第5話 不思議な猫ちゃんを拾ったら…
ここは、ケイキの自宅の2階、ケイキの部屋だ
この部屋でケイキは高校からの課題がめんどくさくなって机に座り込み、クッキもベットでくつろいでゴロゴロしている
ケ「あんまりゴロゴロしないでね、ベット汚れちゃうから」
ク「てへへ、ごめん」
クッキはベットから飛び降りた、その後ケイキの近くまで近づいて、ぴょんとケイキが座る机に飛び乗って窓を見ながらケイキに話しかける
ク「天気のいい日だね〜」
ケ「そういえば、クッキと私が出逢った日も、こんな風にすごく晴れてたね」
ク「どうしたの?急に、ベタベタな導入だね」
ケ「えへへ、作者がこれしか思いつかなかったんだってさ」
2ヶ月前、ケイキが何気なく通りを歩いていると、傷だらけで倒れている1匹の猫を発見した、これがケイキとクッキの出会いである
ケイキはすぐに怪我をした猫を自身の部屋に連れて行き、看病してあげた
まもなくして、猫は目を覚ました ケ「あ、気がついた?」だがその猫は目を覚ますと同時に、勢いよく後ろの机に飛び乗ってケイキを威嚇した
ケ「ちょ、まだ動いちゃ駄目だよ」
猫はケイキを警戒しながら、自身がこの後どう立ち回るかを模索している
ク「(こいつ、僕を普通の猫だと思って助けたか…まぁいい、ここで僕が取れる選択肢は2つ、このまま普通の猫の振りをしてやり過ごすか、それとも喋って驚かせてから逃げ出すか、どうするか…)」
猫は威嚇を続けながらどちらを取るのが好都合であるかを考える、その時猫は、かつて存在した2つの自分の姿を思い出し…
猫「気安く僕に話しかけるな、人間」言葉を話して驚かせる方を選択した
ケ「え!?喋った!??」
ケイキは当然ながら驚いている、だがもちろんこれは猫の想定内だ、なぜならこうやってケイキが驚けば猫への警戒心が生まれ近寄らなくなる、そうなれば簡単にこの場をやり過ごせるようになるからである
だがケイキの反応は以外なものであった
ケ「すごぉぅーーい、貴方言葉喋れるの!?」
猫「は?」
ケ「えー、すごい凄い、夢見た〜い」ケイキが無神経にも近寄ってきた
猫「!触るな!!!」
ケイキは突然怒鳴られて驚き少し後ろに下がったが、その後も猫との会話を続けようとする
ケ「あ、ごめんね、びっくりするよね…その怪我、結構ひどいからあんまり動かない方がいいよ、なんか火傷みたいなのもしてたし」
猫「君に心配される筋合いはない!気安く僕に近寄るなよ、僕は君なんかと関わる気は…」猫は言い終わる前に全身の傷の痛みで倒れ込んでしまった
ケ「!大丈夫!?」ケイキは猫を介抱する為歩み寄ろうとした
猫「近寄るなって言ってるだろ!」
猫はこの状態でもケイキを威嚇し、自身に近づけようとはしない、だがケイキは怖がることはなく、むしろ積極的に猫に近づき猫を抱き抱えた
猫「ちょっと、やめろって言ってるだろ!」
ケ「ダメ、言ったでしょ、貴方怪我してる、小さい頃、貴方くらいの猫飼ってたことあるからいろいろ分かるの、だから安心して、絶対その怪我治して見せるから!」
ケイキは猫を抱き抱えながらすぐ後ろにあるクッションに連れて行き、そこでこの猫の看板を続けた
しかし猫は乗り気ではなかった
猫「(あぁ、このタイプか…いつの時代もいるんだろうね、こういう人間、けど、こういうのは正体がわからない分不気味だ、隙を見て逃げないと)」
約1時間後、ケイキはひと通りの看病を終えた
ケ「ひと通り終わったけど、まだあまり動いちゃダメだよ、しばらくは安静にしててね」
猫「ふん」猫はすっかりそっぽを向いて寝そべっている、その姿を見て、ケイキは素直に可愛いと感じた
