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 《ーーリーフェンシュタール公爵の中に裏切り者がいたとはーーー》


 《ーーーまさか、命まで狙うとは、思っていなかったの…ーーーごめん、なさいーー》





 ズキッ、ズキンズキン、ギギギギ…


 頭が割れるくらい痛い、一層のこと、割ってくれた方が良いくらい痛い。体が鉛のように重い。呼吸するだけで、胸が、背中が、重く苦しい、そして何よりもひどく痛い。

 リリアナが、意識を浮上させると、この世の地獄と言うような身体中の痛みが駆け巡った。目からは涙が勝手に流れ、息をすると、ひゅーひゅーとかすれる音が聞こえる。


 ーーーおかしい、何で痛みを感じるのーーー?


 この世では、精霊により治療が行われる。真っ先に怪我人や病人には痛みを取り除く処置が行われる。

 しかし、リリアナが目覚めると、身体中を巡る激痛に言葉が出てこない。


「リリー!!目が覚めたのね!今、先生を呼び戻すわ!」


「リリアナ様!声が聞こえますか?気を確かに!」


 リリアナが目を覚ましたことに気がついた侍女のカナとサラが、慌ててリリアナに呼び掛けてくる。けれども、リリアナは喉がカラカラで、体も激痛がひどく2人に返事が出来ない。


 ーーーもう…ダメ…


 リリアナは何とか起きていたかったが、体が燃えるように痛く、気を保つことができなかった。




 《ーーどうか、お許しくださいーーー》




 体が波が引くような感覚で、急に痛みから解放される。リリアナは、頭がすっきりし、体が軽くなるのを目を閉じながらも感じていた。


 ーーーうーん。でも、目が開かないや…


 何とか、目を開けて状況を確認したいと思いながらも、体が回復を優先しているのか、思うように起きることができない。


 ーーーもう、痛みはないから、精霊魔法による治療が効いているのよね…


 リリアナは、体中に感じていた激痛がすでに引いていることから、一先ず安心し、心地よい眠りに身を預けることにした。



 ーーーーーー



 目蓋の先に柔らかな明るさを感じて、リリアナは眠りから意識が浮上した。

 重いながらも、ようやく目蓋を開けることができたリリアナは、自分が寝ている部屋がリーフェンシュタール公爵内に与えられた自身の部屋と分かり一先ず安堵した。


 ーーーずいぶん、長く、寝ていたようだけれど…


 凝り固まったような首を動かしながら、寝室の扉付近に目をやれば、いそいそと部屋に水を運び入れるカナと目が合った。


「ーーカ…カナ」


「リ、リ、リ、リリー!!」


(バッシャーン!!)


 リリアナがガラガラな声で何とか、幼馴染みである侍女のカナの名前を呼べば、信じられないと言わんばかりに目を開いたカナが、リリアナに向けて突進してきた。


 ーーーあぁ、部屋が水浸しに…


 リリアナが目を覚ましたことで、カナは驚いた拍子に持っていた水を派手にぶちまけてしまった。

 部屋の外からは、物音に気がついた騎士が何事かと呼び掛けている声が聞こえるが、カナは感極まりリリアナに抱きついてきた。


「リリー!!リリー!!もう、目を覚まさないかと!!」


「カ…カ、ナ…」


「あっ!ごめん!!とりあえず、水を!!」


 リリアナの声が掠れていることに気がついたカナは慌てて、ベッドの脇のスタンドの水差しから、リリアナへ水を渡した。

 部屋の外では、騎士がまだ、何事かと叫んでいる。


 ーーーとりあえず、カナに落ち着いてもらわなくちゃ…


「リリー?大丈夫?!今、お医者様を呼ぶからね!」


「ん…。あ、ありがとう」


 震える手で何とかカナから、水の入ったグラスを受け取り飲み干すと、リリアナは体中に水が染み渡るような感覚を感じた。

 カナはリリアナの返事がしっかりしていることに安堵し、部屋の外に医者を呼ぶように指示をだすと、部屋の外からは、喜びの声が聞こえてきた。


 ーーー確か、ロイとジャックだっけ…


 意識がよりクリアになってくると、自分が生きていることを痛感する。リリアナはとりあえず、自分の手足に異常がないか、ベッドの中で軽く動かしてみた。


 ーーーうーん。少しだけ、だるさはあるけれど、ちゃんと動くみたい


 手足がきちんと動くことに、ほっと胸を撫で下ろしていると、カナがベッド脇に戻ってきた。


「リリーったら、もう2週間も目を覚まさないんだもの…心配でおかしくなるかと思ったわ!」


「ーー2週間も??私、どうしてーー」


「ーーヴ、ヴィヴィアン様と街に出掛けて、暴走した乗り合い馬車から落ちたのよ。覚えていない?」


 ーーーあぁ、そう言えば、そうだったかも…


 リリアナがうっすらな記憶を辿っていると、部屋の外が慌ただしくなって、急に部屋の扉が開かれた。


「リリー!!」


「アーク…」


 ノックも無しに、扉を壊すような勢いで部屋に飛び込んできたのは、リリアナの記憶よりもやややつれたアークだった。アークの背後には、医者と思われる白衣を着た男性の姿と、看護にあたる女性らしき人の姿も見えた。



いつもお読み頂きありがとうございます!

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