3.救う者
アキサムが仕事のことで少し物思いに耽っていると、水路橋に差し掛かった。昨日の雨で水路の量が増していた。
すると橋の下から網にかかったゴミのようなものが出てきた。驚くと声に反応してそれはアキサムの方を向いた。よく見ると女性だった。
(水路に落ちたのか?不運なこともあるものだ)
水路の脇に梯子がかけられているのを見つけ、落ちたのではなく降りたのだと察した。
女性はペコリと一礼すると梯子に手をかける。そして小さな子供を抱き抱えながら梯子を登ってきた。
それを見てから彼女に心を奪われた。水路に落ちた子供を助けるためであったことを知ったからである。
アキサムはヒヤヒヤしながら梯子を押さえ、子供を預かるとぐったりとした子供を寝かし、女性に手を差し伸べた。
「ありがとうございます」
凛としているが可愛らしい声だった。アキサムの手を掴み引き上げてもらうと、女性は髪を分け、顔を出した。
大きく丸い目に、少し日に焼けた肌。きゅっと結ばれた唇は薄く、可愛らしい顔であった。
顔に目がいくが、その髪は赤黒く、葉や小枝がついていた。
それを取ろうとした時、子供の母親らしき人がバタバタと駆けてきた。女性は子供を抱えてその人に声を掛けたが、母親は睨みながら短くお礼を言って子供を抱き抱えそのまま行ってしまった。