しばらくするとケイキは立ち上がって ケ「ご飯買ってくるね、大人しくしてるんだよー」
そういって部屋から出ていった
ク「(ご苦労な事だね)」
1時間後、ケイキが部屋に戻ってきた
ケ「はいご飯、食べられる?」
そういうとケイキは買ってきたばかりのキャットフードを取り出した
しかし猫はまさか本当に食べ物を買ってくるとは思っていなかったので
猫「え?いや、別になんでも食べられるけど、…、買ってきてもらって悪いけど今気分じゃないから、だから…」
猫はそう言おうとしたのだが、ケイキを見た瞬間になんとなく「なにを言っても自分はこのキャットフードを食べさせられる」と本能で察知し
猫「いや、いいよ、食べる」
何かを言うだけ無駄だと判断した猫は、以外にも猫らしく無心にキャットフードを食べ始めた
ケ「ふふ、よく食べるねー、ねぇ、1つ聞いてもいい?貴方は…どうして言葉を話せるの?」
猫「!」猫の脳裏にある少女の姿が浮かぶ
猫「…、どうだっていいだろそんな事」
ケ「そっか」以外にもあっさり聞くのを諦めた 猫「…」
この日の夜、ケイキは猫を自分の寝るベットに横にさせて、一緒に寝ることにした
猫は恐ろしく治癒力が高く、この時点でほとんどの傷は治っていた
ケ「それにしてもほんと貴方可愛いね」
眠りにつく前にこの猫とお話ししようと試みているが、猫はそっぽを向いてケイキを無視するように寝たふりをしている
ケ「でも喋る猫なんて珍しいよね、そうだ、明日皆んなにも見せてあげよ♪」
今の独り言を聞いて、猫は少し反応したようだ
猫「それで僕を見せ物にするきかい?」
ケ「あ♪話しかけてくれた!」
猫はケイキが少しうざいと思い「ちっ」と舌打ちした
ケ「そうねぇ〜、半分正解かな、皆んなに見せてやりたいし、貴方とも仲良くなりたいし」
猫「仲良く?」
ケ「うん、私ね、貴方さえ良ければこれからも一緒に暮らしたいなって思ってるから、でも…貴方は私の事、嫌いなんだよね、」
猫「その通りだ、君と暮らすなんてごめんだね」
翌日、ケイキは猫を連れてクリミの家へ遊びに行った、他のいつものメンバーも誘って、理由はもちろん、言葉を喋る猫を皆んなに見せびらかすためだ
クリミの部屋は少し大きく、勉強机やベットの他、部屋の真ん中に木製の艶がよく反射してる木製の丸椅子が置かれており、そこに猫を乗せ、やがていつメンが全員部屋にやってくると、ケイキは大声で喋る猫を自慢した
ケ「どう!この猫、言葉を話すんだよ!!!」
猫「…、どうも」
猫も素っ気ない態度で応答した
チ「す…すごぉ〜い、え?なんで喋ってるの?どうしてどうして?」
シ「こ…こんなの、本当にいるんだ///」
チョウコはもちろん、ショコラも珍しく興奮している、すっかりこの猫に夢中である
ケ「えへへ、好きなだけ見ていいよ」
チョウコは言われるがままに猫をしつこく見つめ倒して質問攻めをしている
チ「ねぇ君、なんで喋れるの?なんて名前なの?ケイキとはどこで出逢ったの?」
猫「あんまりジロジロ観ないでよ」
シ「すごいなぁ、本当」
皆が興奮してこの猫に幾度となく視線を送ったいる、だがクリミだけは皆とは違い興奮して猫に話しかけたりはせず、寧ろその場に立ったまま冷静に観察するように猫を見つめていた、そして何を思ったのか、一度自分の部屋から出ていき、しばらくしてからお湯の入ったポットを持って部屋に戻ってきた、そしてそのポットを持ちながら猫に近づいていき、突然猫に向けてお湯を流し始めた
当然猫は嫌がって近くの勉強机に飛び移って避難する羽目になった
クリミは何かを凄く納得したかのような顔をしている
