第3話 絶対優勝したいから…
テニス部に所属しているケイキは、今日も部活動で練習に励んでいる
練習として、他の部員と一対一でレシーブの練習をしている、今回はケイキがレシーブに失敗したため、もう一度仕切り直しで同じ相手との練習が始まった
だがその次も、さらにその次も、その次も、連続してケイキはレシーブに失敗してしまった
普段ならここまでレシーブをミスすることなどあり得ないはずなのだが
ケ「あれ?おかしいな…中々上手くいかない」
すると顧問の先生が話しかけてきた
顧問「どうした?調子悪いな」ケ「すみません…」
顧問「お前は次の大会に出場するんだ、大会の3日前までには戻しておいてくれよ」ケ「はい…」
ケイキは帰宅を終え、自分の部屋に入る ケ「あーあ」
ケイキは倒れかかるようにベットは飛び乗った ク「どうしたの?ケイキちゃん」
ケ「いや…ちょっとね、最近部活が上手く行ってなくって」
ク「そうなんだ、テニス部…だったよね」
ケ「うん…」ク「じゃあ…特訓する?王道展開」
ケ「え?」
翌日(日曜日)、クッキがいつもの3人を誘ってケイキと近くの公園へ来た
クッ「というわけで、今日はケイキちゃんのために大特訓会を始めま〜〜す」
2人「おーー」
ケ「いやいいよ、そうしてくれるのは嬉しいけどなんだか申し訳ないよ」
クッ「なに言ってるんだよ、僕は君の力になりたいんだ、むしろ本望さ」
チ「ボクだって」クリ「わたしもよ〜」
シ「わ…私も力不足だと思うけど…なんとか力には…なってあげたい…」
クッ「そういうことだよ、ケイキちゃん」
ケ「みんな…ありがとう、それなら…猛特訓して、次の大会、絶対優勝しないとね!」
こうして、クッキ達の猛特訓が始まった、スランプ気味になっているレシーブを中心に、相手がどのようなショットを打ってきてもすぐに対応できるよう判断力の特訓、クロスショットの練習等、試合の形式であるシングルスに必要な要素を1から鍛え上げた、一体クッキはどこでこのような知識を覚えたのかは不明だが世の中にはご都合主義という便利な言葉がある、本当に便利なものだ。
尚ショコラはほとんど見学状態である、なぜクッキは彼女を練習に誘ったのか…これもご都合(以下略)
ケイキはクッキ達の協力の下、このような練習を約1週間続けた
そして木曜日、大会の3日前、ケイキは部活で先週と同じ相手とラリーを行っている
そこでケイキは打たれたボールを見事なクロスショットで打ち返し勝利した
ケ「はぁはぁ、やった…スランプ脱却…っっっっ〜やったーーーーーーーー」
ケイキは叫び上げるように喜びの感情を表に出した
顧問「やったな、ケイキ」顧問は拍手と共にケイキの近くへ歩み寄る
ケ「先生」顧問「これなら、次の大会も問題なさそうだな、しっかりやれよ」サムズアップと左眼だけを開かせた笑顔でそう励ました
ケ「...!はい!ありがとうございます!!!」
次の日の夜、婦留亜或斗は休日のスケジュールを確認している
ア「あ、日曜予定ねぇな…なんか部活の大会やってねぇかな」
彼はバイトのない日に自身の通う高校のどこかしらの部活の大会を観戦するのが趣味なのである、アルトは大会のある部活を確認するため、学校が運営する公式インスタグラムをチェックしている
ア「あ、テニス部大会あるじゃん、...、なら行くか」
そして大会当日の日曜日、ケイキは特訓で鍛えられたクロスショットと以前からの持ち味であった独特な立ち回りを駆使して順調に勝ち進んでいった
チ「おー、ケイキやるじゃん」クリ「その調子よ〜」
ケイキのこの大会には、チョウコ達いつもの3人に加えてクッキも応援に参加していた
クッ「ありがとねチョウコちゃん、僕まで応援に参加させてくれて」
チ「そんなのお安い御用だよー、だってケイキがボクたちの特訓の成果を発揮する神聖なる場なんだよ!?皆で共に分かち合いたいではないか!」
