」と質問すると
ク「僕はしょっちゅう寝てるから♪」と何故か誇らしげに話す
それに対しケイキは「嗚呼…ニートムーブニートムーブ…」と呟きながら眠りについた
クッキは「猫にニートって言われても」と内心思いながらクッキも続くように眠った
バスが目的となる場所に動きを止め、ケイキ達はバスから降りてまたしばらく歩き、その先に待つ目的地、[モンキーセンター]にやってきた
モンキーセンターは山から降りてこの広場に集まってきたサル達と自由に触れ合うことのできる施設である
その看板通り、辺りをすこし見渡せば何匹もの野生のサルがこの広場を埋めていた
ケ「すごい、こんなにいるなんて正直思ってなかった…」
ク「そうだね…ここいいよ」
ケイキ達はしばらく休憩も兼ねてこの広場にしばらく止まる予定である、ケイキが早速サル達と遊ぼうと何匹かのグループに近づいていく
ここのサル達には自由に餌をあげてもいいことになっているため、ケイキは早速自分に集まってきたサル達にエサをあげてみた
サル達が嬉しそうにエサを食べている姿を見てほっこりと笑顔をこぼすケイキ
ケ「たくさんお食べ」
その裏で、クリミが生のひき肉を詰め込んだビニール袋を取り出していた
近くにいたクッキが「なにそれ」と聞くとクリミは「ひき肉です」と今度は笑顔で返答する
クッ「いやなんでひき肉…まさかそれをエサにあげる気じゃないだろうね」
クリ「流石のわたしもそんな事はしないわよ、ただ流行りに乗ってみただけ、知らないの?今世間ではひき肉ブームなのよ、流行に乗り遅れるようじゃ、貴方もまだまだね」
クッ「いや僕猫なんだけど」
その話しを聞いてクリミの隣まで近づいたショコラがボソッと小さな声で補足するように話しかける
シ「一応聞いとくけど…ひき肉って食べ物のひき肉じゃない事くらい分かってるわよね…?」
それを聞くや否や 「え!?」とまんざらでもなさそうなリアクションをした
ク「と、当然よ、ししししし知らないわけないじゃない」
露骨に場を誤魔化そうとしているクリミを嘲笑するかのように、ひき肉入りの袋を1匹のサルが一瞬の内に奪い去ってどこかへ消えて行った
それに気づいた瞬間「あ、こら!逃げるな卑怯者ーー」と、クリミの方が逃げるようにサルを追って行った
クリミはかつてないほどのスピードで走ってサルを追い抜き、待ち伏せるようにサルの目の前に立ちはだかる
ク「わたしの戦闘力は53万よ、覚悟しなさい」
サルとクリミの、ひき肉を掛けた無謀な争いが始まった
戦いで土ごもりが巻き上げられ、両者の様子を外から見ることはできない
しばらくして、クリミが勇ましく両目を閉じ、歩幅も大きく、まるで歴戦の勇者かのような立ち振る舞いでゆっくりとショコラ達の元に戻ってきた
「どうだったの」とクッキが聞くとクリミはその途端地べたに手をついて座り込み「なんの成果も、得られませんでしたーーーーーーーーーーー」と泣き叫んだ
「ダメだったんだね」とクッキが肉球でクリミの肩をポンポンと優しく叩く
ショコラは想った、一体これはなんの時間なのかと
モンキーセンターをひと通り満喫し、そろそろ次の目的地に向かおうと話し合っている
クリミが「次は沼島よ〜、ここから少ししたら船に乗っていけるから行きましょう〜」
と提案してきた
当然淡路島に来ると決まった時から決めていたことであったので、皆が気前よく賛成したのだが、ケイキが突然「興味ないね」と言ってそっぽをむき出した
これにはショコラも含めた全員が「なんでやねん!?」とツッコンだ
ケ「だって…よく考えたら船乗るってことは海に近づくって事でしょ?いや、やっぱり無理」
チョウコ達は、よく見るとケイキの身体がひどく震えていることに気づく
驚きつつも冷静にケイキに「え?どうして?前まで海好きだったじゃん…」ときくチョウコ
