第4話 不思議な洋館に迷い込んだら…
淡い青空が広がる昼下がり、街外れの森林の奥に聳え立つ一軒の巨大な洋館、興味本位で森の中を歩いていたケイキ達は自分たちの目の前に突如として現れたそれに驚いている
ケ「わぁ〜大きな洋館…」
チ「さっきまでこんなの無かったよね?」
その洋館に不思議さと不気味さを感じつつ、窓から中の様子を確認してみると、館内はホコリや蜘蛛の巣で荒れ果てており、明らかに長期間手入れのされていない状態であったため、ケイキ達は人は住んでいないのではないか…という結論に至った
クリ「それにしてもなんなのかしら?この洋館…」
シ「(こういうのって大体やばいんじゃ…でも流石に中に入ろうとはならないでしょう)」
クッ「なんとなくだけどなんかヤバそうだよ、入るのはよそう」シ「(同感)」ショコラは小さく頷いた
ケ「えーでも誰もいないみたいだし入っても誰も文句言わないよー」チ「そうだね!その通りだよケイキ!!!」食いつくようにケイキの意見に賛成した
クリ「ケイキちゃ〜ん、この館に持ち主がいた場合秒で不法侵入が成立するのよ〜まぁどうでもいいけど〜)」
シ「(良くねぇよ)」
ケ「まぁつべこべ言わずに入っていこー」クッキ・チョウコ・クリミ「おおー」
シ「なんでクッキ君まで…さっき入るなっていってたじゃん」
ケ「あれ?ショコラちゃん行かないの?」
シ「え?」説明しよう!ショコラはこの状況、否が応でも館には入りたくないのだ、だがここで入らなければなんだか仲間はずれにしたかのような罪悪感に苛まれる事は容易に想像がついてしまう、ショコラにとってそれは多少のリスクを冒してでもなんとしてでも防ぎたい状況なのである、こうなればショコラがとる選択肢は1つ
シ「分かったわよ…入るわ…」
ケ「ほんと!よぅ〜し、じゃあみんなでこの謎の洋館にレッツゴー」
チ「おーーー!!」
シ「(誰か助けて)」
館内へ入った、中は案の定広く、所々に蜘蛛の巣や埃が散見される点を除けば間違いなく豪邸といえるものであった
ケ「うわ〜汚いけど広いね〜」
チ「一体どんな人が住んでいたんだろう」
ショコラが館に入り終え、扉を閉めようとした刹那、何者かに憑かれたかのような速度でひとりでに扉が閉まった
シ「え?」
その際に大きな衝撃音が館中に鳴り響いたため、ケイキ達もそのことに気づき、当然ながらかなり驚いている
ケ「え?なに今の?」
チ「まさかこれはよくある」
シ「駄目、扉が開かない」
ショコラが何度扉を開けようとしても、鍵がかかったようで開こうとはしなかった
クリ「まさか私たち、閉じ込められたの?」
不安がるクリミとは別にクッキは冷静に状況を整理している
クッ「これは…すぐにでもここを出たほうが良さそうだね、別の出口を探そう、最悪窓の1つや2つ壊してでも」
ケイキ達は他の出口を探すため、広間の奥に在る左右いずれかの階段を登った先にある1つの小さな扉を開けてみた、みたところこれ以外に扉のようなものはないからだ、扉を開いてみると、突然通路が4つに別れた
ケ「え?なんで急に道が4つに?」
チ「これ絶対ヤバいよね」
クリ「とにかく手分けして出口を探しましょう、わたしは1番左の通路を探すわ」
チ「分かった、じゃあボクはそこから1つ右の通路を探すよ」
シ「じゃあ私は1番右の通路を探してみる」
ケ「なら私は1番右の通路の隣の通路を探してみるね、後、クッキは私についてきて」
クッ「うん…分かった」
ケイキは通路を散策している、通路は終始一本道で、途中に更なる別れ道などはなく、しばらく歩いているとなにも模様のない壁が置かれていた、どうやら行き止まりのようだ