クッ「君段々キャラ壊れてきたね」
大会はトーナメント形式で行われる、参加人数にもよりけりであるが、時間が許す限りは一日中かけて行われる、とはいえ基本は高校生レベルの大会であるため、1試合にかける時間はそれほど長くはなく、大体1人1日に3試合ほど執り行える
そして、この大会にはやはりアルトも観戦していた
ア「あ、あの娘…」アルトはケイキを見て思い当たる節があるようだ
ア「前に俺見て逃げ出した人じゃん…部活やってたのか…」
現在夕方4時30分頃、ケイキにとっては恐らく本日ラストとなる試合である
ケイキと対戦相手の藻武蘭がまるで縄張りを争う動物のように睨み合っている
ラン「あらあら、いつまで私を見つめなさってますの?さっさと始めますわよ」
ケ「ええ、トスをね」
コイントスの結果ケイキが先にサーブを始めることになった
開幕早々互いに一歩も譲る気のないレシーブの応酬が始まっている、だがケイキが先に仕掛けた
ケイキはお得意のクロスショットで先手を取りに行った、だがランにその事を先読みされ、逆にレシーブを返され、ポイントを奪われた
現在、『ケイキ 0vs15 ラン』
ケイキは自身の十八番が敗れたことに危機感を抱き、呼吸がやや荒くなっている
チ「!そんな!?」クッ「まずいね、クロスショットの弱点が出た」と、応援に来た3人と1匹もかなり驚いている
ア「あれま」
ラ「お〜〜ほほほほほっっっ、クロスショットは確かにストレートを返そうとする相手には有効な手ではありますがね、向こうがクロスで来ると分かっているなら、それを読んでボールの軌道が曲がった位置に先回りすればいいだけのことでしてよ」ケ「っ、」ケイキはかなり悔しがっている
再びケイキのサーブでゲームが始まった、しばらくレシーブが続いた後ケイキは再びショットを打った
ラ「何度やっても無駄ですわよ」ランはクロスショットを読んで再びコートの端に向かった
だがボールは曲がらずそのまままっすぐに飛んでいき、そのまま点を奪われてしまった
これに対しランは「なっ、」と驚き
チョウコ達は「やったー」と喜び
アルトは「へぇー」と感心し
ケイキは「やったーーーーーー」と飛び跳ねて大喜びした
ケ「簡単な事よ!相手がクロスを読んでコートの端に行くなら、それを読んでストレートを投げればいい、ね♪簡単でしょ♪」ラ「っ、、」
ラ「いいわ、徹底的に叩きのめしてあげる!」
現在、ケイキ 15vs15 ラン
その後も試合は進み、徐々に激しさを増していった、チョウコ達はその激しさにすっかり釘付けになり、気づけば10ゲーム目に突入していた
現在、ケイキ 40vs30 ラン
テニスでは基本この状態をデュースといい、後一点取ればケイキの勝利であり、一見するとケイキが有利であるが、実際には、実は試合が始まった時点で既にランが格上であるという事をケイキは見抜いており、これに勝つためには体力の温存を多少度外視してもやむを得ないと判断した結果だからである
つまり今のケイキはかなり体力を消耗しており、もしここで決められなければ体力が限界を迎え、流れるように点を奪われていくのは明白なのである、つまり、ケイキはなんとしてでもこのゲームで決着をつけなければならないのである
ランのサーブでゲームが始まった、2人のレシーブがしばらくは続いた、途中何度かチャンスといえる場面もあったが、「失敗すれば負ける」というプレッシャーで中々勝負に出られるずにいた
だがこのままなにもしなければいずれ体力が尽き、自滅してしまう
まだ勇気は足りていないが応援に来てくれた仲間達を見て覚悟を決め、ケイキは飛んできたボールにラケットを近づける
その瞬間、観戦に来ていたアルトと偶然目が合った、その瞬間ケイキの体から足りていなかった勇気が込みあがり、ラケットでボールを打ち飛ばした、クロスショットだった
