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流血&暴力的な場面が入ります。
苦手な方はお避けくださいませm(_ _)m
回想シーン二話目です。
ーードドド…バリバリドーン…
ーーぎゃぁーーー
竜巻は子爵家の門構えを破壊し、そのまま屋敷に突き進んだ。とてつもなく大きな竜巻ではあったが、子爵家のエントランスを大破した後、静かに消え去った。
急な竜巻の襲来に子爵家中がパニックになり屋敷の外に逃げる。竜巻により半分崩れ落ちた屋敷からはどこからか火の手も上がり始めた。
子爵家の使用人達が我先に逃げ惑う中、1人のメイドの服を着た少女がものすごい早さで、屋敷の中心にある地下室へ駆け出した。
ガシャ…ゴトガゴ…ガシャ、バーン!
地下室のドアをこじ開けるように乱暴に開ける。部屋にはカビ臭い湿った空気が辺りを充満しており、床に転がった少女ーーリリアナが芋虫のようにうごめいていた。
ーーー!あんた!何してくれてんのよ!!
地下室に飛び込んできた少女ーーディアナは、怒りに任せて床に転がる人間の腹部を蹴りあげる。手足を縛られ抵抗する術がないリリアナを、容赦なく何度も怒りに任せて痛めつけた。
ーーー!うっ!
ーーーあんたが屋敷を壊したんでしょ!!あんたなんか、あんたなんか!すぐに殺せばよかった!!
周囲に声が響き渡るのもお構いなしに、ディアナはわめき散らしながら、床に転がるリリアナを力一杯踏みつけた。
ーーー!ごぼ…
口の中に広がる鉄の味がする。腹部を蹴り、踏みつけられたせいで、リリアナの肋骨は折れて内蔵を傷つけていた。
ーーー…もうダメかもしれない
すぐ側で誰かが怒りに叫んで、リリアナの腹部を蹴り続けているが、体を拘束されているため抵抗する術がない。止めどなく続く暴力に、リリアナは腹部に感じていた信じられないほどの痛みは遠退き、だんだんと体が冷えていくのを感じていた。
あんなに痛かった、腕の拘束の痛みすらすでに感じない。
ーーーもう痛みも感じない…ただ、寒い…
ーーもう、死ぬかもしれない
意識が混濁し、結局、珍しい花ってなんだったのかな…と場違いなことを考えながら、ゆっくりと深い闇に引きずられそうな感覚になる。
どこからか火が近づいてるのか、地下室は次第にカビの臭いから焦げ付くような臭いに変わってきていた。
ーーーリリアナ!!
永遠に続くような暴力と己の身に近づく火災の恐怖に絶望を感じている中、突然、ふわりと温かい風をまとった誰がリリアナの頭を包み込んだ。リリアナとあまり変わらなく成長途中にある体で、壊れ物を扱うかのように慎重に抱き寄せられる。その慣れ親しんだひどく安心する温もりに、リリアナの意識が少しだけ浮上する。すると、目隠しが外され、目の前には金色の波が広がった。精霊魔法を使って、身を金色にまとったアークがそこにいた。
ーーー…アー…ク、何で…ここに…?
意識がぼんやりする中、柔らかな風がリリアナの怪我を癒すように包み込んだ。リリアナの頭上では、今まで見たこともない表情で怒りに震えながら、アークが誰かに向かって怒鳴っている。何を言っているのだろうと思うが、柔らかな風に包まれたリリアナの耳には届かない。
その温もりにもう一度安堵を覚えたリリアナは、ゆっくり意識を手放した。
ーーーーーー
リリアナがまばゆいほどの明るい光に目蓋をこじ開けると、見慣れたリーフェンシュタール公爵家の来客用の寝室であった。リリアナが救出されたときは日の沈む時刻であったが、今は日が高く登っている。
意識を失う前、あれほど苦痛を訴えていたリリアナの体は既に痛みを感じなくなっていた。痛みに変わって、今は慣れ親しんだ爽やかで柔らかい風が体を包み込んでいた。リリアナはぼんやりする頭で、水と風の精霊魔法により体を治癒されたようだと気がついた。
そういえばリーフェンシュタール公爵家の現当主は水の精霊使いだったな…なんて思い出していると、ふと誰かが左手を包み込んだ。
ーーーリリアナ、気がついたんだね?どこか痛みはない?
リリアナが目を覚ましたことに気がつき、そっとリリアナのおでこに手をかざす。その温もりに、リリアナはひどく安心した。
ーーーあぁ…助かったのね…
絶え間ない暴力で絶望の中、助けに来てくれたのは、やはりユーリスアークライトーーアークだったらしい。
リリアナの左手を宝物のように大事そうに握りしめる彼はとてもひどく疲れて見えた。