8、恋って本当に嫌だ
.....。
「パフェ美味しかった!」
「そうだな。.....須玖ちゃんには感謝しないとな」
「そうだね!お兄ちゃん!」
そんなパフェを食った帰り道の事だが。
俺と瑠衣子はそんな会話をしていた。
そして手を繋いで帰る.....おい!?
俺は瑠衣子の手を優しく外しながら瑠衣子を見る。
「.....どうしたの?お兄ちゃん.....何で手を外すの?」
「瑠衣子。今日分かったと思うが.....お前は女の子だ。.....だから人前では.....」
「え!?やだよ!お兄ちゃんまでそんな事言うの!?何でよ!!!!!」
「えっと.....」
何で.....お兄ちゃんまであの男の子みたいな.....そんな事を、と泣きながら俺を見る。
困惑しながら俺は瑠衣子を見ていると、恭平、と声がした。
その声の主に目をくれると。
そこに幼馴染が立っていて俺を見ていた。
買い物袋を持っている。
「.....何だお前は。しつこいんだが?何を声を掛けてきてんだ」
「ご、ごめんなさい。.....恭平。私は貴方の事は全然嫌いじゃない。その部分.....き、記憶が無いの」
「いや何言ってんの?」
「っ....!」
「お前.....それは非道だと思わないか。.....そんな言い訳をするのか」
「.....きょ.....恭平.....言い訳じゃないの.....これ本当なの.....信じて」
すると予想外の人物が声を上げた。
それは先程まで泣いていた瑠衣子だ。
俺を見ながら涙を拭いながら立ち上がる。
そして、お兄ちゃん。確か幼馴染さんは浮気したんだよね?、と聞いてくる。
俺は、ああ、と返事をする。
そして戸口に駆け寄って行った。
「.....戸口さん。.....何でお兄ちゃんを裏切ったの?」
「.....わ、私は裏切ったつもりは無い.....んだけど.....でも.....」
「お兄ちゃんはショックを受けていた。.....心から。.....貴方の事で。だから訳を話して。.....何故こんな真似をしたの。私は1つだけでも良いから知りたい」
「.....おい.....瑠衣子。このアホに聞いてももう無意味だって」
「正直に言うと.....私にはもう時間が無いとも言える事もある」
は?、と思いながら戸口を見る。
何を言ってんだコイツは。
いよいよ頭が参ったか、と思っていると。
私の頭の中にこの前出来た腫瘍があるの、と切り出してきた。
それは脳の中に出来ていて.....今の所は手術が出来ない、と言ってくる。
「.....それが徐々にデカくなってきていて.....脳の一部を圧迫している」
「.....」
「腫瘍が脳を圧迫している。.....だからこの何ヶ月かのうちに記憶が全部消える。でもこれは.....あの件があってから貴方に話せなかった」
「.....いやだから。それで何なんだよお前は。それで彼氏を作ったとか?情けを掛けてほしいか?例えばそれが本当でもお前のやった事は許せないからな。いい加減にしろ。無慈悲と思うかもしれないがこれは事実だからな」
「彼氏は初めから居なかったんだよ。でも.....こうなってしまったからにはもう。今までも許してもらう為に動いていた訳じゃない。.....瑠衣子ちゃんが訊ねてきたから答えただけだよ。でもその。最低限、誤解だけは解いておきたくて.....ご、ごめんなさい」
「.....」
訳が分からんわ。行くぞ瑠衣子、と言いながら俺は歩き出す。
すると何故か瑠衣子は戸口に歩み寄る。
それから見上げた。
泣いている戸口に、であるが。
俺は?を浮かべて見る。
「お兄ちゃんは本当にショックを受けていた。.....だから反省してほしいんだ」
「.....そうだよね.....もう私には何も残されていない。大丈夫。反省している」
「.....ねえ。そんな戸口さんに質問なんだけど.....」
「え?なに.....?」
「.....恋って.....何?どんな病気?」
いやいや何故それを戸口に問うんだ。
意味が分からんぞ瑠衣子。
思いながら俺は唖然としながら瑠衣子を見る。
すると戸口は、恋って儚いよね、と答えた。
それから、一度失敗するとこうなる、とも答える。
「.....私は.....心から恭平が好きだった」
「.....今更そんな事を言ってもお前がやった事がやった事だ。.....全てのその全てが遅いがな」
「.....うん。批判はもう承知の上だよ。.....帰るね」
「.....」
お前とは。
正直、申し訳無いが二度と話したくは無い。
思いながら俺は帰宅する。
しかしどんだけ縁を切っても幼馴染ではあった。
困ったもんだな畜生めが。
嫌なもんだ。
「お兄ちゃん。恋ってイヤだね。本当に」
「.....何でそう思うんだ」
「.....お兄ちゃんと遊べなくなるから。.....戸口さんはあんな感じにならなかった。だからイヤ」
「.....そうだな。.....確かにな。根本から考えればそんな感じではあるよな」
「そう。私も女じゃなかったら良かった。お兄ちゃんと何も出来ない。胸がイヤ。おっきく成長していくのが」
「.....それはつまり俺と遊べないからか?」
そう、と心の底からの様に答える瑠衣子。
俺はその姿を見ながら玄関を開けると。
玄関を上がって行く瑠衣子。
そして廊下でわんわんと泣いていた。
その様子に.....複雑な思いを抱く。
それでアイツに質問したのか、と、だ。
何でアイツなんかに恋の事を相談したのか分からんかったがそういう意味か。
どん底に落ちた野郎に聞けば何か分かるかもしれないって思ったんだな.....と思ってしまった。
「.....俺は何なんだろうな」
そんな事を言いながら俺は天井を見上げる。
そして盛大に溜息を吐いてから。
そのまま瑠衣子の元に向かう。
それから頭を撫でた。
.....。