7.レン
レンは話してみると普通の男性だった。ただ人を惹きつける何かがある。
初対面のアキサムに笑顔で接する気さくなところもあった。ユロに対して蔑視を向けることなく、好意を持っているのか分からなかったがそれでも彼に嫉妬の感情は湧かなかった。
レンにおすすめの店に案内してもらうことになり、家庭料理が売りの料理屋に入店した。レンは店主と顔見知りらしく、少し安くしてもらうことができた。
「ここは山鳥のムルファが美味しいんですよ。野菜もいいのを使ってるんですよ」
レンの顔を輝かせながら美味しさを語るその姿はユロと共通しているものがあった。似たところがあると思いながらアキサムは山鳥のムルファを頼むことにした。
しばらく食事をしながら3人は楽しく会話をした。レンは酒を頼み、アキサムは水をちびちびと飲んでいた。
ユロがレンのことを詳しく教えてくれた。レンは旅をして生活を営む風の人らしく、子供の頃親を亡くして子供のいないツックリー街の商人が引き取ったとのことだった。
レンは今の親に感謝をしているようで、商売を手伝いながら将来は跡を継ぐとのことだった。アキサムは感心した。
頑張っているレンに幸せを与えよう。少し下を向くと結露したグラスの雫が滴り落ち、机を濡らしていた。
ムルファ・・・シチュー