ケ「そ、そうよ、そのはずなんだけど、何故か最近…海のことについて考えるだけで震えが止まらなくて…怖いとも、なんか違う…なんだか、死ににいくような感じになるの…」
それを聞き、しばらく黙り込んでいた3人と1匹であったが、しばらく間を置いた後クッキが一歩だけ前へ出て「…無理に連れて行くことなんて出来ないよ…港でまっtt…」
ケ「でも!今更…迷惑はかけられないよ、大丈夫、私もいく、ごめんね」
チ「そんな…迷惑だなんて、無理しなくて大丈夫だよ…」
ケ「大丈夫だから…本当に…」
本人の希望もあり、ケイキも船に乗せ、一緒に沼島に向かうことにした
船が汽笛を上げ、沼島へ向け海を渡り出す
チョウコ達は一応、ひとまず近くで買ってきた毛布でケイキの身体を包んで視界を遮ることで、波打つ海を見させないよう応急処置を施しておいた
船に乗ってますます悪化している身体の震えを少しでも和らげようという意味も含まれている
だがケイキの震えは治ることなく、むしろ時間が経つ度に悪化していっている
心配しながらケイキを見つめるチョウコ、ケイキの近くで寄り添うクッキ…皆がケイキが心配で仕方がなかった、少し前までは海に行くのが好きで、たまに連れ回されたりもしたあのケイキが、突然海にここまでの恐怖心を感じている原因が何も分からないからだ
心配と不安を抱えたまま、チョウコは自分自身も少し落ち着こうと一度ケイキから離れて海の方を眺めるため甲板へと歩いた
しばらくするとついてきたようにショコラも甲板にやってきて、自分の隣で海を眺め始めた
2人でしばらく海を眺めていると、ショコラが突然「た…心配だよね、ケイキちゃん…特にチョウコちゃんは…」
と話しかけてきたので、チョウコは言葉を詰まらせるように「そうだね」と返した
またしばらく間が空いて、チョウコは突然このようなことをショコラに語り始めた
「ボクね、ケイキとは小学校の頃から、友達なんだ。昔から…いや、あの時は今以上にボク達の仲は良くって、学校が終わって家へ帰って、どちらかの家で遊んだりするのが、それを毎日楽しみにしてた。でもね、小学校を卒業したら辺から、お互いちょっとだけ心境が変わったのかな…仲良しであっても、前と比べるとちょっと、いつの間にか若干距離を置くようになってて、そう…本当にいつの間にか、あまりにも自然な流れすぎて、ボクはその事に気づかなかったし、ケイキちゃんは今も気付いていないと思う、だけど、ボクはそのことに、ある時ふと気がついたんだ、ボクは拒んだよ、現状をね。だけどなにをやっても前のような距離感に戻ることはなかった、今だってそう…今ではもう仕方がないなって受け入れてるけど、当時のボクにはそれがすごく嫌で、気づくたびに元に戻そうとした、その度にケイキちゃんのことを頭の中で必死に考えて、考えてるうちに、昔でも気づかなかったケイキちゃんの一面が見えてきて…気付いた時にはただの友情でしかなかったこの気持ちが、いつの間にか恋に変わってた」
ショコラはこの話しに聞き入ってしまい、言葉が出せないでいる
するとチョウコが急に人差し指を口につけて「ケイキちゃんには内緒だよ」と補足した
「いわないよ」と答えた後に、ショコラもケイキについての気持ちを共有しようと話し始める
「私も…今までずっと…1人だった、うまく人と話せなくて…周囲の誰とも馴染めなくて…えと、ずっと1人だったの。高校生になってもそれは変わらなくて、このまま誰とも仲良くなれずに高校終わるんだろうなって、そう諦めてた…だけどあの日、ケイキちゃんは私に声をかけてくれた、コミュ障で優柔不断で気持ち悪くてなに考えてるのか分からない、社交性のかけらもないようなこんな私に。生まれて初めてのまともな友達ができたの。だから…その、えっと、嬉しかった…本当に、だから、チョウコちゃんの気持ち、ちょっとだけ…分かるよ」
楽しそうにケイキについて語るショコラ、その表情を見て、チョウコは何故だか嬉しくなっていく