仕方なく来た道を引き返すケイキとクッキ
他の3人はなにか見つけていればいいなと話し合いながら直線を引き返した、先ほどまでなかったはずの曲がり道を左に曲がり、元の大広間に戻ってきたはずだ、そこに何もないのなら…
キャアーーーーーーーと館中にケイキの悲鳴が響き渡り、チョウコ達は急いで来た道を引き返し、悲鳴のした1番右の隣の通路に入った
するとそこには、腰を抜かし泣き崩れているケイキと、呆然と立ち尽くすクッキ、そして、腸を引き裂かれて変わり果てたクリミの姿があった
チ「あ…あああぁ…あああああああああああああああ」
シ「え…?嘘…ええ?え?え?え?え?え?え?え?…」
ケ「どうして…どうして…こんな…」ケイキは泣きながら訴えた、そう、訴えていた、どうして突然クリミがこんなことになったのか…その現実を受け入れたくはなかった、受け入れないために分からない何かに事実を訴えた
クッ「…、ケイキちゃん…すぐにでも館を出よう…すぐにでも」
クッキは生気を無くしたような声でそういうとそのまま入り口近くにある窓ガラスをその爪で全力で引っ掻いた、窓ガラスは割れ、外からの明かりが差し込んだ
クッ「さぁ…すぐにここから出よう…」ケイキ達はショックのあまり歩くことはおろか立つことすら出来ないでいる
クッ「…、立て!ケイキちゃん!みんな!!!」クッキが怒鳴り上げた シ「!」
クッ「逃げるんだ!!!ここにいたらみんなも殺される!!そう!それは殺しだよ!!クリミちゃんは誰かに殺されたんだ!!!この館にいる誰かに!!!僕達は早くこのことを警察に伝えて、彼らに仇をとってもらわないといけないんだ!!でなきゃみんなもクリミちゃんと同じように殺される!!全員死ぬんだよ!??そうなったら…一体誰が救われるっていうの!!!!????」
ケイキ達は座り込んでいる、だがそんな中ショコラだけが立ち上がった
シ「み、みんな、クッキ君のいう通りだよ…このままじゃきっと…私達も殺される、そうなる前に、私達で仇をとりましょうよ!」
ケ「ショコラちゃん…」ケイキ、それに続いてチョウコも立ち上がった チ「そうだね、それに、こんなところでいつまでも座り込んでなんかいられない」
ケ「絶対にとる、クリミちゃんの仇を…!!!」覇気に満ちた声でそういった
シ「みんな…」
ク「よし、じゃあ、先ずはここを出よう!」
ケイキ達も窓ガラスの近くに集まった
ケ「うん!」
そして3人と1匹は割れた窓ガラスから飛び出し、館の外に出た…はずだった
窓ガラスを飛び込み、外へと出たはずが、何故か館の中へと戻っていた
ケ「え?…なんで?…」ケイキ達は驚きを隠せないでいる
ク「これは…まさか…」
チ「どうするの、?このままボク達出られないの!?」
シ「そ、そんなはずないわ、入り口があるなら必ず出口があるはずよ」
皆が冷静さ失われていく中クッキが落ち着いて語った
ク「…、落ち着いて、これは窓からの移動先を入れ替えているだけ、何処かに必ず外へと繋がる出口があるはずだよ」
ケ「え?本当?本当なの?クッキ」
ク「間違いない…はず」
チ「そ、それなら早くその出口を探さないと」
ケイキ達は徐々に正気を失いつつあり、何故クッキがこの状況に対し知識があるのか、何故ここまで冷静でいられるのかなど考える余裕もなくなっていた
ク「だけど、それがどこにあるのかは…」
シ「…、チョウコちゃん、貴方が調べた通路って、最後はどうなってた?」だがショコラだけは冷静に、チョウコに現状を確認した
