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6.何者
ツックリー街近くの繁華街まで来ると、食べ物のいい匂いがしてきた。
ユロは匂いにつられて目を輝かせながら店をチラチラと見ている。同時に歩く人々は、ユロの格好を見ていた。
髪色に気づくと、蔑視で通り過ぎる人々。アキサムは全員にちょっとした罰を与えてやりたい気分になった。
ユロの黄緑色の瞳には、店とアキサムしか映っていなかったが。そんなユロを見て誘ってみることにした。
「……そろそろお腹も空いてきましたし、ご一緒にお食事でもどうですか?」
「そ、そうですね!このあたりは美味しい料理がいっぱいあるという噂があります」
心の中で大きくガッツポーズをしながらアキサムは至極冷静にあの店はどうかなど店を指差していった。
その時だった。後ろでユロの肩がポンッと軽く叩かれたのは。
「やあユロ。なんだデートか?」
後ろを振り返ると背が高く、細面の青年が立っていた。立っている姿は、少し細い木を想像させた。
「レン!違うわよ、この人は親切な方なの」
この男は一体ユロさんの何なのだろうか、と思いながらも、恋人に見えたことに若干照れながら頬を掻いた。