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「ねぇ。リリアナはユーリスアークライト様と同室を使っているの?」
ーーー!?
翌朝、アークとパトリックは仕事があると朝食もそこそこに席を外した。リリアナと友人達、ヴィヴィアンは、温室にあるテーフルで食後のティータイムを楽しんでいる。
昨晩、リリアナが部屋に戻ると、アークによって1日2人きりの時間が少なかったからと、あれこれ構い通しされてリリアナはクタクタだった。
今朝は、アークから離れて自由を満喫していたというのに、キャロラインの一言で動揺してしまう。
「いいえでも、リリーお姉さまは次期公爵夫人にふさわしく、お兄様の隣のお部屋を使っていらっしゃいますーーー扉で行き来出来ますが」
キャロラインの際どい質問に、どう答えようかと頭を悩ませていると、リリアナに代わってヴィヴィアンがキャロラインの質問に答えた。
ーーー末尾いらないから!!余計だから!
リリアナがヴィヴィアンの言葉に驚いていると、
「きゃぁー!それでは人目も憚らず好きなだけ一緒に過ごせるのね!」
「ねぇ、昨夜はご一緒に過ごされたの?」
「えぇ、リリーお姉さまはご婚約されておりますから、別に問題ございませんよね?」
ヴィヴィアンの返答を受けてアンナとマリアが盛り上がる。リリアナは誤解を招く発言に慌てて訂正しようとするも、ヴィヴィアンがリリアナよりも早く答えてしまう。
「ちょっと!ヴィーったら、からかわないで!!ーー部屋は隣でも、一緒に寝てはいないからね!!」
リリアナが酷く焦って訂正すると、堪えきれないとばかりにキャロラインとヴィヴィアンが吹き出した。
「いやだ、リリアナったら。そんなに慌ててーーでも、ユーリスアークライト様のあのリリアナへのご執心からすれば、そう遠くはない将来にそうなるかもね」
「えぇ、お兄様はそれはそれはリリーお姉さまの事ばかり考えていらっしゃいますから。お兄様はリリーお姉さまのお傍を片時も離れたくないと仰ってますし」
ーーーへ?!そんなの初耳なんですけど!
「ヴィー!そんな話、兄妹間でしないでよ!!もう、皆でからかって!」
「リリアナは恥ずかしがりやね。良いじゃない、戦略結婚で愛のない結婚するよりも、愛される結婚生活が送れるのよ!」
羨ましいわーーとアンナが言うと、マリアも頷いて、
「リリアナは贅沢よ!あんな綺麗な人と結婚できるんだもの。それにリリアナの事を大切に思ってくれているなんて、本当に羨ましいわ」
と絶賛してくる。キャロラインまでもが、社交界でユーリスアークライト様がリリアナを溺愛していると、噂になりそうよねーーなんて笑っている。
「それは、アークの名誉に関わるんじゃない?変な噂流さないでよ…」
ーーー恥ずかしくて、茶会にも出れやしないわ
リリアナが心底参ったように言うと、ヴィヴィアンは噂ではなくて真実ですからーーとさらにからかう始末だ。
「学園に入学したらリリアナは大変そうよね。常にユーリスアークライト様の婚約者として見られるのよ?しかも溺愛されてると分かれば…」
「嫉妬は間違いなく凄いわよね…」
アンナとマリアがリリアナの事を心配してそう言うと、ヴィヴィアンは表情が暗くなった。
学園への入学の年齢は厳格には決まってはいないが、ヴィヴィアンはリリアナよりも2つ年下のため、来年度は入学しない事になっている。
「私が、リリーお姉さまのお傍にずっと居られれば良いのだけれど、パトリックお兄様だと心配ですわ…」
ヴィヴィアンはそう言うと、何故かキャロラインの表情を伺う。パトリックも、リリアナの入学と合わせて学園に通うことになっていた。
「パトリック様と私達がリリアナを守るので、ヴィヴィアン殿は心配なさらず。リリアナも入学後は、今よりも慎重に振る舞って頂戴ね」
大舟に乗るとはこう言うことかーーとリリアナが感心するくらい、キャロラインは任せて頂戴と力強くリリアナに宣言し、優雅に微笑んだ。