チ「え?え…えっと、調べてる途中にケイキの悲鳴を聞いて戻ったから、あの先がどうなってるのかは見てない…」
ケ「わ…私のは奥が行き止まりになってた、それで引き返してみたら、クリミちゃんが…」ケイキはまたも涙目になっている
シ「…、私の所もチョウコちゃんと同じ、最後はどうなってるのか見てない…だから…その内のどちらかにいけばもしかしたら」
ク「確かに、外に繋がる出口があるなら、今のところそこくらいしか考えられない」
ショコラが切り出してくれたこの一連の会話で、一筋の希望が見えてきた、ケイキ達の瞳に失われかけていた輝きが僅かだが蘇った
話し合いの末、先ずはチョウコが調べそびれた通路から調べることになった
こちらの通路もケイキ達の調べた通路と同様真っ直ぐな直線が広がっていた
まだクリミを襲った犯人が何者なのかが分からないということもあり、3人と1匹が固まって慎重に進みながら
だがしばらく歩いていると突然通路の明かりが消え、辺りが1cm先も見えない暗闇となった
ケ「え?な、なに?」
かと思えばすぐに明かりがまた戻った、と思えば再び通路から明かりが消え、またも明るくなりすぐに消えた
その後も通路は点滅を続けた
ケ「なに?どうなってるのこれーーー」
チ「はぁはぁはぁ」
2人は半ばパニックになっている
ク「2人とも落ち着いて、落ち着いて…」
尚も通路は点滅を続ける、点滅の速度も徐々に早まっていき、もはや明暗が1秒ごとに交互に入れ替わっていた
その時、通路が明るくなった瞬間、ショコラの目の前に頭骨のようなドクロの仮面が現れた
「きゃあ」と驚き後づさむ、それでもお構いなしに通路は点滅を続ける
ケ「ねぇ、いつ終わるのこれ?みんないる!?」
怯えながら呼びかけた、だが全員からの返事が返ってきた為この時は安心した、この時は
ようやく点滅が収まった、何か起きていないか、様子を見るケイキ
ケ「みんな、大丈夫?」
辺りを見渡してケイキ達が見たものは、上半身と下半身に分かれて横たわったチョウコの姿だった
ケ「あ…あ…いやあああああああああああああああ」
シ「あ…あ…」
皆が絶望した、この現実に、この光景に
チョウコの身体から流れ出る血液が1番前に出て歩いていたケイキの足元に着き、「チョウコちゃん…」と、ショコラは涙を流す
クッキは強く歯を食い縛り、涙を流すその瞳には、確かな殺意が込められていた
クッキは何度も深呼吸をして、静かな声でケイキ達にいった
ク「行こう…」
ケイキ達はそれに賛成し、ただひたすら通路の出口を目指して歩いている
だがその2人と1匹からは希望という2文字はなに一つ感じられない
ショコラがケイキ達にあることを話した
シ「さっき、通路が点滅した時、私一瞬だけ見たの…ドクロの仮面をした男の人を」
ケ「じゃあ、そいつがクリミちゃんやチョウちゃんを」
シ「たぶん」
この会話も、どこか淡々としていた
だがしばらく通路を歩いていると、直線は終わり、右へと続く曲がり角が見つかった
シ「曲がり角…こんなのあった…?」
ケ「うんうん、無かった」
ク「なら、この先に出口があるかもしれない」
そう思った矢先、後ろから何者かの足音が聞こえてきた、そしてそれは、ゆっくり、だが確実にケイキ達に迫っていた
ケ「これって…」
ク「来てる…2人を殺した奴が…こっちにきてる…!」
ケイキ達は一言も発さずにすぐに曲がり角を曲がり、直線を走った
だがどれだけ走っても一向に先へと進まない、やがて息が切れ、2人と1匹はその場で止まってしまった
ケ「何で!?走ってるのに!!!」
ク「元凶となってる奴を殺さないと、駄目なのかも…」
