9、全ての悪夢が起きる時
.....。
瑠衣子は恋が嫌いらしい。
何となく納得はする。
俺も恋は嫌いだ。
人を変貌させてしまう。
根本を瑠衣子が気が付かせてくれた。
「ゴメンなさい。お兄ちゃん」
「.....謝る事は無いんじゃないかな。.....俺は感謝してるぞこれでも」
「.....え?何に感謝?」
「俺は.....恋を根本から考えてなかった。そうだよな。恋って.....まあ悪だよな」
「.....!」
俺は料理をしながら訊ねてきた瑠衣子にそう答える。
それから俺は卵を落とす。
今日はオムレツだ。
そんな事を考えていると瑠衣子がやって来た。
今日の夕ご飯は何?、と言いながら。
「お前の好きなオムレツだよ」
「本当に!?わーい!」
「.....そこまで喜ぶか。本当にお前は子供の様だな」
「だけど本当に嬉しいから」
「おー。そうなんだな」
そんな感じで俺達は会話をする。
それから瑠衣子は、待っている間、ゲームする!、と駆け出して行く。
俺はその姿を見ながら苦笑いを浮かべる。
そして俺は料理を作った。
うむ。上手く完成したな。
「お兄ちゃん!まだ!?」
「何だお前?お腹が空いたのか?」
「いいや!お腹は普通だけど!お兄ちゃんのオムレツが食べたい!」
「ああ。そういう事か。じゃあ早く準備するからな」
そんな感じで会話をしながら一気に用意する。
それから俺はそのままテーブルに並べる。
すると待ち侘びた様に瑠衣子が目を輝かせた。
そしてそのまま、頂きます!!!!!、とそのまま食べ始める。
手は洗ったのか?、と聞こうとした時だった。
「.....まあ.....そんだけ食べたかったんならそれはそれなりに」
俺は苦笑いを浮かべる。
そして俺も、頂きます、と手を合わせてから。
そのまま夕食を食べ始める。
するとジッと俺を瑠衣子が見ている事に気が付いた。
俺は?を浮かべて瑠衣子を見る。
「.....お兄ちゃん。.....私って.....その。.....何かいけない事してる?」
「.....いけない事?それはどういう....?」
「.....私.....全部が上手く傾く様に言っているんだけど.....何かいけない事をしているみたいな気分」
「.....うーん.....俺はそうは思わない。.....瑠衣子」
瑠衣子の頭にそのまま触れた俺。
それから俺は頭を撫でる。
瑠衣子。俺はな。お前の言葉一つ一つに重みを感じる、と。
そして、俺だよ。何かがおかしいのはきっと、と答えた。
そうしてから俺は複雑な顔を浮かべる。
すると瑠衣子が俺の頭を撫でてきた。
「お兄ちゃんは何もおかしくない。.....お兄ちゃんの行動は.....真っ当だよ」
「複雑だ。正直。.....でも.....なる様にしかならないけどな」
「そうだね。うん。でもそれで良いんじゃないかなって思う。私自身は察するのが鈍いけど」
「お前の何処が察するのが鈍いんだ?よく分からない。お前は本当に正しい行動をしていると思う。自慢の妹だよ」
「.....有難う。お兄ちゃん」
そう言ってくれて嬉しい、と笑顔になる瑠衣子。
でも恋とかあるのが、女の子なのが悔しいよ、と俺を見てくる。
だって一緒に銭湯も入れないし、と。
俺はその姿を見ながら、瑠衣子。お前は生きているから。それだけで世界には価値があるんだ。女の子として生まれたのも.....何か絶対に運命があるんだ、と答える。
「あまり自分自身を恨まないでほしいんだが」
「.....うん。分かった。お兄ちゃんが言うなら恨まない。私は私自身を大切にする」
「.....正直俺としてはお前が居る中で.....自分自身をマジに大切にしない女も居る事が.....、って思うが。何故彼氏を作ったのかその時点で全く分からないしな。俺が好きとはいえ好きってそんなにするもんかね、とも」
「私は好きなんて分からない。そんなの知らない。.....だけど何となくだけど。女の子だから分かった。.....戸口さんはその。.....語るもの、寄るものが欲しかったんじゃないかなって」
「何だそれは?よく分からない.....」
「つまり.....戸口さんはその。相談役が欲しかったんじゃないのかな?」
うーぬ?