だが当然、ケイキ達はクリミの今の行いに対して叱りつけた
ケ「ちょっとクリミちゃん!突然どうしたの!?」
チ「いきなりお湯をかけるなんて、猫ちゃんに謝りなよ!」
シ「そ、そうだよ」
ク「ご、ごめんなさい、いや、喋る猫なんて信じないわけじゃないんだけど…なんか警戒しちゃって、見たところミヌエットぽかったけど本当に猫なのかなって、だからその…試しにお湯をかけてみたの、ほら、ケイキちゃんは分かるでしょ?猫ちゃんってお湯が嫌いなのよ、体温を奪われたくないから、だからかけたらどんな反応するのかを試してみたら案外普通の猫ちゃんの反応をして、その…なんか安心したわ」
この部屋中にしらかた空気が漂っている
ク「その…本当にごめんなさい!」クリミは頭を下げて謝った
ケイキは勢いよく猫の方を見る
ケ「ごめんね、クリミちゃん…悪い子じゃないんだけどちょっとおかしな所が」
ク「本当にごめんなさい、猫ちゃん…」
しかし、この猫にとってクリミの謝罪などどうでも良かった
彼女が自分にお湯をかけてきた、その事実だけで充分に猫の怒りの金銭に触れているからだ
猫「お前…何がしたいんだ!?突然お湯なんてかけやがって」
ケ「お、落ち着いて」
とにかく猫を落ち着かせようとするケイキに、猫は激しく反発する
猫「君だってそうだ!怪我を治してくれた事には感謝するけど、僕を勝手に見せ物にしたあげく一方的にペットにしようとしている事には変わりはない!」
ケ「そんな…一方的だなんて」とケイキは自信を少しでも擁護しようとするが猫は聞く耳を持たない
猫「いいやそうだ!お前たちは僕をなんだと思ってる、僕は都合の良い道具じゃないんだよ!!!」
猫はケイキ達を一蹴した、チョウコ達はその迫力と言葉の裏にある訴えのようなものを感じ取ったのか、言葉を返せずにいた
ケイキもそれは概ね同じなのだがケイキは猫の言った言葉をできる限り全て受け止めた上で猫に優しく語りかけた
ケ「そっか…やっぱり貴方は、私たちの事、嫌いなんだね」
猫はすんなりと「当然だ」と答えた
ケ「そっか…じゃあ無理にとは言わない、嫌なら嫌って言って。でも、私の言いたいことだけ言わせてね」
猫は何を言われるのかなんとなく分かっていた、だが土足で自分に近づいてくる彼女達を一蹴するためにわざと「何?」と分からないふりをして聞いてみた
ケ「私ね、昨日も言ったけど貴方さえ良ければ一緒に暮らしたいなって思ってるの、朝起きた時も学校から帰ってきた時もみんなと遊びに行く時も、いつでも貴方と一緒になることができるようになりたいの。
後、さっき貴方は自分を見せ物にしてるって言ったよね…ごめん、実はそうなの♪」ケイキは両手のひらを顔の近くで揃える仕草をとった
前者の内容については、猫にとっては予想通りだった、だが後者については予想外の言葉だった、自分を見せ物にしていると自覚した上で、その事を自分に告白するだろうなどとは少しも考えていなかったのだ
困惑を顔に隠しきれない猫を他所にケイキは話を続ける
ケ「だって喋る猫だなんて普通いないんだもん!見せびらかしたくなるよ♪でも、そうだよね…許可もなしに勝手にそんなことされたら嫌だよね、ごめんなさい…けどね、私はそんな所も含めて好きなんだよ」純粋な笑顔のままに続ける
ケ「言葉が話せるならずぅ〜とお喋りしていたいし、今よりもっと楽しい毎日が待ってるって確信してるし。実はね、昔飼ってた猫ちゃんが死んじゃった時、本当に悲しくてこんな想いするくらいなら2度とペットなんて飼わないって思ってたの…けど貴方を一目見てそんな考えなんてすっかり消えちゃった、道端で倒れてる貴方を見たその時から、私は貴方と一緒に暮らしたいって思ったの!ペットじゃなくて、友達として!!!」始めは「私は貴方と暮らしたいんだよ」と一言いって終わるはずだったケイキなのだが、話しているうちに抑えが効かなくなってしまい、いつの間にかもはやプロポーズともとれるアプローチを繰り返していた
