6、うるさいぞ瑠衣子
.....。
俺の場所は歪な世界だと思う。
まあ何というか世の中にはゴミクズと。
ゴミクズじゃない人間がこの世界に居るという事だ。
アイロニーって言うんだろうかこれは。
俺は考えながら世界を見渡す為に屋上に居た。
昼飯を食べてから、だ。
この世界は本当に良くない事や良い事が起こるな....、と思う。
そうしていると屋上のドアが開いた。
「恭平さん」
「.....?.....須玖ちゃん?」
「何をしているんですか?」
「俺か。.....まあその.....皮肉の様な世界を見渡しているんだよ」
「.....皮肉ですか。.....確かにですね」
そして同じ様に手すりに触れる須玖ちゃん。
それから手すりを触りながら俺を見る。
俺はその姿を見ながら笑みを浮かべた。
すると須玖ちゃんは、放課後。楽しみですね、と笑顔を浮かべる。
「.....そんなに楽しみなのか?何でそんなに?」
「.....それは内緒ですね。.....でも私は貴方と一緒が楽しいって事ですよ」
「.....いや。それ.....告白の様に思えるんだが.....」
そう冗談で言うと須玖ちゃんは真っ赤になった。
へ?、と思いながら須玖ちゃんを見る。
だが、もう。冗談はよして下さい、と言われた。
つまり俺の言葉は冗談と捉えられた様だ。
俺はその姿にホッとしながら居ると。
須玖ちゃんは、でも何ででしょうね、と切り出す。
「.....貴方の様な良い人を.....裏切るなんて真似は出来ないです。私には。.....それは絶対に出来ない」
「.....そうだな.....まあ世の中、訳の分からない連中も居るからな。.....そういう事だろう」
「.....ですね.....」
でも、と話す須玖ちゃん。
それから俺を真剣な眼差しで向いてくる。
そして少しだけ紅潮した様な顔になってから俺を見据えた。
私は絶対に裏切りません。貴方の事を、と言ってくる。
俺は、お、おう、と言いながらその姿を見る。
「.....この先、何があってもお兄ちゃんと一緒に貴方をずっと楽しませるつもりです」
「.....それは有難いな。.....感謝してる」
「.....だから放課後、楽しみましょう」
「そ、そうだな。分かった」
それから俺達は笑みを浮かべてから。
地平線を見るのを止めた。
そして教室に戻る。
すると、どうだった、と透が聞いてくる。
俺は、お前か。須玖ちゃんを来させたのは、と聞く。
「うん。僕だね。.....須玖は本当に行きたそうな感じだったから」
「全くお前は.....でも有難うな。.....傷心の心が和らいだ」
「.....うん」
そして俺はふと思って戸口を見る。
だが戸口はその場に居なかった。
何処に行ったんだアイツは。
思いながらだったが。
まあもう良いか、と面倒になって切り上げた。
それから透に向く。
「何時も有難うな。お前さん。.....本当に感謝してる」
「僕は何もしてないよ。全ては君が頑張っているから」
「まあ俺も支えがあって生きている様なもんだ」
「そうかな?僕にはそうは見えないけど」
「そうは見えなくてもな」
そして俺は苦笑しながら透を見る。
それから次の時間になった。
俺は透に別れを告げてからそのまま校門に向かう。
約束の場所に。
というか申し訳無いな透には。
毎回俺と一緒に帰っていたのにここ最近は.....一緒に帰ってない。
☆
「恭平さん」
「.....やあ。須玖ちゃん。昼ぶりだね」
小さく俺に対して小恥ずかしげに手を振るこの子。
やはり天使だな、と思う。
何故なら控えめだったから可愛い。
思いながらの俺は歩き出して聞いてみる。
目的地の事に関して。
「それで.....喫茶店はどっちの方角にあるのかな」
「あ。喫茶店は.....こっちですね」
「ああ.....成程な。ファーストフード店の近くか」
「そうですね」
歩きながら俺達は会話が少なくなる。
何というか昼間の事があったもんで.....恥ずかしいというか。
思いながら声を上げると。
ちょうど須玖ちゃんと重なった。
あ、と言う俺達。
「ど、どうぞ!」
「いや。須玖ちゃんからどうぞ。どうしたんだ」
「.....あ。じゃあ失礼して。.....恭平さんには.....その。義妹さんが居るんですよね?聞きました」
「そうだな。確かに義妹が居る。瑠衣子っていうな」
「そうなんですね。.....その。.....瑠衣子ちゃんはどんな方ですか?」
「え?瑠衣子?.....割とマジにはちゃめちゃだぞ」
はちゃめちゃ.....、とホワホワと何かを思い浮かべる須玖ちゃん。
まあそうだな。その想像で多分合っている。
思いながら俺は苦笑して歩いていると目の前に見慣れたセーラー服が過った。
そして、あ!お兄ちゃん!!!!!、と絶叫する。
オイここは人が多いぞ。
通行人が真面目にビックリして振り返ってんぞ。
俺は額に手を添えた。
「瑠衣子.....お前」
「人が多いって?そんなの関係ないよー!お兄ちゃんだもん!」
「いやいや.....お前な」
そんな会話をしていると瑠衣子が俺の横の女子、つまり須玖ちゃんにハッと気が付いた。
須玖ちゃんはクスクス笑いながらも頭を律儀に下げる。
そして、初めまして、と言う。
その途端に驚愕していた目を俺に向けてきた瑠衣子。
「お兄ちゃん!!!!?この人は彼女!!!!?」
「いや。目を輝かせスギィ!!!!!」
目をキラッキラ。
ダイヤモンドの様に輝かせながら俺を見てくる。
そして頭を勢い良く下げる瑠衣子。
それから、こんにちは!私は中島瑠衣子です!!!!!、とアップテンポで挨拶する。
もろうるさいんだが.....。
「メリハリのついた声で.....元気だね。あはは」
「はい!お兄ちゃんが毎回お世話になっております!!!!!」
「オイ。瑠衣子。うるさいぞ」
「良いんじゃないかな。恭平さん」
ニコニコしながら瑠衣子を見てからそして笑顔になる須玖ちゃん。
これは直ぐに意気投合出来そうだな。
そんな事を思いながら眺めていた。
全くな、と思う。
でもそうじゃなくて、良かった、とも思えた気がする。
.....。