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 リリアナが慌ててアークの胸から脱出しようとしたが既に遅く、部屋の扉が開き、サラとカナが部屋に入ってきた。扉の向こうではジャックが笑って部屋を覗いている。


 ーーーっ!なんてシチュエーション…


「ユーリス様、リリアナ様おはようございます。清めの湯をお持ちしました。お食事はこちらでなさいますか?」


 リリアナがアークの胸から顔を這い出すと、驚きに目を丸くしたカナの顔が飛び込んできた。サラは満面の笑みで、朝の挨拶をすると湯を部屋に運んでくる。


「あぁ、すっかり遅くなってしまったけど、こちらで食事をとろうか。リリーはさっぱりした果物が好きだよね?」


 リリアナはアークに抱き込まれながら、もうどうにでもなれと自棄糞な気分になり、無言でこくこくと頷いた。


「かしこまりました。では、果物とお食事をご用意させて頂きますーーあぁ、先ほどメイルズ男爵家よりヴィヴィアン様、こちらのカナ殿がお着きになりました」


 サラはアークの意を汲み取り、果物と食事を用意するため部屋を後にする。変わって、カナがリリアナの身支度のために部屋に残った。


「ユーリスアークライト様、お久し振りでございます。本日よりリリアナ様のお世話をさせていただくため、メイルズ男爵家から今朝到着しました」


「あぁ、カナ殿だったかな?リリアナが当家で過ごすことになった。君も勝手が違い、慣れないだろうけど、リリアナのためによろしく頼む」


 何かわからないことがあれば、執事のセバスチャンに言うようにーーとアークはカナに伝えた。カナは幼い時からリリアナと一緒にリーフェンシュタール公爵に来ていたため、屋敷の使用人とも顔見知りだ。


「カナ、急にごめんね。1人で心細いから、カナが傍にいてくれると嬉しいわ!」


リリアナがカナの到着に喜ぶと、アークはふざけてわざと拗ねたような顔をした。


「そこはカナがいなくても、心細いなら俺に相談してくれると嬉しいんだけど?婚約者殿?」


「それは!まぁ、おいおい…頑張ります」


 アークがからかい、リリアナが顔を赤くしていると、それを見たカナが安心したようにふぅーと息をはいた。


「カナ?何かあった?」


 いつもなら、リリアナをからかってくるはずのカナが大人しい。慣れない公爵家で既に何かあったのではないかとリリアナは不安になった。


「いいえ。何でもありませんーーーただ、昨日、リリアナ様が魔獣に襲撃されたと聞いて、ひどくショックを受けられているのではないかと心配しておりましたーーーでも、顔色もよく、お元気そうで安心いたしました。ユーリスアークライト様のおかげでしょうか?」


「そっ、それは!アークが昨日からずっとからかうから!どきどきしっぱなしにさせるし、落ち着かなくって」


「おや?少しは俺のことを恋人として意識し始めてくれたと言うこと?」


「こっ恋人?!」


 リリアナがアークの一言にびっくりして大声を出す。アークとリリアナが2人の世界を作り始めるのをカナは微笑ましく思っていた。

 昨日、リリアナが襲われたと聞いたときには、血の気が引いて、いてもたってもいられなかった。リリアナは幼少期に誘拐監禁されたトラウマがある。今回の事で、強いストレスを感じ、また寝たきりになってしまうのではないかとカナは危惧していたのだ。

 本当に元気そうで良かったーーーとカナは心から安堵のため息をついた。


「本当に元気そうでようございました。さぁ、お2人ともいつまでもお熱いのは結構ですが、そろそろお着替えをなさいませんと」


 カナはそういうと、ドレスを取りに衣装部屋へ向かう。


「じゃぁ、名残惜しいけど、一先ず着替えて身支度を整えようか。でも、何かあれば直ぐに隣の部屋にくること。いいね?」


「わかったわ。でも、屋敷の中で危険なことはないんじゃない?心配し過ぎよ」


 リリアナがそういうと、好きな人に何かあったら大変だと心配するのは当たり前だよーーとリリアナの頭をくしゃくしゃ撫でてから、アークは隣の部屋へと戻った。


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