猫はこの時点で正直驚いていた、自分を野良猫としてもペットでもなく、友達として接しようとする人間がイマにいた事に。既に猫はこの少女に、少なくとも興味は抱いていた、目の前の少女の純粋な優しさに気づこうともしていた
だが過去に経験した出来事がそれを邪魔する
猫「そんなこと言ったって…どうせ君はいずれ僕を見限るんだろ!!!」
かつてない程大きな声で言った
猫「君だって結局は同じだ!どれだけ大切にしたとしても!どれだけ愛情を持っていたとしても!いつかは都合が悪くなって僕という存在を切り離すんだ!信じられるか!!!」
猫は切羽詰まったかのようにケイキ達を睨みつけている、しかしそれでもケイキは猫に優しく語りかけた
ケ「心配しなくても大丈夫だよ、私は貴方を切り離したりなんかしない」
猫「今はそのつもりだとしても!いつか君にとって僕は邪魔になる!絶対にだ!」
ケイキは少し考え込んだ後、ゆっくり猫の近くに歩み寄っていく、姿勢を低くして猫と同じ目線に立ってこういった
ケ「やっぱりいくら考えても思いつかないわ、私が貴方を捨てる理由が。分かるよ、何となく。貴方に昔なにかあって、それで本気で私たちを拒絶してるんだよね?違ってたらごめんなさい。けど貴方が本気なように、私も本気だから、私は本気で貴方と一緒に暮らしたいと思ってる。だから…」
ケイキは猫にそっと手を差し伸べる
ケ「諦めないよ、そう簡単には」
その優しさと私欲が混ざりあったような表情が、猫を徐々に苛立たせた
その苛立ちを打ち消す為に猫はケイキの右手の手のひらを引っ掻いて勉強机から飛び降り、少しだけ歩いた後ケイキの方を振り向いた
引っ掻かれて「痛っ」と痛がるケイキと、「大丈夫!?」と心配してケイキに近づこうとするチョウコ達、しかしケイキは「大丈夫」と皆が自分に集まってくるのをやめさせて、心配そうに猫の方を見た
引っ掻いても尚表情を変えないケイキにを見て、興味が徐々に忌々しさに変わっていく
猫「じゃあ、今から僕が君を殺すって言ったら、君はどうするんだい」
試しにそう言ってみた、案の定チョウコ達は猫に対して警戒を強めた
ケ「えぇ〜、それはやだよ、だってまだ死にたくないし、でも、もし貴方が誰かに殺されそうになったとしたら、私は命を懸けてでも貴方を守るわ」
猫は今のケイキの回答がきっかけで、段々と自分がどうしたいのか分からなくなってきていた、自信が経験した変えられない過去と、今目の前にある嘘偽りのない純白な優しさを認め始めてきた自分
猫「なんなんだ…君は僕でどうしたいんだよ!!!」
ケ「だからさっきから言ってるでしょ、私は貴方と一緒に暮らしたいの」猫「!?」
本当に裏表のない声でそう言った、猫は先程まであれほど感じていた忌々しささえも今やほとんど消え去り、あるのは困惑の感情だけと言っても過言ではなかった、このケイキという人間についてもそうだが、それ以上に自分自信についてである、たった1人の人間にここまで自分の心を揺さぶられることなどこれまで経験したことがなかったことだからだ
猫「どうなるんだよ、僕と一緒に暮らしたところでどうなるって言うんだよ!!」
この質問に対してケイキは即答した
ケ「貴方といると、きっと毎日が満たされる、ただでさえ楽しい日常がもっと楽しくなる、だから貴方と一緒にいたい!」