それで彼氏を作ったってのも.....イマイチ説得力が無いし分からない。
思いながら俺は顎に手を添える。
まあその.....脅されたとかなら話が僅かながらに通るかもだけど。
考えながら俺はオムレツを見る。
「.....分からんなぁ.....」
「.....そうだね。.....何が原因か、だね」
「.....やれやれ」
そんな事を言っていると。
インターフォンが鳴った。
誰だこんな時刻に、と思ってから玄関を開けると。
そこに後輩が立って居た。
いやしつこいな.....何なんだ。
「お前何しに来た」
「.....先輩。何故.....私を愛してくれないんですか?」
「.....は?」
「.....先輩.....私は相当に頑張っています」
「いや。いきなり何言っているんだお前は.....?」
山口はそこそこに良い子だとは思う。
だけど.....その。
それでも山口を今の状態で好きになるかって言ったら話が別だ。
つまり俺は山口はいい子だとは思うけど、って話だ。
俺は?を浮かべて山口を見た。
何を言っているんだ山口は?
それから見ていると、先輩。私だけを愛して下さいよ、と言ってくる。
な、何だコイツは。
「オイ。お前は何を言っている。お前は良い子だとは思うけど.....恋愛対象にならないぞ」
「戸口先輩にお薬を飲んでもらいました。最初に気力付けに、です。戸口先輩の身を心から案じていますよ。だってご病気じゃないですか。脳のご病気。大変だと思っていますから」
「.....いや。ちょ。お、お前.....意味が分からないんだが。何を.....」
流石の俺も迫って来るのにドン引きなんだが。
何この気迫は。
雨が降り出した。
思いながら俺は身の危険を感じて家に逃げようとする。
すると俺に縋って来た。
私が何故、恋愛対象にならないですか?、と。
「いやならないしそんな事を考えている暇があったか!?俺に!」
「戸口先輩の彼氏説は私が吹聴したんですよ。そうです。先輩が戸口先輩を嫌いになるかと思って。戸口先輩はずっと前から貴方に告白しようとしていたのですが.....先方から妨害してやったんですよ。全てにおいて私が。.....まあその。精神薬を盛ってみましたが効果はそれなり。.....戸口先輩は貴方を妄想を予想以上に披露してくれたんで。その心理が私に向くかと思ったんですが予想外の結末になってしまったのがショックでした」
「.....!?」
どうなっている?
だけどそこでハッとした。
最初に言ったが。
コイツ薬飲ませた、と。
まさかコイツ.....胃薬とか言って何か薬を飲ませたのか?
だがこれに対して後輩は冷静に話した。
先輩。何も飲ませていませんよ?、とすっとぼける様に。
そして俺を瞳孔が開いた目で見てくる。
俺に一歩一歩近付いて来る。
青ざめる俺。
コイツ何だ!?
ま、マジにイカれている!
た、確かコイツの家は小さなクリニック、病院だった。
そこから薬を盗んだのか?
冗談で言ったのだが。
「.....お前.....告白の妨害をするただそれだけの為に.....アイツを、向精神薬を利用したのか?」
「そうですね」
「そうです.....ってお前.....真面目に答えるな!外道メルヘン野郎が!ふざけるな!」
そんな感じで俺は逃げてから。
そのまま家の中に逃げ込む。
それから玄関の鍵を掛けてから。
頭に手を添える。
何が起こっているんだ.....!?
俺が、戸口.....いや。
銘が嵌められたのか?
.....。