チ「うん、そうだね、ケイキちゃんは本当にいい、笑顔も可愛いしね」チョウコがそう言った途端にショコラも「そうそれ」と反射的にいつもより一回り大きい声で頷いた、チョウコはそれに驚きつつも微笑みを浮かべる
チ「けど、そんなボク達だからこそ分かる、あのケイキちゃんが、海を思い浮かべるだけで怯えるなんてあり得ない」シ「大丈夫かな…」
沼島が遠くからはっきり見えてきた、だがケイキの震えは尚も治らないでいる
クリミはそんなケイキを見かねたのか「見てケイキちゃん」と、ケイキに自分の方を見るよう促す
言われた通りにケイキはクリミの方を見てみると、クリミが見慣れないハンカチを見せびらしていた
「なにそれ」とケイキが聞くと、クリミは「これは特別なハンカチなの、結構面白くて着くまで気を紛らわせられると思うわ」と答えた
クリミのことだからまたろくなものじゃないのではないかと内心疑いながらも、「へぇどんな?」と震えを抑えて聞いてみた
「ふふふ、それはね」とクリミが言い終わる前に足元を滑らせて転けそうになり、その勢いでハンカチがタオルのように伸び、ハンカチの先が海についた、だがクリミがもう一方の端を掴んでいたおかげで海に落ちずにはすんだ
だがケイキとクッキはそれ以上におおよそハンカチとは思えないほど面積が縦に伸びていることに驚いていた
クリ「ふふ、なんちゃって、これ、タオル型のゴムなの、だから自由に伸び縮みさせることができるの、どう?意味不明で面白いでしょう?」
あまりのつまらなさに、ケイキは身体の震えを忘れて思わず笑ってしまった
クッキもそれに釣られて笑う、クリミもケイキの気を少しは和ませられたとしって嬉しくなり、こちらも思わず笑ってしまった
2人と1匹の笑い声が、船が動く音に紛れてこだましている
ケ「ありがとうクリミちゃん、ちょっと楽になったかも」
クリ「そう?それはよかったわ」
しばらくして、船は沼島にたどり着いた
沼島に到着し、チョウコ達は、これ以上ケイキに負担をかけさすまいと急いで船を降りた
船を降りてしばらくは、ケイキは座り込みながら息切れのような激しい息づかいをしていたが2分ほどで症状も治っていった
ケイキも含め皆が安堵の息をする
ケ「ごめんねみんな…心配かけて」
チ「そんな迷惑なんて、ボク達も、ケイキちゃんと回りたいんだよ」
チョウコの言葉に、他のみんなも頷いてゆく
ケイキはありがとうと思った。
みんながそう言ってくれるおかげで、船に乗る前から感じていた後ろめたさが少しだけなくなった
震えてまで船に乗りたいと言ったのは、みんなとの旅行を滞りなく楽しみたいという自分のわがままであったからだ
「ありがとう」とみんなに伝えた、そしたらみんなは何事もなかったかのように「じゃあ、気を取り直して沼島を楽しもう」と言ってくれた
それが嬉しかったから、ケイキはいつの間にか笑っていた
本当に気を取り直して、ケイキ達は沼島の観光を始めた
歩いてしばらくしたところにあるおのころ神社へと続く階段を登っていて登りながらチョウコが沼島について説明を始めた
「伊弉諾と伊奘冉が最初に作った島が、淡路島ってさっき言ったでしょ?けど島を作るにもそのために足場が必要だよね、まさか某忍者漫画みたいに水の上を立つわけにもいかないし…そこで、支えとなる足場となる島を最初に作ったんだ、その島がどこなのかはいろいろと諸説あるけど、一説ではここ、沼島なんじゃないって言われてるんだよ」との事だった
ケイキは相変わらずそうなんだという表情で感心しているだけだったが、こちらもやはりクリミには「やっぱりこういう奴いると面白い、本当に便利な女」と心の中で確信されてしまった
階段を登り、ケイキ達はおのころ神社に到着した
チ「ふぁ〜、やっと着いた〜」と各々肩を軽くさせる
奥の方に小さく質素な本殿が1つポツンと安置されていた
この場にいる全員が「え?これだけ?」と思ってしまった