更に猫とケイキによる質疑応答は続く
猫「僕はお前が分からない、何故そこまでして僕と一緒にいようとする、どうしていつまでも僕を切り離さないと言い切れる、その根拠が分からない」
ケ「だから言ったでしょ?私が貴方を見捨てる理由が分からない、だって今私は貴方が欲しくてたまらないもの!」
猫「僕はお前たちが嫌いだ、それに僕はお前たちをいつでも殺すことができる、僕と暮らすって事は常に命の危険が伴うって事だ」
ケ「そんなの貴方だって一緒でしょ、私だって殺そうと思えば殺せるんだし。それに手を引っ掻いた事だって、ホントはちょっと怒ってるんだよ、だけど、貴方のした事だから許せる、貴方が何かを想って、何かを考えて私を引っ掻いたことくらいなんとなく分かる、貴方が何かを考えて、その上でしたことなのだとしたら、私はぜ〜んぜん怒らないよ」
猫「君はなんなんだ、一体なんなんだよ」
ケ「私は普通の女の子だよ、ただの須本時景気。おかしなとこなんて何もないよ?」
猫はもう、自分がなにがしたいのか完全に分からなくなっていた、ケイキという少女の素直な優しさ、自分がずっと探していたものが、心のどこかでずっと求めていたものが、今ようやく目の前に現れた、猫はそんな気持ちになってしまっている、この優しさに救われて、過去の呪いから解放されるのも1つの手なのではないか、そうとも考えるようになっているのだ。
だがこれまでずっと自分を縛り付けていた物が、簡単に解かれる筈はない
そう思い込んでいるのもまた、今の猫なのである、そのたった1つの思い込みが猫にいらぬ苦しみを創り出す
猫「…、君は、僕をどうしたいんだ」
ケ「さっきも聞いたね、それ、別に変わらないわよ、貴方と一緒に暮らしたい、それだけ」
猫ももう薄々分かったいた、自分の思い込みが、今の自分自身を縛り付けているのだと、この優しさに拾われていれば、今までずっと囚われてきた過去から解放してくれるかもしれないと、この娘が、自分自身を永い過去から救ってくれるかもしれない存在だということを
猫「君は…いつまでも僕を切り離さないと言い切れるのか?」
ケ「もちろんよ」
猫「例え僕がどんな存在なんだとしてもか?」
ケ「当たり前じゃない」
猫「僕は君を…いや、人間そのものが嫌いなんだとしてもか!!!???」
ケ「貴方が例えどんな猫ちゃんだとしても、私は貴方が欲しい。だって、私は貴方が…大好きだから!」猫「!」
この時、猫の脳裏にある情景が浮かび上がってきた、人里離れた山の奥、木造の小さな一軒家、そしてボロボロの着物を着る少女、そんな彼女にかつて言われた一言「大好きだよ」
猫は突然、眼から涙が落ちてきた。そしてそのままの声でケイキに問いただす
猫「君は、最後まで僕と一緒にいるつもりなのかい」
ケ「貴方さえよかったら」
猫「君は、その気持ちがいつまでも変わらないと言い切れるのかい」
ケ「うん!なんでかは分からないけど、そう思うんだ」
猫「君にとって、僕はなんだい?得体の知れない化け物かい?」
ケ「…、私の、かわいい猫ちゃんだよ!」
猫の瞳には、溢れんばかりの涙がこぼれ落ちている
ケイキはその事に気づき、猫の頭を優しく静かに撫でる
猫「僕は…君との日常を願ってもいいのかい?」
ケ「うん」
猫「僕のありのままを…君は受け入れてくれるのかい」
ケ「うん」
猫「僕は君と…一緒に暮らしてもいいのかい」
ケ「うん!」
次の瞬間、猫は大きな声で泣き上げた、無理もない、ずっと苦しめられてきた過去からの解放、やっと自分は居場所を見つけられたんだという安堵、それら全てが猫の心を満たし、それが感情が抑えきれなくなったのだ