クッキが静かに呟いたその一言を、ショコラは聞き逃さなかった、後ろからは足音がどんどん近づいてきている
その時、ショコラの瞳に輝きが完全に戻った
シ「ケイキちゃん」ケ「!」
シ「ごめん、私、外にはたぶん出られない」
ケ「え…なんで!?私たちは!!!」
シ「誰かも分からないけど、そいつに大切な友達が2人も殺された…私はそいつを見たのに、なにもできなかった…だから」ショコラは拳を握りしめた
シ「今度こそは…ケイキちゃん…貴方だけは私が守る!!!」かつてないほど大きな声でそう言った
ケ「だ…だからショコラちゃん、さっきからなに言ってるか…分かんない、早く逃げないと!このままじゃ、追いつかれる!」
ショコラはケイキの静止を振り切って足音のする方へ戻っていった
ク「ショコラちゃん、君はまさか…」
シ「ごめんねクッキ君、貴方は何か知ってるみたいだけど、それならケイキちゃんを外に出してあげられるわよね」
ク「ショコラちゃん」
ケ「ねぇショコラちゃん!なんでそっち行くの!?早く戻って!!ねぇ!!!」
シ「ありがとう…ケイキちゃん、それにみんなも、私の友達でいてくれて」ショコラは後ろへと力強く歩いていった
ケ「ショコラちゃん!!!!!!!!」
しばらくして、ショコラの悲鳴が館中に鳴り響いた、そして先ほどまでの足音がゆっくりと近づいてくる
ケイキは腰が抜けて座り込み、クッキも呆然と立ち尽くしていた
そして、曲がり角を曲がる人影が見えた
その人影が、ケイキ達の元に、心臓を刺し貫かれた、両腕の無いショコラを投げ捨てた
ケイキはこれにより瞳の輝きが完全に失われた
曲がり角を曲がり、人影の正体がはっきりと見えた
クリミ達を殺した男は、ドクロの仮面を被り、右手にはチェンソーを持って中世ヨーロッパの貴族のような装束を見に纏い、胸にはピンク色をしたひし形の石が付いていた ク「!」
その男がチェンソーを動かし、ゆっくりとケイキ達に近づいていく、もはやケイキに動くことなど出来ない
そして、クッキが男に立ちはだかった
男「?」
ク「そうか、お前がみんなを殺したのか…分かった、もういいよ、今日ほど最悪を望む日が来るとは思わなかった…死ね」
そう言った途端、クッキの頭上に突如袋のようなものが空中に現れ、その袋が辺りの空気を風と共に集め始めた
男はなにが起きているか分からず、その場で立ち止まって見ていた
しばらくして袋に空気を溜め終えると、その袋の小さなしまい口から真空派のようなものが5つ現れた
最初の1つは男の胸元に当たってそこを切り裂き、2つ目は首元に当たって男の首を切り飛ばした
残りの3発は首が切り落とされて男が死亡し、その場に後ろから倒れたため当たらなかった
ケイキはその様子をただ見ていることしか出来なかった
ケ「クッキ…今のは…」
ク「行こう」ケ「…」
ケイキ達は通路をそのまま真っ直ぐ進み、やがて出口に差し掛かった
外へ出たケイキ達はそのまま交番へボトボト歩いた
ケイキは歩きながら「みんな死んだ」「もう会えない」とロボットのように何度も呟いていた
やがて1人と1匹は交番前にある工事現場を通り過ぎようとしている
その時作業員の1人が手から鉄骨を滑り落としてしまい、それがケイキとクッキに直撃した
ケイキはクッキと共に、死亡した
前回書きました通り婦留亜或斗の名前の由来をご紹介します!
前回名前のつくものは全て洋菓子から取られているとお話ししましたね?
それを踏まえてアルト君の名前の由来は…アップルパイです!
だい無理矢理でしょ?結構ゴリ押しです