苦労の末にたどり着いたとは到底思えないほどに質素な作りに、困惑と呆れが同時に降りかかった
しかしクッキだけはそうは思っておらず、小さなお賽銭箱の上についこの間までなにかあったのが、最近何者かに引き抜かれた跡のようなものが見え、そちらの方へ興味が吸われていったからである
クッキが賽銭箱に近づこうと歩き出した途端、後ろからいきなりケイキに呼び止められた
「どうしたの」と振り返るクッキ
ケイキはボソッと小さな声で「克服したい」と呟いた
クッキはなにを言っていたのか聞き取れてはいたが、聞こえなかったふりをしてもう一度聞き返してみた
するとケイキは先ほどよりも大きな声で「私…克服したいの…海の恐怖から!なんで急にこうなっちゃったのか分からないけど、このままじゃ私一生迷惑をかけることになる。そんなの…嫌、私、克服したい!海を、また、前みたいにみんなと、海を見られるようになりたいの!」と言った
それを聞き、クッキは一瞬躊躇ったがすぐに一呼吸終えた後「ついてきて」と案内して草むらの中へと消えていった、ケイキもそれを追いかけてゆく
草むらを越えた先には傾斜面が続いていて、クッキはそこを真っ直ぐ進んでいっている
ケイキもそれを追いかけて真っ直ぐ進む
やがて道が平らになってきて、少しすると辺りにいくつも生い茂っていた木々たちが見えなくなり、気づくと海を見渡すことのできる崖に着いていた
崖のすぐ下には、先の尖った岩がいくつも並んでいる
先に着いていたクッキが崖の端でケイキを待っていた
「クッキ…ここは」と聞いてみた
海が目に映ってケイキの身体は僅かに震えてはいたが、船上ですぐ近くに海があるという状況を経験した後だからか、目に見えるほど大きく震えてはいないようだ
ク「ケイキちゃん、ちょっとだけ、僕の話しをしていいかな?」と尋ねる
ク「僕はね、ここ淡路島で生まれたんだ、ずっと前だけどね。だから、ここ来るってなった時、久しぶりに帰りたいってなって、反対できなかった…今の君が海を見たらどうなるか…分かっていたのに」
ケイキは最後の一言が引っ掛かった、海に対し恐怖心が出てきたのはここ最近の話であり、今日まで誰にも言ってなかったはずだからだ
どうしてそのことを知っていたのかを聞こうとしたが、言い終わる前にクッキが頭を下げて「ごめんなさい」と何度も謝罪をする
それを見て、ケイキは追求するのをやめた、そのことも含めての謝罪に感じたからだ
ケ「大丈夫だよ、気にしてない、むしろこっちが迷惑かけてごめんね…だけど、1つ聞いてもいい?」
それと同時に、1つの疑問がケイキに生まれた
「どうして貴方はそんなに…悲しそうなの?」
それを聞いたと同時に、突然足元の岸が全て崩れ落ち、ケイキ達は真下に向かって落下していった
クッキは全てを諦めたかのような顔をして、落下しながらゆっくりと同じく落下しているケイキの方を振り向く
ケイキの落下した先に、辺りを見る限り最も先の尖っている岩が待っていた
それを知った途端、さらに青ざめた顔をクッキは浮かべる
ケイキもまたなにもすることができず、落下の先にあった岩の先に腹部が突き刺さって死亡した
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また死んだ…おかしいね、死ぬなんて人生で一度きりなんだから、またなんて普通あり得ない
けど、この感覚は間違いなく、また…
そうか、思い出した、私…死んだんだ
気がつくと私は僅かな光も届かない海の底で、仰向けになって倒れていた
そう、ここは私の死んだ場所
本当にこの通りに淡路島を観光するなら結構バス代喰われると思うんですけどね…
ケイキ達がどこ住みかは分かりませんがどうやってそもそも淡路島に来たのでしょうか?
まぁこれフィクションなので、現実世界とは地形が異なってる可能性はありますけどね
ということで次回、最終回です