しばらくしてようやく猫の涙が落ち着いてきた、猫の目の前にそれを見下ろすようにケイキ達4人が横並びになっている
猫「ごめんなさい…いろいろと、君も引っ掻いたりなんかして…ごめんね」
謝らせたりなんてさせまいと、ケイキは言葉を被せた
ケ「ケイキ、私はケイキだよ」猫「!」
それに続くようにチョウコ達も自己紹介を始める
チ「ボクはチョウコ、令都蝶子、よろしくね」
シ「わ…私は加藤紗呼羅、よろしくね」
ク「わたしはクリミ、秋栗美よ、改めてさっきはごめんなさい、お湯なんてかけたりして」
猫「いいよ、気にしてない…うん、そうだね」猫は覚悟を決めたような凛々しい顔をして言った
猫「これからよろしくね、ケイキ、チョウコ、ショコラ、クリミ」
ケイキは、いや、この場にいる全員が嬉しかった、始めて猫ちゃんが、自分たちを名前で呼んでくれたのだ
ケイキはとびきりの笑顔で「こちらこそよろしくね」とまで言いかけたところである事に気がついた
ケ「あれ?そういえば猫ちゃんの名前…まだ決めてなくない?」
チ「あ、そういえば」
4人は集まって名前をどうするかを緊急で考え始めた
猫はしばらく考え込んだ後「名前なら」言いかけたと同時にケイキが
ケ「クッキ…クッキとかどうかな?」
と皆に提案した、他のみんなも「いい名前だね」と乗り気なようである
ケイキはそのまま猫の近くに兎のようにひょこんと近づいてから大きな声で
ケ「貴方の名前が決まったよ、その名も…クッキ!どう?」
猫は自分の本当の名前を伝えようか一瞬迷ったが、ケイキがつけてくれた名前を気に入った
猫「クッキ…か、」
クッキ「じゃあ、改めて初めましてだね、ケイキちゃん!」
2ヶ月後、飲み込まれるような雄大な夕陽が差し込む時間、ケイキは学校から課せられた課題にも飽きてきたのか「ふぁ〜あ」とあくびをして、先ほどからあまり手が進んでいない、クッキはその様子をケイキが自分のためにに買ってきてくれた猫用のベットでくつろぎながら見つめている
ク「さっきから全然進んでないね」
ケ「そうなんだよね〜、ちょっとめんどくさくなってきたな…」
クッキは呆れたように「なに言ってんだか」と呟く
正直、今でも考えることはある、ケイキちゃんもいつかは僕のことを捨てるんじゃないかって、だけど僕は…ケイキちゃんやみんなのことを信じている、彼女達が僕を裏切る事なんてあるはずがないって、だから僕は守り続ける、信じて今日も守り続ける、ケイキちゃんやみんなは、絶対に僕が守ってみせる。絶対に…今度こそ
ガタガタ、ガタガタと部屋中に不穏な音が鳴り響いた、やがて音と重なるように部屋がガタガタと揺れ出していき、気がついた時にはまともに立ったいられなくなっていた
地震である
ク「これ…地震!?」
ケ「クッキ、早く机の下に」
ケイキとクッキは急いで机の下に避難したが、尚も揺れは収まらず寧ろ段々と激しくなっていっている
もはやケイキ達がどのような体制をとってもはっきりと大きな揺れだと自覚するほどであった
やがて家全体にミシミシという音が響き始める、遊園地のアトラクションかに思えるほどの巨大な揺れを浴び続けた結果、耐震として備えられている柱が限界を迎えて家屋が崩落した、ケイキ達はその生き埋めとなりしばらくは息があったもののとうとう限界を迎え、窒素という形で死亡した
この時にケイキがクッキに恋愛感情を抱いていた…ということではないと思います。
ケイキはあくまでも友達として、クッキが欲しかったのかと…
ケイキにはアルト君がいますしね
ただ、クッキの方はどうでしょう