ラ「(クロスショット?ならコートの端に行けばいいだけですわ!)」
ランもまた、この試合を通して打ってきたボールがクロスかストレートかを瞬時に見極められるようになっていた
ランはクロスショットを打ち返すためコートの端へと走る
ラ「終わりですわーーーーーーー!!!」
だがしかし、ボールはランの目の前で突如直角に落ち、地面に着いた、かと思えば再び跳ね上がって左斜め70度の角度でボールが進行していき、再び地面に着いた
これによりランのツーバウンド…よって勝者はケイキである
ケ「勝った…勝ったーーーーーーーー!!!!!!!!!」
チョウコ達も観客席で「ケイキが勝ったーーー」と大喜びである
ランは滅茶苦茶悔しがっているのだが
ケ「どう?驚いた?名付けて…[シューティングスターショット]!!!」ラ「知るかぼけぇ!」
ランは立ち上がり、ケイキにこう告げた
ラ「っ、いいわ、負けを認めてあげる、今回は私の負けよ、けど、次こそは必ず勝つ…覚えてなさい!」
ケ「ランちゃん…うん!次も負けない!」
こうして試合はケイキの勝利に終わった、これで本日の試合は終了し、ケイキは4回戦まで勝ち進んだ
試合もひと段落つき、部活メンバーと別れたケイキは仲間達の元へ駆け寄った
チ「お疲れ、ケイキ、かっこよかったよ〜」
ケ「ありがとう」
クッ「これは優勝も可能性あるんじゃないかな」
クリ「楽しみね〜」
シ「と…とにかくお疲れ様」
ケ「うん…私も今日はちょっと疲れちゃった、帰ってゆっくり休むわ」
クッ「じゃあ僕たちはここでお別れだね」
チ「そうだね、バイバイ」
クリ「ばいば〜い」
シ「ば…バイバイ…」
ケ「バイバーイ」
ケ「それじゃあ、私たちも帰ろっか」
ク「うん、そうだね」
ケイキとクッキは自宅へと帰るため、近くに工事現場のある大通りを歩いている
ク「それにしてもすごかったね、最後のあれ」
ケ「そう?実は密かに練習してたんだ〜(あの人にも、見てもらえたかな///…)」
そこに突然ベレー帽に茶色いコート、黒いサングラスと白いマスクをした不審な男が駆け寄ってきて、いつのまにかケイキを抱えて逃げ去っていった
男は銀行強盗犯であり、ケイキを人質として誘拐したのだった、ケイキは既に何重にも結ばれた縄とガムテープで自由を奪われている
町中で堂々と人を攫ったため目撃者も多く、その1人が警察に通報したためすぐに警察に追いかけられた、男は盗難者に乗り込み、山奥の廃病院へと向かいそこにケイキと一緒に立て篭もった
やがて警察達が駆けつけ、窓から顔を見せる犯人に拳銃で脅しをかけているが犯人もまた、ケイキを抱えたままでおり、ケイキを人質にして身動きをとれなくしていた
ケイキはなにが起こっているのかわからずただボーっとている
やがて警察が威嚇と突入の合図を兼ねて犯人がのぞいているより1つ上の階の窓を狙って銃を撃ったが男はこれを自分に撃ったのだと勘違いし、ケイキを前に出し人質はいいのかと迫った
だが警官の撃ったその球は狙いを外しており、弾道は男の方へ向かっていった、男はそれに気づき、ケイキを盾にこれを防いだ、だがその結果弾はケイキの頭部に命中した
人質として使いものにならなくなったと判断した男は自暴自棄となり窓からケイキを突き落とした
それと同時に警察が一斉に廃病院へと突入し、ケイキも地面に激突する直前に救出されたのだ
男は無事に逮捕されたが、ケイキは頭を撃ち抜かれた時点で既に死亡した
すでにお気づきの方もいるかと思いますが、本作に登場するものは全て洋菓子にちなんだ名前がつけられています
須本時景気ならスポンジケーキ、令都蝶子ならチョコレート、カラオケ店ビスケトならビスケット…といった具合ですね
では婦留亜或斗は何から取られているでしょうか?正解はそうですね…次回の後書きにでもいたしましょう